21 / 65
21.戦いに勝つ為のポイント
しおりを挟む
「五月蝿い! 夜半まで連れ回した事は既に明白。証人もおるのじゃ。言い逃れできぬと心得よ!」
(余は国王じゃ! とか言いそうな節回しになってきた。お芝居の見過ぎかしら・・)
「ああ、そうで御座いました。その日お泊まりになられていたご友人の方がおられたのでした。
その方にも是非お話を聞かせて頂きたいと思っておりました。
大切なお客様がご逗留になられているその日に限ってデイジー様がレディに相応しくない行いをなされたなんて、とても不思議な事でございます。
このように素晴らしい御令嬢ですもの。偶々遭遇されたというその時の様子を是非ともお聞かせ頂きたいと思っております」
「友人は既に領地へ戻ってしもうた。会うことなど出来ん」
「左様でございますか。畏まりました。もしかしたらそのようなこともあるかと思い馬車を仕立てて参りました。直ぐに御領地へ参りお話をお聞かせ頂きに参りたいと存じます」
ソフィーはさも嬉しそうにルイスに御者に声をかけるよう申し付けた。ルイスが一礼して部屋を出ようとすると男爵が慌てて声を張り上げた。
「待て! 勝手な事をしてわしの大切な友人に迷惑をかけるでない」
「ご教授有難うございます。ご迷惑をお掛けしないよう、ご不快な思いをなされないよう細心の注意を払い伺わせて頂きます。その上で男爵様のご不安を解消し大切なお嬢様の名誉をお守り致しましょう。
で、厳格な貴族の方のお名前はなんと仰られますでしょうか?」
「・・あのお方は高位貴族の方。見も知らぬ輩が訪ねても面会できるわけがない。
平民の分際で戯けた事を申すな。無礼討ちされるのがオチじゃ」
「高位貴族の方でございましたか。では伯爵様? 侯爵様でございますか? 公爵様であれば王家の御血筋を引かれた方でしょうか? 王家所縁のかたであれば・・」
「・・こっ侯爵家の方だ。非常に格式を重んじる方じゃ」
「左様でございますか。王家所縁の方でなく安堵致しました。侯爵家の方であればお名前をお聞かせ頂ければ恐らくお会い出来ると思われます。恥ずかしながら私は【ソラージュ不動産】社長であり子爵令嬢でもありますし母の生家は伯爵家でございます。母上から先触れを出して頂くよう致します。お気遣いありがとうございます」
「「はあ?」」
「で、厳格な貴族の方のお名前は?」
真昼の大通りは大勢の人で賑わい屋台や食堂から美味しそうな匂いが漂っている。せかせかと歩く人達は仕事の途中でその近くを楽しそうにお喋りしながら歩くのは学生かも知れない。
客を乗せた辻馬車が警笛を鳴らしながら勢いよく走り、荷馬車はゴロゴロと重い音を立ててゆっくりと走っている。
「あれ・・ハッタリ・・ではなさそうだな。この馬車はソフィーの家の持ち物ってことか?」
今ソフィーとルイスが乗っている馬車は紋章を隠した4頭立てのキャリッジ。この馬車が会社の前に横付けされているのを見たルイスは目は点になっていた。
「YESでありNOでもあるってとこ。貴族家の方が養子縁組して下さったから厳密に言えば貴族になるから答えはYES。
でも、この馬車はグレッグの家からの借り物だから答えはNO。
ちょっとした必要に迫られて14歳の時ある伯爵家の養子になったの。でも便宜上とか法律上とか・・そう言う理由なだけだから。元々食事にも事欠く平民育ちだし貴族の家でメイドをしていたのもほんと。ルイスと会う直前までメイドをしてた。
貴族でしょって言われても『へっ?』って感じだから、養子の件は秘密にしておいて欲しいの」
「知ってる奴はいるのか?」
「ハンナとグレッグだけ」
ソフィーとハンナは仕事が軌道に乗るまで家賃や生活費の為に一緒に住んでいた時期がある。資金繰りの話になった時にステラや遺産の話をしたのだが、その序でのように親に売られた話や毒親対策で養子になった事を話した。
「いつか詳しい話を教えてくれるか? 何か仲間はずれみたいでムカつく」
意外なルイスの反応に吃驚して顔を見ると窓から外を覗いているルイスの耳が赤くなっていた。
(何か、可愛いかも)
「うん、いつでもどんと来いだよ」
「男爵と話してる時何かソフィーの方がよっぽど貴族らしいって思ったんだよなー。あながち間違ってなかったってことか」
「あれは私が仕えてた大奥様の侍女のアリシアさんの真似。アリシア様はすごく厳しくて優しい方だった。・・因みにグレッグは大奥様の執事のマシューさんとアリシアさんの甥。
で、話の持って行き方は大奥様の真似なの。大奥様のとこにはいろんな方がしょっちゅういらっしゃってて、その時にこう言う人の時はこう話すみたいなのをほんの少しだけど教わったの」
『何らかの思惑があってやって来る方は理論武装しておられるから、微妙に話をずらし続けると面白いのよ』
『どうなるのですか?』
『そうね、殆どの方は困惑して・・主導権がこちらに移るわ。一番大切なのは穏やかな態度を崩さないこと』
「いい人達だったんだな」
「とても。大奥様にお会い出来てなかったらとっくの昔に死んでた。比喩じゃなくマジで」
「そうか。男爵の件は思ったより早く解決して拍子抜けだな。後はジュードをどうするか・・もう決めてるのか?」
(余は国王じゃ! とか言いそうな節回しになってきた。お芝居の見過ぎかしら・・)
「ああ、そうで御座いました。その日お泊まりになられていたご友人の方がおられたのでした。
その方にも是非お話を聞かせて頂きたいと思っておりました。
大切なお客様がご逗留になられているその日に限ってデイジー様がレディに相応しくない行いをなされたなんて、とても不思議な事でございます。
このように素晴らしい御令嬢ですもの。偶々遭遇されたというその時の様子を是非ともお聞かせ頂きたいと思っております」
「友人は既に領地へ戻ってしもうた。会うことなど出来ん」
「左様でございますか。畏まりました。もしかしたらそのようなこともあるかと思い馬車を仕立てて参りました。直ぐに御領地へ参りお話をお聞かせ頂きに参りたいと存じます」
ソフィーはさも嬉しそうにルイスに御者に声をかけるよう申し付けた。ルイスが一礼して部屋を出ようとすると男爵が慌てて声を張り上げた。
「待て! 勝手な事をしてわしの大切な友人に迷惑をかけるでない」
「ご教授有難うございます。ご迷惑をお掛けしないよう、ご不快な思いをなされないよう細心の注意を払い伺わせて頂きます。その上で男爵様のご不安を解消し大切なお嬢様の名誉をお守り致しましょう。
で、厳格な貴族の方のお名前はなんと仰られますでしょうか?」
「・・あのお方は高位貴族の方。見も知らぬ輩が訪ねても面会できるわけがない。
平民の分際で戯けた事を申すな。無礼討ちされるのがオチじゃ」
「高位貴族の方でございましたか。では伯爵様? 侯爵様でございますか? 公爵様であれば王家の御血筋を引かれた方でしょうか? 王家所縁のかたであれば・・」
「・・こっ侯爵家の方だ。非常に格式を重んじる方じゃ」
「左様でございますか。王家所縁の方でなく安堵致しました。侯爵家の方であればお名前をお聞かせ頂ければ恐らくお会い出来ると思われます。恥ずかしながら私は【ソラージュ不動産】社長であり子爵令嬢でもありますし母の生家は伯爵家でございます。母上から先触れを出して頂くよう致します。お気遣いありがとうございます」
「「はあ?」」
「で、厳格な貴族の方のお名前は?」
真昼の大通りは大勢の人で賑わい屋台や食堂から美味しそうな匂いが漂っている。せかせかと歩く人達は仕事の途中でその近くを楽しそうにお喋りしながら歩くのは学生かも知れない。
客を乗せた辻馬車が警笛を鳴らしながら勢いよく走り、荷馬車はゴロゴロと重い音を立ててゆっくりと走っている。
「あれ・・ハッタリ・・ではなさそうだな。この馬車はソフィーの家の持ち物ってことか?」
今ソフィーとルイスが乗っている馬車は紋章を隠した4頭立てのキャリッジ。この馬車が会社の前に横付けされているのを見たルイスは目は点になっていた。
「YESでありNOでもあるってとこ。貴族家の方が養子縁組して下さったから厳密に言えば貴族になるから答えはYES。
でも、この馬車はグレッグの家からの借り物だから答えはNO。
ちょっとした必要に迫られて14歳の時ある伯爵家の養子になったの。でも便宜上とか法律上とか・・そう言う理由なだけだから。元々食事にも事欠く平民育ちだし貴族の家でメイドをしていたのもほんと。ルイスと会う直前までメイドをしてた。
貴族でしょって言われても『へっ?』って感じだから、養子の件は秘密にしておいて欲しいの」
「知ってる奴はいるのか?」
「ハンナとグレッグだけ」
ソフィーとハンナは仕事が軌道に乗るまで家賃や生活費の為に一緒に住んでいた時期がある。資金繰りの話になった時にステラや遺産の話をしたのだが、その序でのように親に売られた話や毒親対策で養子になった事を話した。
「いつか詳しい話を教えてくれるか? 何か仲間はずれみたいでムカつく」
意外なルイスの反応に吃驚して顔を見ると窓から外を覗いているルイスの耳が赤くなっていた。
(何か、可愛いかも)
「うん、いつでもどんと来いだよ」
「男爵と話してる時何かソフィーの方がよっぽど貴族らしいって思ったんだよなー。あながち間違ってなかったってことか」
「あれは私が仕えてた大奥様の侍女のアリシアさんの真似。アリシア様はすごく厳しくて優しい方だった。・・因みにグレッグは大奥様の執事のマシューさんとアリシアさんの甥。
で、話の持って行き方は大奥様の真似なの。大奥様のとこにはいろんな方がしょっちゅういらっしゃってて、その時にこう言う人の時はこう話すみたいなのをほんの少しだけど教わったの」
『何らかの思惑があってやって来る方は理論武装しておられるから、微妙に話をずらし続けると面白いのよ』
『どうなるのですか?』
『そうね、殆どの方は困惑して・・主導権がこちらに移るわ。一番大切なのは穏やかな態度を崩さないこと』
「いい人達だったんだな」
「とても。大奥様にお会い出来てなかったらとっくの昔に死んでた。比喩じゃなくマジで」
「そうか。男爵の件は思ったより早く解決して拍子抜けだな。後はジュードをどうするか・・もう決めてるのか?」
12
お気に入りに追加
452
あなたにおすすめの小説
婚約者の妹が悪口を言いふらしていたために周りからは悪女扱いされ、しまいに婚約破棄されてしまいました。が、その先に幸せはありました。
四季
恋愛
王子エーデルハイムと婚約していたアイリス・メイリニアだが、彼の妹ネイルの策により悪女扱いされてしまって……。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?
R.K.
恋愛
結婚式まで数日という日──
それは、突然に起こった。
「婚約を破棄する」
急にそんなことを言われても困る。
そういった意味を込めて私は、
「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」
相手を試すようにそう言った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
この作品は登場人物の名前は出てきません。
短編の中の短編です。
私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった
高岩唯丑
恋愛
ナナは同級生のエリィをいびり倒していた。自分は貴族、エリィは平民。なのに魔法学園の成績はエリィの方が上。こんなの許せない。だからイジメてたら、婚約者のマージルに見つかって、ついでにマージルまで叩いたら、婚約破棄されて、国外追放されてしまう。
ナナは追放されたのち、自分の行いを改心したら、素敵な人と出会っちゃった?!
地獄の追放サバイバルかと思いきや毎日、甘々の生活?!
改心してよかった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる