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1.よく言えば大らかだけど・・
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「エリー、取り替えっこしてあげるわ!」
可愛らしく微笑みながらありがちな発言をしてきた双子の妹のミリーはお茶会から帰って来たばかりなのか、刺繍飾りとレースのついたピンクのデイドレスを着ている。
ハーフアップにしたサラサラのハニーブロンドには先月の誕生日プレゼントに両親から(エリーが)貰った小粒のダイヤとエメラルドのついた髪飾りを付けている。
ミリーが貰ったのはお揃いの形のダイヤとサファイアのついた髪飾り。
大切にしまっておこうとしたエリーだったがいつもの如くあっという間にミリーに奪われてしまった。
物心ついた頃からの恒例行事。
『ちょっと借りるだけだから、必要になったらいつでも返してあげるからね』
『エリー、これ私のと取り替えっこしてね』
本人は全く悪気がないらしく返して欲しいと言えばすぐに返してくれるがその日のうちにまた回収されてしまう。
両方ともミリーの部屋にあるのだが一応エリーの物と自分の物の区別はあるらしい。
母親に相談すると、
『返してくれるのなら問題はないでしょう? ミリーは貴方より出掛けることも多いんだし貸してあげれば?』
3つ年上の兄は、
『双子なんだから物の貸し借りは普通だろ? お前は細かい事を気にしすぎなんだよ』
父親は、
『エリーに構って欲しがってるんじゃないか? ミリーは甘えん坊だからな』
エリーとミリーは11歳になり入学準備の為両親と共に王都のタウンハウスにやって来た。
兄のフレディは3年前に学園に入学した時から学園の寮に入っていたが、エリーとミリーがきた為これからは3人でタウンハウスに住むことになる。
タウンハウスに到着して1週間経った頃ミリーが両手に乗るくらいの小ぶりな箱を抱えて夕食に現れた。
両親と兄とエリーは既に席についていたがミリーの異様なハイテンション振りに不安が込み上げてきた。
(こういう時のミリーって大体碌でもない事を考えてるのよね)
椅子の横でキラッキラの笑顔のミリーが蓋を開けた箱を前に差し出した。
「じゃじゃーん、これは最近発明されたばかりのつる付きの眼鏡でーす」
これまでにあった眼鏡は鼻の上に乗せて使う物だったが少し前にきちんと固定できるつる付きの眼鏡が発売された。
「ミリーは目が悪かったの? 全然気付かなかった」
フレディが身を乗り出して箱の中を覗き込んだ。
「お兄様ったらせっかちさんね。これはエリーの為の眼鏡よ」
うふっと擬音が聞こえてきそうないつもの可愛らしいミリーの仕草だったが、エリーは発言の内容に吃驚してしまった。
「ミリー、私も目は悪くないわよ」
「そんな事知ってるわよ。これはね学園で2人を見分けてもらう為のもの。
エリーが眼鏡をかけていればどっちがミリーでどっちがエリーなのかすぐに分かってもらえるでしょ?」
「えーっと、眼鏡じゃなくても良くない? 必要もないのにそれを毎日かけるのは嫌だわ」
「エリーとミリーは親である私でさえ見間違えることがあるからな。
かなりの値段だったが学園でいい目印になると思うぞ」
無責任な父親がお金を出した事が判明した。
「だったらミリーがかけたら? 言い出したのはミリーなんだし」
「えー、こんなのやだー」
「私も絶対嫌だから」
「ミリーはそそっかしいからすぐ壊してしまいそうだね。僕の羽ペン、貸したその日に真っ二つだもん。あはは」
「慣れてしまえばとっても楽ですって。メイソンさんが仰ってたわ」
(お母様、メイソンさんは5人の孫のいるお婆ちゃんだよ)
その日から、よく言えば大らかだがはっきり言って無神経な家族から終日眼鏡眼鏡と言われ続けて日々疲弊して行くエリー。
このままでは入学式には満面の笑みを浮かべたミリーと眼鏡をかけて肩を落としたエリーが並ぶのは確定になりそう。
