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14.不正疑惑を信じる者達
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「今回は君の圧勝だが次は負けないから」
首席で入学し新入生挨拶をしたローランド・アーカンソー伯爵令息は学級委員長を務めており、財務大臣の次男でグレイス・ルーカン伯爵令嬢の婚約者。卒業後はアーカンソー伯爵の従属爵位を譲り受けダルメニー子爵となりグレイスと婚姻する予定になっている。
(アーカンソー伯爵家は確か、レトビア公爵家と共にあの襲撃に参加した貴族の一人だわ)
「ありがとうございます。次も精一杯頑「セアラ様は不正したのです!! だから、ローランド様こそ1位ですわ!!」」
セアラがローランドに礼を言いながら差し出された手を取ろうとした時グレイスの大きな声が響き渡った。成績を確認に来ていた生徒達と噂を聞きつけて集まっていた野次馬達が静まり返りセアラに注目が集まった。
「確かにその噂は聞いてるけどね、ここに発表されたという事は不正があったかどうか明らかになってないって事なんじゃないかな。噂なんてあてにならないからね不正などなかったのかもしれない」
「ローランド様、まだわかりませんわよ。書き換えが間に合わなかっただけかもしれませんわ。
教師陣が試験結果の調べ直しでここ数日忙しくしておられたのは本当の事ですもの。火のないところに煙は立たないと言いますわ」
グレイスに続いてシャーロットも参戦してきた。彼女達の言い分に周りの生徒達の不信感が募っていくのが手に取るようにわかったセアラは怒りで歯を食いしばった。
(ここで言い返しても誰も信じない。それよりも噂が広がるばかりだわ)
「不正があっても私の点数には関係ないからね。自分の順位より何点だったかの方が大事なんだ。思ったより点が取れていない事の方が気になるよ。
それにね、シャーロット嬢の意見も理解できるがここで騒いでもしょうがないだろ?
噂が本当であればこの後オーシエン先生から話があるんじゃないかな。取り敢えずそれを聞くまではセアラ嬢が一位だ。
さて、そろそろ教室に行かなくては遅刻になってしまうよ。ではセアラ嬢私達はお先に失礼」
グレイスをエスコートしながら悠然と歩き去って行くローランドの後ろ姿を見つめる生徒達の中から称賛の声が聞こえた。
「流石公明正大なローランド様だな」
「不正されてもご自身には関係ないなんて」
「あんな高得点でもまだ足りないとか、志の高さ凄すぎ」
蔑んだ目でセアラを一瞥した周りの生徒達が教室へ向かって移動をはじめた。
(大したものだわ。ご自分の評判を上げつつ噂の審議はこれからだってみんなに思わせるなんて。お陰で噂の信憑性が高まったわ。学園に不正疑惑を植え付けたのってシャーロット様達かしら⋯⋯それとも)
セアラが教室に向けて歩き出すと不満げな顔のシャーロット達がゾロゾロとついて来たが、先を行くグレイスはローランドと並んで歩きながら顔を近づけてヒソヒソと何か話している。
教室では生徒達がいくつかのグループに固まって蹇々囂々意見を言い合っていたがセアラが教室の入り口を入った途端しんと静まり返り居心地悪そうに顔を背けたまま席につきはじめた。
セアラ達の後ろからオーシエン先生の『みんな席につけ』と言う声が聞こえてきた。教壇に立ったオーシエンは席についた生徒達を見回した後いつも通りの朝会をはじめた。
「試験結果はもう確認したか? 成績優秀者はこれからも今まで通りに、それ以外の者は次の試験までにより一層研鑽する事。来年度クラス落ちにならないように頑張ってくれ。今日はこれで解散だ。休み明けには小テストが待っているから気を抜かないようにな」
オーシエン言葉を切ると教室中がざわめきはじめた。
「えっ? 終わり?」
「あの噂って」
「先生! 今回の試験ではこのクラスで不正があったと聞いています。その人の処罰はどうなったんですか!?」
クラスの後ろの席から男子生徒が声を上げると教室内が静まりかえった。
「⋯⋯確かにそんな噂が出回っていたが教員総出で確認したがそんな事実はなかった」
「バレなかっただけでは?」
「だってローランド様より点が高いとか」
「だよな」
「しっかりと試験結果は確認をしたし試験中に怪しげな行動もなかった。どこから出た噂なのかも調査しているが君達は噂に惑わされず勉学に励んで欲しい」
オーシエンが教室を出た後も生徒達は教室に残りヒソヒソと話し込んでいた。不正はあったが証拠を見つけられなかっただけだと言う者と噂は間違いだったと言う者。そのどちらとも言えないと言う中立派に意見が分かれたがセアラは何も言わずに寮に戻る為に席を立った。
先程オーシエンに向かって疑問を投げかけた男子生徒のナダル・ブラウン伯爵令息がずかずかとセアラの目の前までやって来た。
「セアラ嬢、本当はやったんだろ? ローランド様より点数が高いとかあり得ない。正直に認めたらどうだ? カンニングしたんだろ?」
「⋯⋯しておりません」
「はあ、そんなわけないだろ。正直に言えよ。アリエノール様にも媚を売って同じクラスメイトとして恥ずかしいんだけど?」
「どうやってカンニングしたと仰るのでしょうか? 証拠もなく不正をしたと断言されるのは迷惑です」
「入学試験の成績でセアラ嬢はSクラスギリギリだったって聞いたんだ。それが突然一位だなんておかしすぎる。今回の試験の難易度を考えてあんな点数あり得ない」
首席で入学し新入生挨拶をしたローランド・アーカンソー伯爵令息は学級委員長を務めており、財務大臣の次男でグレイス・ルーカン伯爵令嬢の婚約者。卒業後はアーカンソー伯爵の従属爵位を譲り受けダルメニー子爵となりグレイスと婚姻する予定になっている。
(アーカンソー伯爵家は確か、レトビア公爵家と共にあの襲撃に参加した貴族の一人だわ)
「ありがとうございます。次も精一杯頑「セアラ様は不正したのです!! だから、ローランド様こそ1位ですわ!!」」
セアラがローランドに礼を言いながら差し出された手を取ろうとした時グレイスの大きな声が響き渡った。成績を確認に来ていた生徒達と噂を聞きつけて集まっていた野次馬達が静まり返りセアラに注目が集まった。
「確かにその噂は聞いてるけどね、ここに発表されたという事は不正があったかどうか明らかになってないって事なんじゃないかな。噂なんてあてにならないからね不正などなかったのかもしれない」
「ローランド様、まだわかりませんわよ。書き換えが間に合わなかっただけかもしれませんわ。
教師陣が試験結果の調べ直しでここ数日忙しくしておられたのは本当の事ですもの。火のないところに煙は立たないと言いますわ」
グレイスに続いてシャーロットも参戦してきた。彼女達の言い分に周りの生徒達の不信感が募っていくのが手に取るようにわかったセアラは怒りで歯を食いしばった。
(ここで言い返しても誰も信じない。それよりも噂が広がるばかりだわ)
「不正があっても私の点数には関係ないからね。自分の順位より何点だったかの方が大事なんだ。思ったより点が取れていない事の方が気になるよ。
それにね、シャーロット嬢の意見も理解できるがここで騒いでもしょうがないだろ?
噂が本当であればこの後オーシエン先生から話があるんじゃないかな。取り敢えずそれを聞くまではセアラ嬢が一位だ。
さて、そろそろ教室に行かなくては遅刻になってしまうよ。ではセアラ嬢私達はお先に失礼」
グレイスをエスコートしながら悠然と歩き去って行くローランドの後ろ姿を見つめる生徒達の中から称賛の声が聞こえた。
「流石公明正大なローランド様だな」
「不正されてもご自身には関係ないなんて」
「あんな高得点でもまだ足りないとか、志の高さ凄すぎ」
蔑んだ目でセアラを一瞥した周りの生徒達が教室へ向かって移動をはじめた。
(大したものだわ。ご自分の評判を上げつつ噂の審議はこれからだってみんなに思わせるなんて。お陰で噂の信憑性が高まったわ。学園に不正疑惑を植え付けたのってシャーロット様達かしら⋯⋯それとも)
セアラが教室に向けて歩き出すと不満げな顔のシャーロット達がゾロゾロとついて来たが、先を行くグレイスはローランドと並んで歩きながら顔を近づけてヒソヒソと何か話している。
教室では生徒達がいくつかのグループに固まって蹇々囂々意見を言い合っていたがセアラが教室の入り口を入った途端しんと静まり返り居心地悪そうに顔を背けたまま席につきはじめた。
セアラ達の後ろからオーシエン先生の『みんな席につけ』と言う声が聞こえてきた。教壇に立ったオーシエンは席についた生徒達を見回した後いつも通りの朝会をはじめた。
「試験結果はもう確認したか? 成績優秀者はこれからも今まで通りに、それ以外の者は次の試験までにより一層研鑽する事。来年度クラス落ちにならないように頑張ってくれ。今日はこれで解散だ。休み明けには小テストが待っているから気を抜かないようにな」
オーシエン言葉を切ると教室中がざわめきはじめた。
「えっ? 終わり?」
「あの噂って」
「先生! 今回の試験ではこのクラスで不正があったと聞いています。その人の処罰はどうなったんですか!?」
クラスの後ろの席から男子生徒が声を上げると教室内が静まりかえった。
「⋯⋯確かにそんな噂が出回っていたが教員総出で確認したがそんな事実はなかった」
「バレなかっただけでは?」
「だってローランド様より点が高いとか」
「だよな」
「しっかりと試験結果は確認をしたし試験中に怪しげな行動もなかった。どこから出た噂なのかも調査しているが君達は噂に惑わされず勉学に励んで欲しい」
オーシエンが教室を出た後も生徒達は教室に残りヒソヒソと話し込んでいた。不正はあったが証拠を見つけられなかっただけだと言う者と噂は間違いだったと言う者。そのどちらとも言えないと言う中立派に意見が分かれたがセアラは何も言わずに寮に戻る為に席を立った。
先程オーシエンに向かって疑問を投げかけた男子生徒のナダル・ブラウン伯爵令息がずかずかとセアラの目の前までやって来た。
「セアラ嬢、本当はやったんだろ? ローランド様より点数が高いとかあり得ない。正直に認めたらどうだ? カンニングしたんだろ?」
「⋯⋯しておりません」
「はあ、そんなわけないだろ。正直に言えよ。アリエノール様にも媚を売って同じクラスメイトとして恥ずかしいんだけど?」
「どうやってカンニングしたと仰るのでしょうか? 証拠もなく不正をしたと断言されるのは迷惑です」
「入学試験の成績でセアラ嬢はSクラスギリギリだったって聞いたんだ。それが突然一位だなんておかしすぎる。今回の試験の難易度を考えてあんな点数あり得ない」
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