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11.セアラVSシャーロット軍団
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教室の入り口を入ると目を吊り上げたシャーロットがセアラに扇子を突きつけた。
「随分と姑息な手をお使いになるのね。アリエノール様とお知り合いだと一言も仰らないなんて⋯⋯。入学してからもう何ヶ月も経ちますのに、わたくしに恥をかかせて楽しかったかしら」
「田舎者だからと親切にして差し上げておりましたのに、まさかこのような⋯⋯恩を仇で返すような事をなさるなんて」
シャーロット達から攻撃を受ける事は予想済みだったが青筋を立てて迫るシャーロット達の気迫に動揺してセアラは思わず一歩後ずさってしまった。
「アリエノール様とは今日初めてお会いしましたの。まして、お声をかけて頂くなどと思いもしておりませんでした」
「それで? 随分と長く話し込んでおられたようですけれど、どんなお話だったのかしら。まさか生徒会長秘書に⋯⋯なんてお声をかけていただいたわけではないんでしょうね」
「ありがたいことにお声をかけていただきましたのでお受けいたしました」
セアラの言葉にバキバキッと誰かの扇子が折れる音がした。
「なっ、なんで貴方のような出来損ないの田舎者が選ばれるのよ!! 公爵様のご許可もなくそんな勝手な事をして⋯⋯公爵様のご迷惑になったらどうなさいますの!?」
シャーロット達の言動に部屋の隅に固まって静観していた生徒達が眉を顰めた。
「出来損ないって⋯⋯Sクラスだし」
「でも田舎者なのはホントよね」
「王女殿下の秘書なんて務まるのかしら」
「シャーロット様が勝手に話しかけて勝手に恥をかいただけよね」
「生徒会秘書はご本人に決定権があるのにご存じないのかしら」
入学当初はシャーロット達に阿っていた生徒の方が多かったが彼女達の選民思想や横柄な態度に辟易し、最近はセアラを追い詰めるシャーロット達に冷ややかな目を向ける者の方が多くなっていた。
「まるで王女様と召使いだわ」
「我が国の王女様はあんなじゃないけどな」
ヒソヒソと聞こえる声の殆どがセアラを擁護しているのに気付いたグレイスが振り返って生徒達を睨みつけた。
「皆さん、ご自身が仰っていることの意味がわかっておられるのかしら!? シャーロット様はレトビア公爵様のご意向を鑑みてセアラ様に道理を解いておられるのよ。メイヨー侯爵家から抗議されても宜しいのかしら」
「レトビア公爵様もご不快に思われるのではなくて?」
「公爵家と侯爵家の両家から抗議されたら学園にはいられなくなってしまいますわね」
「学園どころか社交界もですわ」
いつもはニヤニヤ笑いを浮かべるだけのシャーロット達の取り巻き達が珍しく周りの生徒達に対して声高く嘲笑を浴びせはじめた。
窓際にいたシエナが目を吊り上げて一歩前に出ようとするのを隣の令嬢が押さえているのが見えた。
(マズい。シエナがキレそうだわ⋯⋯。それでなくてもクラス全体で喧嘩になりそう)
「生徒会役員秘書はとても名誉あるお仕事だと聞いておりますからお義父様は喜んでくださるのではないでしょうか? 公爵家の者に相応しいお役を頂いたと褒めていただけるかもしれませんわね」
セアラが王女殿下と関わりを持つ事を公爵は間違いなく気に入らないとわかっているが、王女相手では流石のレトビア公爵も手が出せないはず。普段は大人しくシャーロット達に従っているセアラだったがシャーロット達のヘイトを自分に集める為に態と強気で言い募った。
(例の書類で強権を発動するほどの事でもないと思うから、次にお会いした時何か言われてしまうくらいかしら)
「公爵家の養女になったばかりのわたくしが王女殿下から秘書に指名して頂いたのですもの」
セアラは口元にうっすらと笑みを浮かべて当然のような顔をしてシャーロットに言い切った。
いつも大人しく従っていたセアラがキッパリと言い返すたびにシャーロット達の眉間の皺が深くなっていった。シャーロット達はレトビア公爵からの指示でセアラを誰とも関わらせないようにと父親から厳命を受けており、このままでは公爵の不興や父親の怒りを買ってしまう。
「だったら⋯⋯そうだわ! アメリア様にお譲りなさいませ。あの方にこそ相応しいですもの。リチャード王子殿下とアメリア様がご結婚されたらアリエノール様は妹君になられるのだからご成婚前からお二人が親しくされる良い機会ですわ」
教室内には白けた空気が広がったがレトビア公爵と自身の父親の怒りで頭が一杯になったシャーロット達はそれに気付く余裕を無くしていた。
「リチャード様とアメリア様⋯⋯まだ本決まりではないのでしょう?」
「あのアリエノール様の秘書役にBクラスの方が? あり得ないわ」
「お勉強もだけどお人柄だってアレですしねぇ」
(アリエノール様からお聞きした時も思ったけどアメリア様の評判はかなり悪そうだわ。と言う事は多分、アメリア様の取り巻きのレベルも推して知るべしって感じね。今後影響してくるその方達の言動って⋯⋯かなりハードかも)
内心溜め息をつきながらどうすれば事態の収束が出来るのかを思案するセアラだった。
「アリエノール様のご判断に対してわたくしから否と申し上げるのは不敬にあたるのではないかと思いますの。ましてやわたくしのような者がアリエノール様の意に反して別の方を推薦するなどあり得ないことですわ。
わたくしではお役に立てないとお義父様が判断なさったならばアリエノール様に直接お話になられると思います」
素直に言う事を聞かないセアラに対し怒りでふるふると震えるシャーロットが言い返そうとした時、午後の授業の始まりの鐘が鳴り響いた。
「随分と姑息な手をお使いになるのね。アリエノール様とお知り合いだと一言も仰らないなんて⋯⋯。入学してからもう何ヶ月も経ちますのに、わたくしに恥をかかせて楽しかったかしら」
「田舎者だからと親切にして差し上げておりましたのに、まさかこのような⋯⋯恩を仇で返すような事をなさるなんて」
シャーロット達から攻撃を受ける事は予想済みだったが青筋を立てて迫るシャーロット達の気迫に動揺してセアラは思わず一歩後ずさってしまった。
「アリエノール様とは今日初めてお会いしましたの。まして、お声をかけて頂くなどと思いもしておりませんでした」
「それで? 随分と長く話し込んでおられたようですけれど、どんなお話だったのかしら。まさか生徒会長秘書に⋯⋯なんてお声をかけていただいたわけではないんでしょうね」
「ありがたいことにお声をかけていただきましたのでお受けいたしました」
セアラの言葉にバキバキッと誰かの扇子が折れる音がした。
「なっ、なんで貴方のような出来損ないの田舎者が選ばれるのよ!! 公爵様のご許可もなくそんな勝手な事をして⋯⋯公爵様のご迷惑になったらどうなさいますの!?」
シャーロット達の言動に部屋の隅に固まって静観していた生徒達が眉を顰めた。
「出来損ないって⋯⋯Sクラスだし」
「でも田舎者なのはホントよね」
「王女殿下の秘書なんて務まるのかしら」
「シャーロット様が勝手に話しかけて勝手に恥をかいただけよね」
「生徒会秘書はご本人に決定権があるのにご存じないのかしら」
入学当初はシャーロット達に阿っていた生徒の方が多かったが彼女達の選民思想や横柄な態度に辟易し、最近はセアラを追い詰めるシャーロット達に冷ややかな目を向ける者の方が多くなっていた。
「まるで王女様と召使いだわ」
「我が国の王女様はあんなじゃないけどな」
ヒソヒソと聞こえる声の殆どがセアラを擁護しているのに気付いたグレイスが振り返って生徒達を睨みつけた。
「皆さん、ご自身が仰っていることの意味がわかっておられるのかしら!? シャーロット様はレトビア公爵様のご意向を鑑みてセアラ様に道理を解いておられるのよ。メイヨー侯爵家から抗議されても宜しいのかしら」
「レトビア公爵様もご不快に思われるのではなくて?」
「公爵家と侯爵家の両家から抗議されたら学園にはいられなくなってしまいますわね」
「学園どころか社交界もですわ」
いつもはニヤニヤ笑いを浮かべるだけのシャーロット達の取り巻き達が珍しく周りの生徒達に対して声高く嘲笑を浴びせはじめた。
窓際にいたシエナが目を吊り上げて一歩前に出ようとするのを隣の令嬢が押さえているのが見えた。
(マズい。シエナがキレそうだわ⋯⋯。それでなくてもクラス全体で喧嘩になりそう)
「生徒会役員秘書はとても名誉あるお仕事だと聞いておりますからお義父様は喜んでくださるのではないでしょうか? 公爵家の者に相応しいお役を頂いたと褒めていただけるかもしれませんわね」
セアラが王女殿下と関わりを持つ事を公爵は間違いなく気に入らないとわかっているが、王女相手では流石のレトビア公爵も手が出せないはず。普段は大人しくシャーロット達に従っているセアラだったがシャーロット達のヘイトを自分に集める為に態と強気で言い募った。
(例の書類で強権を発動するほどの事でもないと思うから、次にお会いした時何か言われてしまうくらいかしら)
「公爵家の養女になったばかりのわたくしが王女殿下から秘書に指名して頂いたのですもの」
セアラは口元にうっすらと笑みを浮かべて当然のような顔をしてシャーロットに言い切った。
いつも大人しく従っていたセアラがキッパリと言い返すたびにシャーロット達の眉間の皺が深くなっていった。シャーロット達はレトビア公爵からの指示でセアラを誰とも関わらせないようにと父親から厳命を受けており、このままでは公爵の不興や父親の怒りを買ってしまう。
「だったら⋯⋯そうだわ! アメリア様にお譲りなさいませ。あの方にこそ相応しいですもの。リチャード王子殿下とアメリア様がご結婚されたらアリエノール様は妹君になられるのだからご成婚前からお二人が親しくされる良い機会ですわ」
教室内には白けた空気が広がったがレトビア公爵と自身の父親の怒りで頭が一杯になったシャーロット達はそれに気付く余裕を無くしていた。
「リチャード様とアメリア様⋯⋯まだ本決まりではないのでしょう?」
「あのアリエノール様の秘書役にBクラスの方が? あり得ないわ」
「お勉強もだけどお人柄だってアレですしねぇ」
(アリエノール様からお聞きした時も思ったけどアメリア様の評判はかなり悪そうだわ。と言う事は多分、アメリア様の取り巻きのレベルも推して知るべしって感じね。今後影響してくるその方達の言動って⋯⋯かなりハードかも)
内心溜め息をつきながらどうすれば事態の収束が出来るのかを思案するセアラだった。
「アリエノール様のご判断に対してわたくしから否と申し上げるのは不敬にあたるのではないかと思いますの。ましてやわたくしのような者がアリエノール様の意に反して別の方を推薦するなどあり得ないことですわ。
わたくしではお役に立てないとお義父様が判断なさったならばアリエノール様に直接お話になられると思います」
素直に言う事を聞かないセアラに対し怒りでふるふると震えるシャーロットが言い返そうとした時、午後の授業の始まりの鐘が鳴り響いた。
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