人生で唯一『貸して~』と言われないのはこの眼鏡になりそうだと思ったエリーだった。
可愛らしく微笑みながらありがちな発言をしてきた双子の妹のミリーはお茶会から帰って来たばかりなのか、刺繍飾りとレースのついたピンクのデイドレスを着ている。
ハーフアップにしたサラサラのハニーブロンドには先月の誕生日プレゼントに両親から(エリーが)貰った小粒のダイヤとエメラルドのついた髪飾りを付けている。
ミリーが貰ったのはお揃いの形のダイヤとサファイアのついた髪飾り。
大切にしまっておこうとしたエリーだったがいつもの如くあっという間にミリーに奪われてしまった。
物心ついた頃からの恒例行事。
『ちょっと借りるだけだから、必要になったらいつでも返してあげるからね』
『エリー、これ私のと取り替えっこしてね』
本人は全く悪気がないらしく返して欲しいと言えばすぐに返してくれるがその日のうちにまた回収されてしまう。
両方ともミリーの部屋にあるのだが一応エリーの物と自分の物の区別はあるらしい。
母親に相談すると、
『返してくれるのなら問題はないでしょう? ミリーは貴方より出掛けることも多いんだし貸してあげれば?』
3つ年上の兄は、
『双子なんだから物の貸し借りは普通だろ? お前は細かい事を気にしすぎなんだよ』
父親は、
『エリーに構って欲しがってるんじゃないか? ミリーは甘えん坊だからな』
エリーとミリーは11歳になり入学準備の為両親と共に王都のタウンハウスにやって来た。
兄のフレディは3年前に学園に入学した時から学園の寮に入っていたが、エリーとミリーがきた為これからは3人でタウンハウスに住むことになる。
タウンハウスに到着して1週間経った頃ミリーが両手に乗るくらいの小ぶりな箱を抱えて夕食に現れた。
両親と兄とエリーは既に席についていたがミリーの異様なハイテンション振りに不安が込み上げてきた。
(こういう時のミリーって大体碌でもない事を考えてるのよね)
椅子の横でキラッキラの笑顔のミリーが蓋を開けた箱を前に差し出した。
「じゃじゃーん、これは最近発明されたばかりのつる付きの眼鏡でーす」
これまでにあった眼鏡は鼻の上に乗せて使う物だったが少し前にきちんと固定できるつる付きの眼鏡が発売された。
「ミリーは目が悪かったの? 全然気付かなかった」
フレディが身を乗り出して箱の中を覗き込んだ。
「お兄様ったらせっかちさんね。これはエリーの為の眼鏡よ」
うふっと擬音が聞こえてきそうないつもの可愛らしいミリーの仕草だったが、エリーは発言の内容に吃驚してしまった。
「ミリー、私も目は悪くないわよ」
「そんな事知ってるわよ。これはね学園で2人を見分けてもらう為のもの。
エリーが眼鏡をかけていればどっちがミリーでどっちがエリーなのかすぐに分かってもらえるでしょ?」
「えーっと、眼鏡じゃなくても良くない? 必要もないのにそれを毎日かけるのは嫌だわ」
「エリーとミリーは親である私でさえ見間違えることがあるからな。
かなりの値段だったが学園でいい目印になると思うぞ」
無責任な父親がお金を出した事が判明した。
「だったらミリーがかけたら? 言い出したのはミリーなんだし」
「えー、こんなのやだー」
「私も絶対嫌だから」
「ミリーはそそっかしいからすぐ壊してしまいそうだね。僕の羽ペン、貸したその日に真っ二つだもん。あはは」
「慣れてしまえばとっても楽ですって。メイソンさんが仰ってたわ」
(お母様、メイソンさんは5人の孫のいるお婆ちゃんだよ)
その日から、よく言えば大らかだがはっきり言って無神経な家族から終日眼鏡眼鏡と言われ続けて日々疲弊して行くエリー。
このままでは入学式には満面の笑みを浮かべたミリーと眼鏡をかけて肩を落としたエリーが並ぶのは確定になりそう。
人生で唯一『貸して~』と言われないのはこの眼鏡になりそうだと思ったエリーだった。
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