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21.簡単には変われない!
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テーブルクロスを含めて全てが一新されハーブティーとお菓子が並べられた。
「おじさん、おばさん⋯⋯ごめんなさい」
デイビッドが膝に手を置いて深々と頭を下げた。
「私達より先に謝る相手がいるだろう?」
「アーシェ、ごめん。アーシェは俺の事よく分かってくれてるから許してくれるよね」
「えーっと⋯⋯ええ?」
「小さい頃から一緒にいた幼馴染だし、10年以上婚約してたし。今回の勘違い⋯⋯と言うかキャサリンにすっかり騙されてた。あんな美人が嘘つくなんて思いもしなかったよ。もうすっかり目が覚めた! ものすごく反省してるからこれからもよろしく、いいだろ?」
「はあ? それって全部水に流せって言ってるの?」
「う、うん。二度とおんなじ間違いはしないって約束するし⋯⋯あんな美人なんてそうそういないしね。反省してるから今まで通り、お願いします!」
「⋯⋯じゃあ、全部水に流そうかな」
「マジ? やったぁ! やっぱりアーシェが一番だよな。うんうん」
ほんの数分前の反省はどこへ行ったのか、腕を組んで椅子の背にだらしなくもたれたデイビッドが満足そうに頷いた。
「良かったね、婚約の話も幼馴染だった事も全部水に流したからね!」
「へ?」
ポカンと口を開けて間抜け顔を晒したデイビッドの前でケインとリリベルが笑いを堪えきれず吹き出した。
「キャンストル伯爵家とローゼンタール伯爵家が今後どんな付き合いをするのかは大人達が話し合ってくださると思うし、デイビッドがしでかした事への対応もお父様やお母様にお任せするつもりなの。学園で私の私物を壊したり冤罪を仕掛けてきた人たちへの対応なんかもね。
でも、私に関して言えば全部水に流したから何もなくなったってこと。デイビッドとの関わりはぜ~んぶ流れて消えたから今後は学園で会っても声かけたりしないでね」
「そんな! それじゃあ俺はどうすればいいんだよ!? ローゼンタール伯爵家を継ぐってずっと思ってたのに、今更他の人を探すなんて面倒だし⋯⋯このまま兄上が帰ってこなくてキャンストル伯爵家が継げるっていうならアレだけどさあ、おじさんの話だとなんか貧乏っぽいし。
その点ローゼンタールは裕福だしおじさん達はしっかり仕事してて⋯⋯アーシェはいつだって俺の願いを聞いてくれてたし」
ぶちぶちと文句を言いながら上目遣いでアーシェを見るデイビッドには断られるとは微塵も思っていない自信が見え隠れしていた。
「うっわあ! ここまできてもその発言って、本当にデイビッドって最低だよね。最後にもう一回言っとくけどこの国は女子の爵位継承を認めてるんだから、私と結婚しても伯爵家は継げません。ちゃんと勉強して将来は真面目に仕事をする人をこれから探すけど、その候補にデイビッドは絶対に入らないから。
それと、願いを聞いてたんじゃなくて無理矢理聞かされてたの! 言うこと聞くまで暴言吐いたり付き纏ったりでしつこかったから諦めてたの!
それに他の人を探す面倒なんてないじゃない。牢から出てくるのを待たなきゃだけど⋯⋯返品不可だから義妹予定の方に最後までお世話してもらったら?」
「デイビッド、これ以上くだらない駄々を捏ねてアーシェに迷惑をかけるなら二度と煩わされずに済む場所へ行ってもらおうかしら? 候補はそうねえ⋯⋯ガレオン船の漕ぎ手とか採掘鉱夫とかプランテーションなら色々あるわよ? お茶・コーヒー・サトウキビ・パイナップル・ゴム・綿花⋯⋯アヘンは流石にお勧めしないけどそれ以外ならどれでも選び放題ね。どれも頭より体力重視だからデイビッドにはお勧めだと思うの。通常は短期契約だけど生涯契約にしていただけば楽ちんよ」
「お、おばさん⋯⋯それって犯罪奴隷とかと同じ扱いじゃないかな~」
「デイビッドはわたくしの娘を理由なく虐めた犯罪者ですもの、問題はなくてよ?」
這々の体でローゼンタール伯爵邸から逃げ帰ったデイビッドを待っていたのはセドリックを後ろに従えたランドルフとエマーソンのふたり。
「た、ただいま帰りました。お祖父様がお戻りだとは知らなくて⋯⋯父上は今旅⋯⋯」
「ライルがどこにいて何をしておるかは全て知っとる。それよりもデイビッド、あの2階の部屋はなんじゃ?」
ランドルフに首根っこを掴まれて2階の部屋に連れて行かれたデイビッドは自分のしでかした事にようやく気付いて慌てふためいた。
白と金で統一された部屋には複雑な模様が彫られた家具が並び、赤とピンクのファブリックがあちこちに散乱していた。
(ま、マズい! どうしよう⋯⋯なんて言い訳したら良いんだ!?)
