26 / 30
26.ローゼンタールの快進撃
しおりを挟む
天然ゴムと硫黄の化学結合による弾性の増大や電気絶縁性や耐久性などの特性が発見されたと知ったケインは、新会社の投資第一弾として天然ゴムのプランテーションに投資を決めた。
『石油から灯油を採った後に残るガソリンは産業廃棄物として廃棄されているが、いずれ内燃機関が開発されるはず。その時はゴム製品が益々注目されるはずだし、石油産業も買いだな』
それと同時にリリベルは⋯⋯安価なガラス製品の登場で衰退していた国のガラス産業に投資を決めた。
『名工達が古代作品の復刻作りに活路を見い出して動きはじめてますの。他国のガラス産業には真似のできない色ガラスを基本としたガラス・モザイク技術による新商品やインテリア製品など⋯⋯間違いなく伸びると思いますわ』
現地から帰ってきたリリベルは得意満面で買ってきたばかりのワイングラスを掲げた。
キャサリンとデイビッドが逮捕された事は瞬く間に社交界に広がり休暇中の学園にも周知された。
アーシェを犯罪者に仕立てようとした男爵令嬢のマーシャ・レングストンは『キャサリンに頼まれた』と罪を認め5年間の修道院送りとなった。
その他にもメアリー・トルダーンを筆頭にキャサリン親衛隊だった者達はアーシェへの暴言や私物の破棄・破損を認め、ローゼンタール伯爵家への謝罪と弁償や慰謝料を支払う事になった。
キャサリンはアーシェに対する行為が名誉毀損だけでなく詐欺罪や煽動罪だと判断された。祖父や母親の起こした恐喝・会社乗っ取り事件の幇助なども加算されリリベルが口にした通りの判決が下された。顔の左半分を潰され最下層の娼館に送られたが残っている右半分の美しさとのギャップに加虐思考の客が群がっているという。
ケレイブ子爵は爵位を剥奪されアンジーと共に地下牢に収監されている。現時点でも終身刑は間違いないが余罪が多すぎて刑の確定には至っていない。一日一回のカビたパンと水が出るが窓のない暗闇なので置かれた位置が分からず床を這い回りコップを倒せばその日は何も飲めない。
牢の外からは肉が焼けた匂いや焼きたてのパンの香りが漂ってくる。お腹を空かして幽鬼のようになっていくケレイブ元子爵とアンジーが目の前に並べられたおやつに飛びつくと取調官が全て取り上げ、それをつまみながら質問を繰り返した。
『ある方からの依頼でなあ⋯⋯理不尽に取り上げられる辛さを知りなさい⋯⋯だと』
骸骨のように痩せ衰えた頃ケレイブ元子爵は鉱山行き、アンジーは鉱山労働者専用の娼館行きが確定した。
ケレイブ子爵が設立した『ソルダート貿易会社』の中でケレイブ子爵達の犯罪を知っていた者達は共犯として子爵と共に鉱山へ送られた。子爵達の個人資産や解体された会社の資金で従業員への未払いの給与や退職金、ローゼンタール伯爵家やアーシェへの慰謝料を支払う事になったが、不足分は役員に名を連ねていた子爵家の親戚筋が支払い全員平民落ちした。
少し涼しい風が吹きはじめた頃長期休暇が終わり学園がはじまった。
「アーシェ、おめでとう!」
顔を合わせた途端抱きついてきたのはアリシアで、その後ろではサマンサがソワソワしながら順番待ちしていた。
「アリシア~、次が控えてるんだよお。お早く願いま~す」
サマンサともハグをして3人で仲良く教室に向かった。
「後でレイクウォールのお土産渡すわね。次は絶対3人で行きましょう! すっごく景色のいいところを見つけたの」
「イケメンの青年も見つけたんだよね~」
「あ、あれは⋯⋯その⋯⋯別に、ねえ」
真っ赤になって慌てるアリシアとニマニマ笑うサマンサに囲まれて教室に入るアーシェは満面の笑みを浮かべていた。
キャサリン親衛隊のリーダーだった侯爵令嬢のメアリー・トルダートンは学園を自主退学し隣国の子爵家へ嫁入りしたという。マーシャ・レングストンとトルダートン以外にいなくなったのは調査もせずアーシェを犯罪者扱いしたとして学園をクビになった元担任のテリー・サリスト。
それ以外のキャサリン親衛隊の旧メンバーは神妙な顔をして大人しく席についていた。
「みんな謝ってきたの?」
「ご両親と一緒にご本人も来られて和解できたと思うから、少ししたら落ち着くんじゃないかな」
アーシェ達がコソコソと話していると今年度の担任が教室に入ってきた。
新会社は順調な滑り出しを見せローゼンタール伯爵家にとって恐らく初めての穏やかで平和な日が続いていた。
ケインやリリベルの知識・人脈・情報収集能力・決断力⋯⋯全てはエマーソンとランドルフのおかげかもしれない。彼らの引き起こす突然の嵐に長年対処してきたふたりならではの実力と結束力で着々と成功を積み上げていった。
新会社の成功が広まるにつれ投資会社として相談に乗って欲しいといった誘いが増えていったが、我関せずのケイン達に業を煮やした貴族達がまたアーシェをターゲットにしはじめた。
「まさに、ローゼンタール伯爵家の快進撃ですなぁ。ご令嬢が卒業された後のご予定とかはもうお決まりですか?」
「後はアーシェ様のお相手探しですかな? もし良ければうちの三男が⋯⋯」
「我が家は政略結婚は懲り懲りでして⋯⋯そう言ったお話をされる家とのお付き合いは控えさせていただくと決めたのですよ」
「ケインとリリベルは頑張っておるのう」
銀行に提出する経営方針説明書を作り直していたエマーソンが呟いた。
「わしらの後始末がなくなって生き生きしとるそうじゃ」
資金使途資料を作成していたランドルフが顔を上げた。
「⋯⋯それ、誰情報じゃ?」
「ハウス・スチュワードのトーマスじゃ」
「あ~、ワシらへの嫌味じゃな」
「いや、威嚇じゃ。次にやったら尻の毛まで抜いちゃると顔に書いてあったわい」
「ワシら、素寒貧なのに? 最後に隠しとったのまでザッカリーが回収してったもんなあ」
「ありゃ、ケインの仕業じゃって。奴に隠し事はできんでな」
「確かに⋯⋯誰に似たんかのう。エマーソンには絶対に似とらんが」
「間違いなくレティじゃ⋯⋯わし、レティに同じ事を何回もやられたもん」
「レティかあ⋯⋯そう言やぁ、ワシがミランダにやられた時もレティに教えてもろうたって言いよったわ」
「今、経営方針説明書を書きよるが⋯⋯わしらの悪行が骨身に染みてきた」
経営方針説明書は中長期的に会社をどのように経営していくのかを計画的に示す為の書類。
「ワシもじゃ、銀行から融資を受けるのに資金使途を明確にせにゃならんとは思わんかった」
資金使途資料とは融資を受けた資金の使用用途について書かれた資料。
「わしらの場当たり的な契約に融資された金は使えんかった言うことじゃのう」
「ローゼンタール伯爵家が昔からケチじゃ貧乏じゃ言われとったのはそのせいじゃな。ザッカリーが言うとったが会社はローゼンタールから何回も金を借りとるって」
「わしらのとこに金を吐き出させにきとったんはそれでも足りん時ってやつじゃな」
ザッカリー達に自分達と同じ思いをさせない為に考えたケインとリリベルからのお仕置きだと気付いていない老人ふたりの後悔はまだまだ続きそうな予感。
『石油から灯油を採った後に残るガソリンは産業廃棄物として廃棄されているが、いずれ内燃機関が開発されるはず。その時はゴム製品が益々注目されるはずだし、石油産業も買いだな』
それと同時にリリベルは⋯⋯安価なガラス製品の登場で衰退していた国のガラス産業に投資を決めた。
『名工達が古代作品の復刻作りに活路を見い出して動きはじめてますの。他国のガラス産業には真似のできない色ガラスを基本としたガラス・モザイク技術による新商品やインテリア製品など⋯⋯間違いなく伸びると思いますわ』
現地から帰ってきたリリベルは得意満面で買ってきたばかりのワイングラスを掲げた。
キャサリンとデイビッドが逮捕された事は瞬く間に社交界に広がり休暇中の学園にも周知された。
アーシェを犯罪者に仕立てようとした男爵令嬢のマーシャ・レングストンは『キャサリンに頼まれた』と罪を認め5年間の修道院送りとなった。
その他にもメアリー・トルダーンを筆頭にキャサリン親衛隊だった者達はアーシェへの暴言や私物の破棄・破損を認め、ローゼンタール伯爵家への謝罪と弁償や慰謝料を支払う事になった。
キャサリンはアーシェに対する行為が名誉毀損だけでなく詐欺罪や煽動罪だと判断された。祖父や母親の起こした恐喝・会社乗っ取り事件の幇助なども加算されリリベルが口にした通りの判決が下された。顔の左半分を潰され最下層の娼館に送られたが残っている右半分の美しさとのギャップに加虐思考の客が群がっているという。
