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27.護送されました
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牢の前には司教が連れてきた衛兵風の服装をした者が見張りに立っている。
(衛兵って言うのかしら、それとも・,助祭とか?)
夕食が運び込まれたが、見張りの者達は一切口を利かず目も合わせない。
(魔女の幻術が怖いって事よね)
牢には窓がなく、じっとりと蒸し暑い中でうつらうつらしているうちに夜明けを知らせる鳥の囀りが聞こえてきた。
アイヴィが入れられた檻は、司教達の乗る馬車から最も離れた最後尾を走っている。
馬車の近くにはカリタス修道士の姿が見えるが、彼もまた昨夜の見張り同様にアイヴィの方を一切見ない。
休憩の為に何度か馬車が止まったが、アイヴィに気をかける人は一人もおらず炎天下の檻の中で次第に意識が朦朧としてきた。
(このままだと異端審問所に着く前に動けなくなりそう)
檻の中で横たわり浅く息をしていると、檻を誰かが叩いた音がした。
薄く目を開けると皮袋が差し入れられていた。アイヴィは無理矢理体を起こして皮袋を掴み、少しずつエールを飲んだ。
その時皮袋のあった場所に小さな紙片があるのを見つけたアイヴィは、こっそり拾って手の中に握り込み暫く間を開けてから胸元に押し込んだ。
夕方日差しが和らいだ頃、漸く宿に着いたがアイヴィは檻に入れられたまま放置されている。
「お願いがあるんだけど。ねえ聞こえてる? もしもーし、一度だけでいいから話を聞いてくれないかしら」
アイヴィは近くにいる見張りに必死で声をかけた。
「お願いだから、ちょっとだけここから出して欲しいの。逃げたりしないって約束するから」
全く身動きをせず背中を向けたままの見張りに、
「ねえ、聞こえてるんでしょ? 返事して、本当に困ってるの」
堪忍袋の尾が切れたアイヴィは大声で怒鳴った。
「用足し場に行きたいの! 聞こえた? ここでしても良いの?」
ぎょっとした見張りが慌てて宿に駆け込んでいった。
アイヴィは縄で縛られてはいるものの、檻から出され宿屋の一室に閉じ込められた。
(良かった、今日はベッドで眠れるわ)
疲れ果てていたアイヴィは、差し入れられた夕食を食べた後夢も見ずに朝まで爆睡した。
朝日が登る頃目を覚ましたアイヴィは、漸く檻で見つけた紙片のことを思い出した。
部屋に誰もいない事を確認した後、胸元から紙片を取り出して窓の近くにより薄ぼんやりした光に当てて中身を確認した。
『必ず助ける。大人しくしてろ』
筆跡に見覚えはないが、カリタス修道士だろうか。
(檻に入ってる人に、大人しくしろとか言いそうなのってあの人くらいよね)
(衛兵って言うのかしら、それとも・,助祭とか?)
夕食が運び込まれたが、見張りの者達は一切口を利かず目も合わせない。
(魔女の幻術が怖いって事よね)
牢には窓がなく、じっとりと蒸し暑い中でうつらうつらしているうちに夜明けを知らせる鳥の囀りが聞こえてきた。
アイヴィが入れられた檻は、司教達の乗る馬車から最も離れた最後尾を走っている。
馬車の近くにはカリタス修道士の姿が見えるが、彼もまた昨夜の見張り同様にアイヴィの方を一切見ない。
休憩の為に何度か馬車が止まったが、アイヴィに気をかける人は一人もおらず炎天下の檻の中で次第に意識が朦朧としてきた。
(このままだと異端審問所に着く前に動けなくなりそう)
檻の中で横たわり浅く息をしていると、檻を誰かが叩いた音がした。
薄く目を開けると皮袋が差し入れられていた。アイヴィは無理矢理体を起こして皮袋を掴み、少しずつエールを飲んだ。
その時皮袋のあった場所に小さな紙片があるのを見つけたアイヴィは、こっそり拾って手の中に握り込み暫く間を開けてから胸元に押し込んだ。
夕方日差しが和らいだ頃、漸く宿に着いたがアイヴィは檻に入れられたまま放置されている。
「お願いがあるんだけど。ねえ聞こえてる? もしもーし、一度だけでいいから話を聞いてくれないかしら」
アイヴィは近くにいる見張りに必死で声をかけた。
「お願いだから、ちょっとだけここから出して欲しいの。逃げたりしないって約束するから」
全く身動きをせず背中を向けたままの見張りに、
「ねえ、聞こえてるんでしょ? 返事して、本当に困ってるの」
堪忍袋の尾が切れたアイヴィは大声で怒鳴った。
「用足し場に行きたいの! 聞こえた? ここでしても良いの?」
ぎょっとした見張りが慌てて宿に駆け込んでいった。
アイヴィは縄で縛られてはいるものの、檻から出され宿屋の一室に閉じ込められた。
(良かった、今日はベッドで眠れるわ)
疲れ果てていたアイヴィは、差し入れられた夕食を食べた後夢も見ずに朝まで爆睡した。
朝日が登る頃目を覚ましたアイヴィは、漸く檻で見つけた紙片のことを思い出した。
部屋に誰もいない事を確認した後、胸元から紙片を取り出して窓の近くにより薄ぼんやりした光に当てて中身を確認した。
『必ず助ける。大人しくしてろ』
筆跡に見覚えはないが、カリタス修道士だろうか。
(檻に入ってる人に、大人しくしろとか言いそうなのってあの人くらいよね)
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