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5.出て行きます

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「貸してと言われるのはまだましなんです。一応必要な時には使えると言うか、使える可能性があるので」

「と言うと?」


「妹が交換してと言った時とごめんねと言った時の方が酷いので」

「あー、なんとなく想像つきました」


 ミリーが交換してと言った時は自分の物が壊れたり汚れたりして使えなくなった時。双子だからと両親は何でもかんでもお揃いの色違いを購入するので、自分の貰ったものが壊れるとエリーに交換してと言いはじめる。


 ごめんねと言った時はエリーの物を壊した時。

 因みにエリーのドレスやアクセサリーが使い物にならなくなる事はしょっちゅうだが、ミリー自身の物は殆ど壊れたり汚れたりしていない気がする。

 両親に言うと素直に謝ったんだから許して上げなさい。今度新しいのを買ってあげるからねと言われる。
(買ってもらった覚えはないけれど)



「わかりました。先程お話に出てきたお祖母様に連絡をとりたいのですね」

「はい、お祖母様と叔母様はリューゼルにおられるので手紙を早馬で送ります。
返事か迎えが来るまでお世話になれる場所か安い宿を紹介していただけないでしょうか? 宿代なら持っています」

 出てくる前に一応お小遣いをねだってみたのは単なるパフォーマンスのようなもの。元々いざという時の資金は常に持っているので贅沢をしなければ宿代もあるしリューゼル迄の旅費もある。


(もしもの時は家を出て宿に泊まって私達に連絡をするのよ)

 そう言って渡されたお金は結構な金額なので(何となく)ミリーには知られない方が良い気がして内緒にしていた。

(お金を持ってないと思ったら、直ぐに帰ってくると思って探しはじめるのが遅れるはずだものね)



 エリーは手紙をしたため配達人に託した後司祭に連れられて一軒の宿屋にやって来た。開店前なのか宿には大きな男の人が一人いるだけだった。

「おー、お久しぶりっす。今日はどうしなすったんで?」

 少し汚れたエプロンをつけた大きな男はカウンターを拭きながら声をかけてきた。


「うん、部屋が空いてないかと思って」

「はあ? 司祭様、うちは連れ込み宿じゃねえぞ」

「ばっ馬鹿な事を! 私はその様な不埒な事など・・」

 真っ赤な顔になって怒る司祭を見ながらゲラゲラと大男ケビンが笑った。

「司祭様、冗談ですって」

「子供の前で不適切な発言をしてはいけません。で、部屋は空いていますか?」

 司祭は胸に下げたロザリオを握りながら深呼吸している。


「空いてるっちゃ空いてますけど、なんか訳ありっぽくねえっすか?」



 司祭の簡単な説明の後ケビンがエリーを見ながら首を捻った。

「うちでも良いんすけどお貴族様の娘ってなると騎士団が来たら庇いきれんかもですぜ。それよか孤児院の方が良くないっすか?」

「うん、それはそうなんだけど・・」

 歯切れの悪い司祭を見てケビンが「ああ」と頷いた。

「今月の担当はシスター・バイオレットなんすね」

「そうなんだ。彼女は素晴らしいシスターなんだが・・その」

 話が長くなりはじめたのでエリーは重く感じてきた鞄を下ろしたいが、床があまり綺麗ではないので躊躇していた。


「シスター・バイオレットは徹底的な貴族嫌いですもんねえ」

「彼女の過去を考えると仕方ないとも思うし、無理に頼んでも良い結果にはならないと思うんだ」

「そうっすね。シスター・バイオレットなら問答無用で騎士団に突き出しかねないっす。
んじゃ仕方ない、うちの地下室にしましょうか」

(強烈なシスターの話の後は地下室・・? 失敗したかな)

 不安な気持ちを抑えつつケビンと司祭の後をドナドナされていくエリー。


 宿の調理場を抜けドアを出ると小さな二階建ての石造りの家が建っていた。一階のキッチン横の階段を降りながらケビンが説明をはじめた。

「地下室って言っても半地下だからそんなに居心地は悪かねえと思うんだが、時々知り合いがやってくるのは大目に見て・・って来てたのか」


 地下室はエリーの予想よりかなり広く右半分は木箱や色々な道具が積み重ねられているが、左側の壁には明かり取り用の横に広い窓がありその下には小さなテーブルと椅子が2脚置かれている。
 部屋の奥には暖かそうな布団の乗った一人様のシンプルなベッドもあり連絡を待つ間の住処としては十分すぎるほどだった。

 眉間に皺を寄せて仁王立ちしている少年以外は・・。


「司祭様、そいつ誰?」

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