ケレイブ子爵は爵位を剥奪されアンジーと共に地下牢に収監されている。現時点でも終身刑は間違いないが余罪が多すぎて刑の確定には至っていない。一日一回のカビたパンと水が出るが窓のない暗闇なので置かれた位置が分からず床を這い回りコップを倒せばその日は何も飲めない。
牢の外からは肉が焼けた匂いや焼きたてのパンの香りが漂ってくる。お腹を空かして幽鬼のようになっていくケレイブ元子爵とアンジーが目の前に並べられたおやつに飛びつくと取調官が全て取り上げ、それをつまみながら質問を繰り返した。
『ある方からの依頼でなあ⋯⋯理不尽に取り上げられる辛さを知りなさい⋯⋯だと』
骸骨のように痩せ衰えた頃ケレイブ元子爵は鉱山行き、アンジーは鉱山労働者専用の娼館行きが確定した。
ケレイブ子爵が設立した『ソルダート貿易会社』の中でケレイブ子爵達の犯罪を知っていた者達は共犯として子爵と共に鉱山へ送られた。子爵達の個人資産や解体された会社の資金で従業員への未払いの給与や退職金、ローゼンタール伯爵家やアーシェへの慰謝料を支払う事になったが、不足分は役員に名を連ねていた子爵家の親戚筋が支払い全員平民落ちした。
少し涼しい風が吹きはじめた頃長期休暇が終わり学園がはじまった。
「アーシェ、おめでとう!」
顔を合わせた途端抱きついてきたのはアリシアで、その後ろではサマンサがソワソワしながら順番待ちしていた。
「アリシア~、次が控えてるんだよお。お早く願いま~す」
サマンサともハグをして3人で仲良く教室に向かった。
「後でレイクウォールのお土産渡すわね。次は絶対3人で行きましょう! すっごく景色のいいところを見つけたの」
「イケメンの青年も見つけたんだよね~」
「あ、あれは⋯⋯その⋯⋯別に、ねえ」
真っ赤になって慌てるアリシアとニマニマ笑うサマンサに囲まれて教室に入るアーシェは満面の笑みを浮かべていた。
キャサリン親衛隊のリーダーだった侯爵令嬢のメアリー・トルダートンは学園を自主退学し隣国の子爵家へ嫁入りしたという。マーシャ・レングストンとトルダートン以外にいなくなったのは調査もせずアーシェを犯罪者扱いしたとして学園をクビになった元担任のテリー・サリスト。
それ以外のキャサリン親衛隊の旧メンバーは神妙な顔をして大人しく席についていた。
「みんな謝ってきたの?」
「ご両親と一緒にご本人も来られて和解できたと思うから、少ししたら落ち着くんじゃないかな」
アーシェ達がコソコソと話していると今年度の担任が教室に入ってきた。
新会社は順調な滑り出しを見せローゼンタール伯爵家にとって恐らく初めての穏やかで平和な日が続いていた。
ケインやリリベルの知識・人脈・情報収集能力・決断力⋯⋯全てはエマーソンとランドルフのおかげかもしれない。彼らの引き起こす突然の嵐に長年対処してきたふたりならではの実力と結束力で着々と成功を積み上げていった。
新会社の成功が広まるにつれ投資会社として相談に乗って欲しいといった誘いが増えていったが、我関せずのケイン達に業を煮やした貴族達がまたアーシェをターゲットにしはじめた。
「まさに、ローゼンタール伯爵家の快進撃ですなぁ。ご令嬢が卒業された後のご予定とかはもうお決まりですか?」
「後はアーシェ様のお相手探しですかな? もし良ければうちの三男が⋯⋯」
「我が家は政略結婚は懲り懲りでして⋯⋯そう言ったお話をされる家とのお付き合いは控えさせていただくと決めたのですよ」
「ケインとリリベルは頑張っておるのう」
銀行に提出する経営方針説明書を作り直していたエマーソンが呟いた。
「わしらの後始末がなくなって生き生きしとるそうじゃ」
資金使途資料を作成していたランドルフが顔を上げた。
「⋯⋯それ、誰情報じゃ?」
「ハウス・スチュワードのトーマスじゃ」
「あ~、ワシらへの嫌味じゃな」
「いや、威嚇じゃ。次にやったら尻の毛まで抜いちゃると顔に書いてあったわい」
「ワシら、素寒貧なのに? 最後に隠しとったのまでザッカリーが回収してったもんなあ」
「ありゃ、ケインの仕業じゃって。奴に隠し事はできんでな」
「確かに⋯⋯誰に似たんかのう。エマーソンには絶対に似とらんが」
「間違いなくレティじゃ⋯⋯わし、レティに同じ事を何回もやられたもん」
「レティかあ⋯⋯そう言やぁ、ワシがミランダにやられた時もレティに教えてもろうたって言いよったわ」
「今、経営方針説明書を書きよるが⋯⋯わしらの悪行が骨身に染みてきた」
経営方針説明書は中長期的に会社をどのように経営していくのかを計画的に示す為の書類。
「ワシもじゃ、銀行から融資を受けるのに資金使途を明確にせにゃならんとは思わんかった」
資金使途資料とは融資を受けた資金の使用用途について書かれた資料。
「わしらの場当たり的な契約に融資された金は使えんかった言うことじゃのう」
「ローゼンタール伯爵家が昔からケチじゃ貧乏じゃ言われとったのはそのせいじゃな。ザッカリーが言うとったが会社はローゼンタールから何回も金を借りとるって」
「わしらのとこに金を吐き出させにきとったんはそれでも足りん時ってやつじゃな」
ザッカリー達に自分達と同じ思いをさせない為に考えたケインとリリベルからのお仕置きだと気付いていない老人ふたりの後悔はまだまだ続きそうな予感。
4
お気に入りに追加
2,741
あなたにおすすめの小説
(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに
青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。
仕方がないから従姉妹に譲りますわ。
どうぞ、お幸せに!
ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
え、幼馴染みを愛している? 彼女の『あの噂』のこと、ご存じないのですか?
水上
恋愛
「おれはお前ではなく、幼馴染である彼女を愛しているんだ」
子爵令嬢である私、アマンダ・フィールディングは、婚約者であるサム・ワイスマンが連れて来た人物を見て、困惑していた。
彼が愛している幼馴染というのは、ボニー・フルスカという女性である。
しかし彼女には、『とある噂』があった。
いい噂ではなく、悪い噂である。
そのことをサムに教えてあげたけれど、彼は聞く耳を持たなかった。
彼女はやめておいた方がいいと、私はきちんと警告しましたよ。
これで責任は果たしました。
だからもし、彼女に関わったせいで身を滅ぼすことになっても、どうか私を恨まないでくださいね?
王子様、あなたの不貞を私は知っております
岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。
「私は知っております。王子様の不貞を……」
場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で?
本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
殿下へ。貴方が連れてきた相談女はどう考えても◯◯からの◯◯ですが、私は邪魔な悪女のようなので黙っておきますね
日々埋没。
恋愛
「ロゼッタが余に泣きながらすべてを告白したぞ、貴様に酷いイジメを受けていたとな! 聞くに耐えない悪行とはまさしくああいうことを言うのだろうな!」
公爵令嬢カムシールは隣国の男爵令嬢ロゼッタによる虚偽のイジメ被害証言のせいで、婚約者のルブランテ王太子から強い口調で婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚だったためカムシールは二つ返事で了承し、晴れてルブランテをロゼッタに押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って明らかに〇〇からの〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
真実に気がついていながらもあえてカムシールが黙っていたことで、ルブランテはやがて愚かな男にふさわしい憐れな最期を迎えることになり……。
※こちらの作品は改稿作であり、元となった作品はアルファポリス様並びに他所のサイトにて別のペンネームで公開しています。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる