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29.凄いの来ました

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「修道院長殿、この女の話は真ですかな?
もし本当ならば、私の教会の地下牢に飼えば良い。
少しばかり躾をしてやれば、直ぐに我らに協力する気になるでしょう」

「ミューリア司教殿の教会ですか・・いや、飼うならばわしの修道院で。
こやつを見つけたのはわしの手柄。必要な時いつでもお声をかけて頂ければ」



「随分と物騒な話をしておるようですね。サピエンチア修道院長、ミューリア司教」

「あっ、貴方はオリッシモ枢機卿。何故このような辺境に?」


 オリッシモ枢機卿が複数の供を連れて部屋に入ってきた。その中にはカリタス修道士もいて、修道院長を睨んでいる。
 そして一番後ろにいるのは、


(フード被ってるけどあれってライオネル王子よね)


「教会の名誉に関わる大事が起きていると連絡がきたのですよ。
今聞こえた話からすると、私が来たのは正解だったようですね」


 サピエンチア修道院長が太鼓腹を揺すりながら立ち上がった。

「オリッシモ枢機卿、我々は魔女を見つけ異端審問会を開く為にここに集まりましてございます」

「ほう、審問官はどこにおられるのかな?」

「そっそれは、到着が遅れておりまして」

「審問官がいないのに異端審問会を開くのですかな?」

 ミューリア司教も立ち上がり、
「この魔女はとても危険なのです。時間の猶予を与えるとどの様な被害が出るか想像もつきません」


「オリッシモ枢機卿様、少し私の意見を述べさせて頂いても宜しいでしょうか?」

「勿論だとも」

「私が魔女だとこの方々に言われている理由は、修道院長殿の治せなかった病を私が治したからでございます。

そこで、私の医学知識が魔女の使う妖なのか正しい医療行為なのか、専門家に判断していただくと言うのは如何でしょうか?」


「それは面白いですね。魔女裁判には不確かな所があり憂慮している案件です。
アンドリュー医師、如何ですかな?

彼はサレルノ医学校の教授なので、審判して頂くのに相応しいのでは?」


「さっサレルノはいけません! この女はサレルノの出身です」


「サピエンチア修道院長は、この女性がサレルノ医学校を卒業した医師だと認めておられるのですね」


「いや、ちっ違います。この女がそのように経歴を詐称しただけで」


「お久しぶりです。アンドリュー教授」

「直接会うのは二年ぶりだね。君からのコンシリウムはとても有益だから、また送ってくれるのを楽しみにしているよ」

「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」

「騙されるな! こやつは魔女だ。
オリッシモ枢機卿、こやつは正真正銘の魔女ですぞ。そこの医者も幻惑魔法にかかっておるのです」


 オリッシモ枢機卿が眉間に皺を寄せた。

「アンドリュー医師の言葉が信用できないと?」

「その通りです。其奴もこの女とグルやもしれませんぞ」


「聞き捨てなりませんね。アンドリュー医師は私の甥に当たります。彼を疑うのは私を疑う事と同じだと心得てください」

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