83 / 93
83.のんびり王都見学したいから
しおりを挟む
王都の大通りで馬車を降りた。
「夕方のお迎えをお願いしていいかしら?」
「我々がご案内させていただきたいと思っておりますが?」
セアラ達と年はそれほど違わないが筋肉質で岩をバリバリ食べそうな偉丈夫3人が剣に手をかけたまま辺りを見回した。
「大通りから外れるつもりはないからお手数をかけるほどのことはないと思うの。買い物にゆっくりと時間がかけたい方だし⋯⋯のんびりお店を回るだけなの。
待たせてるって思うとゆっくり選べなさそうで⋯⋯」
セアラが小首を傾げて純朴そうに笑いかけると護衛という名目の監視役はあっさりと引き下がった。
「そうですね。確かにこの辺りは治安も良いですし⋯⋯夕刻この噴水広場にお迎えに参ります」
「わあ、助かります。帝国なんて二度と来れないかもだし、ゆっくり見学させてもらいますね。そうだわ、是非見ておくと良いですよっていうオススメとかあるかしら?」
「レミルトンと言う店のチョコケーキが一番人気です」
「レミルトンですね、楽しみだわ。チョコには目がないの」
見張り達はチラチラと振り返りながら城へ帰って行った。
「セアラ、二重人格って知ってる?」
笑いを堪えたイリスの肩が震えている。
「最近色々勉強したの。別人になる必要があったりもしたし⋯⋯今回はアメリアがおねだりする時を少しイメージしてみたんだけど⋯⋯これってすごく、役に立つわ」
「アメリアよりよっぽど効果的よ。あの娘のは胡散臭くて白々しかったけど、セアラのは⋯⋯かなりやばいと思う。ね、ルーク」
苦虫を噛み潰したような顔のルークがセアラを睨みつけた。
「あれは駄目だ。禁止だな」
訳の分からない禁止令を出されたセアラはムッとして言い返した。
「だってあの人達がいたら落ち着かないし、話もしにくいじゃない」
気持ちを切り替えて街を散策しようと決めたセアラ達だったが、先ずは腹ごしらえからだとルーク達が言い出した。
「じゃあ、あそこは? テラスがあるから周りの様子も見れるし話もしやすいわ」
店に入って豆と羊のスープやパイを注文し、料理が届き周りに人がいなくなるのを待って本題に入った。
「昨日見た時は街の人の敵意が気になっていて気付かなかったけど、相手の思惑を考えながら城壁とかを見てみたら守備は万全って感じね」
城壁を越えた後も中の作りは複雑になっていて、容易に皇帝に行き着く事はできないだろう。
「手引きする人でもいなければ絶対迷子になって終わりそうよね」
普段呑気なイリスも真剣に考え込んでいる。
「大通りも東西南北に整備されてるだろ? 道幅といい戦に出る時に軍隊が出撃するにもバリケードを張るにも適した作りになってる」
道の要所要所にはそれ用の土嚢などが準備されていたのをルークは見ていた。
「軍事国家ってそういうもの?」
「ここはそれに特化してると言っていいかもな。城や王都だけじゃなくその途中の街道も⋯⋯帝国は常にどこかと争ってるからそんなもんかもな」
「そんなに?」
「軍事力と資金力に任せ国を拡大し続けてきた帝国が今までベルスペクト王国に手を伸ばしてこなかったのが不思議なくらいだし」
「宝物のせいかしら?」
戦争を仕掛けて隠されていた宝物が破壊されたりそれに関する資料が失われるのを危惧したのかもしれない。
もしそうなら、宝物を返還した後は遠慮する必要がなくなることになる。
「だから属国にしようと狙ってるの?」
「実際のところ王国は王家の采配が上手くいってるから良いが、そうでなければ戦を仕掛けてまで手に入れたいと思うほどの国じゃない」
「帝国にしてみれば登山と一緒ね。そこに国があるから侵略するだけ」
ルークが『そういう事だろうな』と言いながら肩をすくめた。
「今日、旧神殿に行ったけど思うような成果がなかったの。明日新しい神殿に行った時の一発勝負になるけど大丈夫?」
「ああ、神殿の構造は調べてある。聖女の儀式が聞いている通りの場所であるならなんとかなるだろうと思う」
セアラはある仮説を立てており、それが上手くいけば聖女伝説の真実を解き明かすことになる。
その為の作戦でルークは最も重要な役目を担っている。
「だろうじゃ駄目なの。絶対に成功させなくちゃ、王国がなくなっちゃう。自信がないならこの後神殿を覗いてみましょう」