「隣の部屋と貴様の部屋も見てみたが部屋の改装費・家具や備品の購入費・衣装やら装飾品の購入費はどうやって工面した? 支払いはどうなってるか言ってみろ」
ランドルフの言葉で他の部屋のチェックも終わっていると知ったデイビッドはここにいない元凶に押し付けることにした。
「あ、あの⋯⋯父上から当主代理って言っていただいて、その俺の裁量で自由にして良いって。でもやりすぎたなあと反省してるので、売れる物は全て売却しますね!」
「そうか、なら当主の印をだせ」
「へ?」
「当主代理を任命した時には印を預ける。そんなものは当たり前の知識じゃろうが」
知っていて対応を見られているとは思ってもいないデイビッドはこの場を言い逃れできれば後は誰かがなんとかしてくれると信じていた。
「俺は学園に行くから留守にする事が多いんでセドリックが預かってるはずです。だよな~?」
(父上が投資に失敗したとか変な女に騙されるから悪いんだよな。俺は精一杯義妹予定のキャサリンをもてなそうとしてただけだし? アーシェがあんなにケチケチしなければ支払いだって終わってたはずなんだ。アーシェやおばさんの機嫌が治るまで支払いを待ってくれるかな。ああ、ヤバい⋯⋯どうしよう)
「当主でもなく当主代理でもない準成人したばかりの青二才がのう、支払いはどうするつもりじゃ?」
「おじさん、おばさん⋯⋯ごめんなさい」
デイビッドが膝に手を置いて深々と頭を下げた。
「私達より先に謝る相手がいるだろう?」
「アーシェ、ごめん。アーシェは俺の事よく分かってくれてるから許してくれるよね」
「えーっと⋯⋯ええ?」
「小さい頃から一緒にいた幼馴染だし、10年以上婚約してたし。今回の勘違い⋯⋯と言うかキャサリンにすっかり騙されてた。あんな美人が嘘つくなんて思いもしなかったよ。もうすっかり目が覚めた! ものすごく反省してるからこれからもよろしく、いいだろ?」
「はあ? それって全部水に流せって言ってるの?」
「う、うん。二度とおんなじ間違いはしないって約束するし⋯⋯あんな美人なんてそうそういないしね。反省してるから今まで通り、お願いします!」
「⋯⋯じゃあ、全部水に流そうかな」
「マジ? やったぁ! やっぱりアーシェが一番だよな。うんうん」
ほんの数分前の反省はどこへ行ったのか、腕を組んで椅子の背にだらしなくもたれたデイビッドが満足そうに頷いた。
「良かったね、婚約の話も幼馴染だった事も全部水に流したからね!」
「へ?」
ポカンと口を開けて間抜け顔を晒したデイビッドの前でケインとリリベルが笑いを堪えきれず吹き出した。
「キャンストル伯爵家とローゼンタール伯爵家が今後どんな付き合いをするのかは大人達が話し合ってくださると思うし、デイビッドがしでかした事への対応もお父様やお母様にお任せするつもりなの。学園で私の私物を壊したり冤罪を仕掛けてきた人たちへの対応なんかもね。
でも、私に関して言えば全部水に流したから何もなくなったってこと。デイビッドとの関わりはぜ~んぶ流れて消えたから今後は学園で会っても声かけたりしないでね」
「そんな! それじゃあ俺はどうすればいいんだよ!? ローゼンタール伯爵家を継ぐってずっと思ってたのに、今更他の人を探すなんて面倒だし⋯⋯このまま兄上が帰ってこなくてキャンストル伯爵家が継げるっていうならアレだけどさあ、おじさんの話だとなんか貧乏っぽいし。
その点ローゼンタールは裕福だしおじさん達はしっかり仕事してて⋯⋯アーシェはいつだって俺の願いを聞いてくれてたし」
ぶちぶちと文句を言いながら上目遣いでアーシェを見るデイビッドには断られるとは微塵も思っていない自信が見え隠れしていた。
「うっわあ! ここまできてもその発言って、本当にデイビッドって最低だよね。最後にもう一回言っとくけどこの国は女子の爵位継承を認めてるんだから、私と結婚しても伯爵家は継げません。ちゃんと勉強して将来は真面目に仕事をする人をこれから探すけど、その候補にデイビッドは絶対に入らないから。
それと、願いを聞いてたんじゃなくて無理矢理聞かされてたの! 言うこと聞くまで暴言吐いたり付き纏ったりでしつこかったから諦めてたの!
それに他の人を探す面倒なんてないじゃない。牢から出てくるのを待たなきゃだけど⋯⋯返品不可だから義妹予定の方に最後までお世話してもらったら?」
「デイビッド、これ以上くだらない駄々を捏ねてアーシェに迷惑をかけるなら二度と煩わされずに済む場所へ行ってもらおうかしら? 候補はそうねえ⋯⋯ガレオン船の漕ぎ手とか採掘鉱夫とかプランテーションなら色々あるわよ? お茶・コーヒー・サトウキビ・パイナップル・ゴム・綿花⋯⋯アヘンは流石にお勧めしないけどそれ以外ならどれでも選び放題ね。どれも頭より体力重視だからデイビッドにはお勧めだと思うの。通常は短期契約だけど生涯契約にしていただけば楽ちんよ」
「お、おばさん⋯⋯それって犯罪奴隷とかと同じ扱いじゃないかな~」
「デイビッドはわたくしの娘を理由なく虐めた犯罪者ですもの、問題はなくてよ?」
這々の体でローゼンタール伯爵邸から逃げ帰ったデイビッドを待っていたのはセドリックを後ろに従えたランドルフとエマーソンのふたり。
「た、ただいま帰りました。お祖父様がお戻りだとは知らなくて⋯⋯父上は今旅⋯⋯」
「ライルがどこにいて何をしておるかは全て知っとる。それよりもデイビッド、あの2階の部屋はなんじゃ?」
ランドルフに首根っこを掴まれて2階の部屋に連れて行かれたデイビッドは自分のしでかした事にようやく気付いて慌てふためいた。
白と金で統一された部屋には複雑な模様が彫られた家具が並び、赤とピンクのファブリックがあちこちに散乱していた。
(ま、マズい! どうしよう⋯⋯なんて言い訳したら良いんだ!?)
「隣の部屋と貴様の部屋も見てみたが部屋の改装費・家具や備品の購入費・衣装やら装飾品の購入費はどうやって工面した? 支払いはどうなってるか言ってみろ」
ランドルフの言葉で他の部屋のチェックも終わっていると知ったデイビッドはここにいない元凶に押し付けることにした。
「あ、あの⋯⋯父上から当主代理って言っていただいて、その俺の裁量で自由にして良いって。でもやりすぎたなあと反省してるので、売れる物は全て売却しますね!」
「そうか、なら当主の印をだせ」
「へ?」
「当主代理を任命した時には印を預ける。そんなものは当たり前の知識じゃろうが」
知っていて対応を見られているとは思ってもいないデイビッドはこの場を言い逃れできれば後は誰かがなんとかしてくれると信じていた。
「俺は学園に行くから留守にする事が多いんでセドリックが預かってるはずです。だよな~?」
(父上が投資に失敗したとか変な女に騙されるから悪いんだよな。俺は精一杯義妹予定のキャサリンをもてなそうとしてただけだし? アーシェがあんなにケチケチしなければ支払いだって終わってたはずなんだ。アーシェやおばさんの機嫌が治るまで支払いを待ってくれるかな。ああ、ヤバい⋯⋯どうしよう)
「当主でもなく当主代理でもない準成人したばかりの青二才がのう、支払いはどうするつもりじゃ?」
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