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6.先ずはギルバートから

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 上客なら別室に案内するが、その必要はないと判断したジークはソファに案内することに決めた。

「なら、これとこれは必ず持ってきて。あとそこのネックレスとイヤリングのセットも」

「はい、ただいまご準備させていただきますので少々お待ち下さい」

 ショーケースに並んでいる物は高級品と言っても中程度のものばかり。最上級の品は別室に案内された客の前にだけ出されると知らないイーサン達はご満悦のようで満面の笑みを浮かべていた。

 ソファにどっかりと座ったイーサンとしなだれかかるアリーシャは上機嫌で店を見回した。

「やっぱりローゼン商会の本店は最高ね。店の雰囲気も置いてある物も一級品だし、店員までイケメンだもんね」

「女も結構美人揃いだな。さっきはあんな女いなかったけど、どうせならあの女に対応させるか?」

「えー、イーサンひどーい。アタシがいるのによそ見とかぁ、マジあり得なくない?」

「ちょっと揶揄っただけだって。お、ネックレスが届いたぞ」

「わぁ、やっぱり綺麗! ねえねえ、つけてみたい。いいんでしょ?」

「合わせるだけでございましたら問題ありません。フレッド、鏡をお持ちして下さい」

 テーブルの上に鏡が置かれ、ネックレスやイヤリングを合わせて悦にいるアリーシャの横で、イーサンはさっきから気になっている女性⋯⋯サラをチラ見していた。

「どう? ねえ、イーサンってばぁ」

「おお、すっごく似合ってる。指輪と一緒にこれももらおう。指輪は⋯⋯これはどうだ?」

「うん、それにする。結婚指輪はお揃いだよね」

「当然だろ? おい、全部持って帰るから綺麗にラッピングしてくれ」

「畏まりました。お支払いは現金で宜しいでしょうか?」

 フレッドが購入予定の商品を取り分け、残りを後ろの棚に置くのを確認したジークが穏やかな声で聞いた。

「いや、モーガン侯爵家につけておけ」

「失礼ですがお客様はモーガン侯爵家の方でいらっしゃいますか?」

「いや、買うのはサラ・モーガンのアクセサリーだからな。モーガン家が払うのが当然だろ?」

「⋯⋯お隣の方はサラ・モーガン侯爵令嬢様とは別人でいらっしゃるようですが?」

 サラ本人がショーケースの近くに立っているのを知っているジークは問題の所在が分かった気がした。

「サラ様のことはよく存じておりますので」

「ここの商会員だから知ってるだろう。そいつの代わりに買いに来てやったんだから支払いはモーガン侯爵家⋯⋯サラに回せばいい。給料から払うはずだからな」

「申し訳ございません。当店では一見のお客様は現金取引のみとさせていただいております。2回目以降の取り引きに関しましては身分証明と支払を保証していただくための書類の作成等がお済みであれば手形や小切手やつけ払いもご利用可能となります」

「客にとやかく言うとか、何様のつもりだ!? 俺は次期ボクス公爵だ。こんな店なんか簡単に捻り潰せるんだぞ!!」

 真っ赤な顔で立ち上がりジークを指差したイーサンが大声で怒鳴った。

 入り口近くで待機していた店員が他の客を別のフロアに誘導し、護衛は少しずつイーサン達の後ろに近付いて行った。

「ボクス公爵家の方でございますか。ただ⋯⋯ボクス公爵家の方とのお取引もなかったように記憶しております」

「ねえ、侯爵家に連絡してさぁお金を持ってこさせたらいいじゃん。んで、手間かけさせたお詫びになんか買わせよう!」

「お取り置きでございますね。2日まででしたら出来る決まりとなっております」

「今後も長い付き合いになるんだぞ!? 少しぐらい融通を効かせるのが筋だろうが!」

(はーい、一つ目のギルティです)

 サラがニパッと笑ったのを確認したギルバートが親指を立てた後、イーサン達の座るソファに近付いて行った。



「お話中失礼致します。ローゼン商会貴金属部門担当のギルバート・ホズウエルと申します。イーサン・ボクス様とお見受けいたしますが?」

「お、俺のことを知ってる⋯⋯のか?」

 巨体をイーサンに向けずいっと顔を近付けたギルバートがニヤリと笑った。

「はい、学年は違っておりますが貴族学園でのお噂はかねがね⋯⋯。ところで、当店に特別な優遇措置をお望みだとお聞きしましたが?」

「ゆ、優遇というか⋯⋯知り合いなんだから信用を⋯⋯そのくらいは当然で」

「当店では如何なるお相手であっても信用を盾に優遇措置を求められた場合お引き取りいただいております」

「たがか商人のくせに偉そうに!! ボクス公爵家に楯突いてタダで済むと思うなよ!こんな店潰してやる!!」


「はあ? てめえ、ざけたこと言ってんじゃねえ!!」

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