昨夜の話を聞くまでは失敗した時には仕切り直しする時間があるかもしれないと楽観視していた。帝国が開戦準備まで終わらせて今回の会議に臨んでいるなら失敗もやり直しもできない。
(もっと早く分かっていたら⋯⋯)
「バレたら?」
「もう一度アメリア擬きで煙に巻くわ」
「なら、チョコレートを買ってから神殿を覗いてみるか」
「ねえ、なんの話をしてるの?」
話が途切れて声をかけられるチャンスを待っていたらしいイリスが聞いてきた。彼女にはセアラの仮説も作戦も話していない。
「イリスには内緒」
「えーっ、なんで!?」
「すごく大切な話だから。イリスはついうっかりが多いからこれは話せないの。本当は今から行くのにも連れて行きたくないくらい」
「セアラ、狡い」
「誰か誰と繋がってるかも分からないし、どこで聞いてるかも分からない状況だから。部屋でも話さないでね」
セアラ一人が遠くの部屋にされた事に理由があるなら警戒しなければならない。ただ、セアラとしてはそんな必要があるとは思っていないのだが⋯⋯。
「⋯⋯分かった。気に入らないけど我慢する。その代わり全部終わったら覚悟しておいてね、お姉ちゃんを仲間外れにした罰を受けてもらうんだから」
イリスの性格を考えると少しでも説明すればじっとしていられないと知っている。前回学園を休学してまで調査隊に参加したように、真冬の教会前で座り込みをしたように⋯⋯自分が大切だと思う人のためには無条件で何でもしてしまう。
(だから話さないの。もうこれ以上危険には巻き込めない)
食事の後、大通りを散策した証拠になりそうな店をいくつか周り少しだけ買い物をしておいた。
多くの国を侵略してできた帝国には色々な国の特色を持った商品が並んでいた。
「状況が違えば何日かかけてゆっくりお店を回りたいくらいだね」
ちゃっかりライルへのお土産は手に入れているイリスだが、さっき見かけた店のラグが気になっているらしい。
卒業後には新婚生活が待っているから多分新居で使いたいのだろう。
「チョコレートも買ったし、神殿に行ってみましょう」
新しい神殿は宮殿の東側に聳え立っていた。
王宮を取り囲む堅牢な城壁とそこから見える赤い建屋とはかけ離れた芝の植えられた広い敷地には、白い石灰岩と赤いレンガで作られ門があり前庭を挟んで中央聖堂が建てられている。
聖堂の前室には数々のモザイク画や彫刻が飾られ、その奥のドームから降り注ぐ陽の光は床に描かれた宗教画を照らしていた。
神聖女聖堂は⋯⋯単純に聖女聖堂と呼ばれ中央聖堂の奥に建てられているかなり小ぶりの建物。
「ここで見張ってる。多分だけど何か調べにきたんでしょ?」
イリスが勘のいいところを見せてサムズアップした。
「うん、助かる。怪しげな人が来たら聖堂に来てね」
「了解!」
「夕方のお迎えをお願いしていいかしら?」
「我々がご案内させていただきたいと思っておりますが?」
セアラ達と年はそれほど違わないが筋肉質で岩をバリバリ食べそうな偉丈夫3人が剣に手をかけたまま辺りを見回した。
「大通りから外れるつもりはないからお手数をかけるほどのことはないと思うの。買い物にゆっくりと時間がかけたい方だし⋯⋯のんびりお店を回るだけなの。
待たせてるって思うとゆっくり選べなさそうで⋯⋯」
セアラが小首を傾げて純朴そうに笑いかけると護衛という名目の監視役はあっさりと引き下がった。
「そうですね。確かにこの辺りは治安も良いですし⋯⋯夕刻この噴水広場にお迎えに参ります」
「わあ、助かります。帝国なんて二度と来れないかもだし、ゆっくり見学させてもらいますね。そうだわ、是非見ておくと良いですよっていうオススメとかあるかしら?」
「レミルトンと言う店のチョコケーキが一番人気です」
「レミルトンですね、楽しみだわ。チョコには目がないの」
見張り達はチラチラと振り返りながら城へ帰って行った。
「セアラ、二重人格って知ってる?」
笑いを堪えたイリスの肩が震えている。
「最近色々勉強したの。別人になる必要があったりもしたし⋯⋯今回はアメリアがおねだりする時を少しイメージしてみたんだけど⋯⋯これってすごく、役に立つわ」
「アメリアよりよっぽど効果的よ。あの娘のは胡散臭くて白々しかったけど、セアラのは⋯⋯かなりやばいと思う。ね、ルーク」
苦虫を噛み潰したような顔のルークがセアラを睨みつけた。
「あれは駄目だ。禁止だな」
訳の分からない禁止令を出されたセアラはムッとして言い返した。
「だってあの人達がいたら落ち着かないし、話もしにくいじゃない」
気持ちを切り替えて街を散策しようと決めたセアラ達だったが、先ずは腹ごしらえからだとルーク達が言い出した。
「じゃあ、あそこは? テラスがあるから周りの様子も見れるし話もしやすいわ」
店に入って豆と羊のスープやパイを注文し、料理が届き周りに人がいなくなるのを待って本題に入った。
「昨日見た時は街の人の敵意が気になっていて気付かなかったけど、相手の思惑を考えながら城壁とかを見てみたら守備は万全って感じね」
城壁を越えた後も中の作りは複雑になっていて、容易に皇帝に行き着く事はできないだろう。
「手引きする人でもいなければ絶対迷子になって終わりそうよね」
普段呑気なイリスも真剣に考え込んでいる。
「大通りも東西南北に整備されてるだろ? 道幅といい戦に出る時に軍隊が出撃するにもバリケードを張るにも適した作りになってる」
道の要所要所にはそれ用の土嚢などが準備されていたのをルークは見ていた。
「軍事国家ってそういうもの?」
「ここはそれに特化してると言っていいかもな。城や王都だけじゃなくその途中の街道も⋯⋯帝国は常にどこかと争ってるからそんなもんかもな」
「そんなに?」
「軍事力と資金力に任せ国を拡大し続けてきた帝国が今までベルスペクト王国に手を伸ばしてこなかったのが不思議なくらいだし」
「宝物のせいかしら?」
戦争を仕掛けて隠されていた宝物が破壊されたりそれに関する資料が失われるのを危惧したのかもしれない。
もしそうなら、宝物を返還した後は遠慮する必要がなくなることになる。
「だから属国にしようと狙ってるの?」
「実際のところ王国は王家の采配が上手くいってるから良いが、そうでなければ戦を仕掛けてまで手に入れたいと思うほどの国じゃない」
「帝国にしてみれば登山と一緒ね。そこに国があるから侵略するだけ」
ルークが『そういう事だろうな』と言いながら肩をすくめた。
「今日、旧神殿に行ったけど思うような成果がなかったの。明日新しい神殿に行った時の一発勝負になるけど大丈夫?」
「ああ、神殿の構造は調べてある。聖女の儀式が聞いている通りの場所であるならなんとかなるだろうと思う」
セアラはある仮説を立てており、それが上手くいけば聖女伝説の真実を解き明かすことになる。
その為の作戦でルークは最も重要な役目を担っている。
「だろうじゃ駄目なの。絶対に成功させなくちゃ、王国がなくなっちゃう。自信がないならこの後神殿を覗いてみましょう」
昨夜の話を聞くまでは失敗した時には仕切り直しする時間があるかもしれないと楽観視していた。帝国が開戦準備まで終わらせて今回の会議に臨んでいるなら失敗もやり直しもできない。
(もっと早く分かっていたら⋯⋯)
「バレたら?」
「もう一度アメリア擬きで煙に巻くわ」
「なら、チョコレートを買ってから神殿を覗いてみるか」
「ねえ、なんの話をしてるの?」
話が途切れて声をかけられるチャンスを待っていたらしいイリスが聞いてきた。彼女にはセアラの仮説も作戦も話していない。
「イリスには内緒」
「えーっ、なんで!?」
「すごく大切な話だから。イリスはついうっかりが多いからこれは話せないの。本当は今から行くのにも連れて行きたくないくらい」
「セアラ、狡い」
「誰か誰と繋がってるかも分からないし、どこで聞いてるかも分からない状況だから。部屋でも話さないでね」
セアラ一人が遠くの部屋にされた事に理由があるなら警戒しなければならない。ただ、セアラとしてはそんな必要があるとは思っていないのだが⋯⋯。
「⋯⋯分かった。気に入らないけど我慢する。その代わり全部終わったら覚悟しておいてね、お姉ちゃんを仲間外れにした罰を受けてもらうんだから」
イリスの性格を考えると少しでも説明すればじっとしていられないと知っている。前回学園を休学してまで調査隊に参加したように、真冬の教会前で座り込みをしたように⋯⋯自分が大切だと思う人のためには無条件で何でもしてしまう。
(だから話さないの。もうこれ以上危険には巻き込めない)
食事の後、大通りを散策した証拠になりそうな店をいくつか周り少しだけ買い物をしておいた。
多くの国を侵略してできた帝国には色々な国の特色を持った商品が並んでいた。
「状況が違えば何日かかけてゆっくりお店を回りたいくらいだね」
ちゃっかりライルへのお土産は手に入れているイリスだが、さっき見かけた店のラグが気になっているらしい。
卒業後には新婚生活が待っているから多分新居で使いたいのだろう。
「チョコレートも買ったし、神殿に行ってみましょう」
新しい神殿は宮殿の東側に聳え立っていた。
王宮を取り囲む堅牢な城壁とそこから見える赤い建屋とはかけ離れた芝の植えられた広い敷地には、白い石灰岩と赤いレンガで作られ門があり前庭を挟んで中央聖堂が建てられている。
聖堂の前室には数々のモザイク画や彫刻が飾られ、その奥のドームから降り注ぐ陽の光は床に描かれた宗教画を照らしていた。
神聖女聖堂は⋯⋯単純に聖女聖堂と呼ばれ中央聖堂の奥に建てられているかなり小ぶりの建物。
「ここで見張ってる。多分だけど何か調べにきたんでしょ?」
イリスが勘のいいところを見せてサムズアップした。
「うん、助かる。怪しげな人が来たら聖堂に来てね」
「了解!」
8
お気に入りに追加
717
あなたにおすすめの小説
身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「おい、アドレーラ。死んだか?」
私の婚約者であるルーパート様は、私を井戸の底へと突き落としてから、そう問いかけてきました。……ルーパート様は、長い間、私を虐待していた事実が明るみになるのを恐れ、私を殺し、すべてを隠ぺいしようとしたのです。
井戸に落ちたショックで、私は正気を失い、実家に戻ることになりました。心も体も元には戻らず、ただ、涙を流し続ける悲しい日々。そんなある日のこと、私の幼馴染であるランディスが、私の体に残っていた『虐待の痕跡』に気がつき、ルーパート様を厳しく問い詰めました。
ルーパート様は知らぬ存ぜぬを貫くだけでしたが、ランディスは虐待があったという確信を持ち、決定的な証拠をつかむため、特殊な方法を使う決意をしたのです。
そして、すべてが白日の下にさらされた時。
ルーパート様は、とてつもなく恐ろしい目にあうことになるのでした……
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】悪女扱いした上に婚約破棄したいですって?
冬月光輝
恋愛
私ことアレクトロン皇国の公爵令嬢、グレイス=アルティメシアは婚約者であるグラインシュバイツ皇太子殿下に呼び出され、平民の中で【聖女】と呼ばれているクラリスという女性との「真実の愛」について長々と聞かされた挙句、婚約破棄を迫られました。
この国では有責側から婚約破棄することが出来ないと理性的に話をしましたが、頭がお花畑の皇太子は激高し、私を悪女扱いして制裁を加えると宣い、あげく暴力を奮ってきたのです。
この瞬間、私は決意しました。必ずや強い女になり、この男にどちらが制裁を受ける側なのか教えようということを――。
一人娘の私は今まで自由に生きたいという感情を殺して家のために、良い縁談を得る為にひたすら努力をして生きていました。
それが無駄に終わった今日からは自分の為に戦いましょう。どちらかが灰になるまで――。
しかし、頭の悪い皇太子はともかく誰からも愛され、都合の良い展開に持っていく、まるで【物語のヒロイン】のような体質をもったクラリスは思った以上の強敵だったのです。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。
そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。
しかしその婚約は、すぐに破談となる。
ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。
メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。
ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。
その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる