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2.強制でレバント行き決定しました

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 領土の北側が海に面したロンダール王国は王都から馬車で2日程の場所に貿易の中継点となっている港湾都市レバントがある。
 モブレー公爵家が代々治めている領地で現在の当主夫人は前国王の妹に当たる。

 遠洋航海に適したガレオン船が停泊する大きな港と河川交易を担う小型の船舶を繋留する港を持つこの城塞都市は、各地の名産や特産物・他国からの輸入品等で定期市が開かれロンダール王国の経済の中核を担っている。

 ロンダール王国の南は肥沃な大地に恵まれ三圃式農業で冬穀・夏穀・放牧地に区分し耕作を行っている。
 エリー達の父コーンウォリス伯爵の領地も王国の南方にあり、麦や大麦と毛織物などを生産している。



「あと1週間で入学試験でしょう?
その前にレバントに行ってみたいの。定期市には異国の珍しい品が一杯並ぶって聞いたから」

 ミリーの思いつきがはじまった。


「ここからレバントに行くには片道2日はかかるからちょっと厳しいんじゃないか?
それに、試験勉強をしなけりゃならんし」

「えー、良いじゃない。ぱぱっと行って定期市を見てささっと帰ってくれば良いんだもん。
それに試験なんて今から頑張って詰め込んでも間に合わないって」

 ケラケラと陽気に笑うミリーだが学園の入学試験はかなり難しいと聞いている。


「旅行疲れのまま入学試験はキツいんじゃないか?」

 ミリーの希望が叶えられるのは我が家の不文律みたいなものだから、多分間違いなくレバントに行くことになるとは思ったが一応声に出して反対してみることにしてみた。

「定期市が開かれてる時を調べてから時間に余裕を持って行った方がいいと思う」

「えー、そんなのつまんないじゃない。もっと気楽な気持ちで旅したーい。
こういうのを行き当たりばったりって言うんだって。ハプニングとかがあったりして楽しそうじゃない?」

(行き当たりばったりもハプニングも楽しいことにはならないと思う)


「定期市がやってなかったとしても良いの?」

 粘るエリー。


「その時は学園のお休みの時にもう一度行けば良いって」

「定期市に行きたいんじゃなかったの?」

 粘り続けるエリーだったが・・。


「まあ、ミリーがそう言うなら行ってみるか。家族揃っての旅行は久しぶりだしな」

 父、陥落一号。

「そうね、定期市がやってなくてもレバントには色々なお店があるって言うし」

 母、陥落二号。

「レバントは新鮮だからって魚を生で食べられるって」

 兄、陥落三号。

「じゃあ、けってーい。急いで荷物を準備しなくちゃ」

 ミリーがドレスの裾をからげ元気良く駆け出して行った。


「あらあら、子供みたいに走り出すなんて。よっぽど楽しみなのね~。
あんなにお転婆で学園に入ってから大丈夫なのかしら」

「ミリーはエリーに比べて甘えん坊だが、学園に入ってもエリーがいるから大丈夫だろう」


「お父様、私に責任押し付けないで。せめてお兄様にお願いして」

「お前達は初等部で僕は中等部だから無理だよ。エリー頑張れ」


(学園行くより修道院の方が魅力的かも)



 ミリーが言い出した次の日の午前中には荷物が馬車に運び込まれた。

「急いで準備したから忘れ物はないかちょっと心配だわ」

 馬車に乗り込んだ母が呟いた。

「平気だってー、足りないものがあってもレバントなら何でも売ってるから大丈夫よ。
私にはエリーがいるしね」

「ミリー、いつも言ってるけど忘れ物をするたびに私のとこに借りに来るのはやめてよね」

「えー、良いじゃん。双子なんだからサイズも同じだし」

「貴方達はそれで良いけど、私はそうはいかないのよ」

「お母様、私も良くありません。貸し借り禁止にしないといつまで経ってもミリーは成長しないから」

「まあまあ、せっかくの旅行なんだから」

 父の一言でエリーの抗議は黙殺された。


(やっぱ修道院かな)
 
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