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24.辺境騎士団

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「リチャード医師に会いに来ました。アイヴィと申します」

 砦の門番らしき兵士に声をかけた。

「ここにはどのようなご用件で?」

「リチャード医師から手紙を頂いたので助力に参りました」

「では、シスターですか?」

「いえ、シスターではありませんが薬剤師ギルドに登録してある薬剤師です。
傷病者の手当てができます」

「・・暫くここでお待ちください。聞いて来ます」


 ここはイデウラル国の国境の街、フェンセン。長年隣国との国境争いが続き、日々辺境騎士団が戦っている。
 今砦の中は静まりかえっているので、戦いは小休止中なのかもしれない。


 リチャードが遠くから走って来た。息を切らしたまま、
「アイヴィ、こんな遠くまで一体どうしたんだい?」

「手伝いが欲しいって散々愚痴を言ってたのはリチャードじゃなかった?」

「それは・・取り敢えず私の部屋に行こう」

 リチャードに連れられて砦の中に入って行った。土埃で汚れたテントの脇を抜け、広場のそばにある大きなテントの中に入った。

 無遠慮にジロジロ見る兵士達から逃れて、アイヴィはホッと息を吐いた。


 テントの中には沢山の簡易ベットが置かれており、半数以上に人が寝ている。

「これでも今は少ない方なんだ」

 アイヴィがベッドを見渡していると、黒衣のポケットに手を突っ込んだままのリチャードが話しかけて来た。

「もうすぐ大規模な戦いがはじまる。ここが一杯になるだけじゃ足りなくなるだろう。
アイヴィは、一番大変な時に来たのかもしれない」



 アイヴィは夜明け前に起き出し身繕いを済ませた後、リチャードの元を訪れる。

 ここに来たばかりの頃、医師の肩書が使えないアイヴィは下品なからかいや中傷に苦しんでいたが、今では兵士達からある程度の尊敬を勝ち取ることができた。



「キリー、今日の具合はどう?」

「相変わらずかな、でっかい肉を思いっきり食ったら明日から戦えそうな気がするよ」

「リチャードに伝えとくわ。運が良ければ希望が叶うかもしれないしね」

「ここの砦はいつだって食料不足だからなぁ」隣のベッドのショーン。

「ベルトを煮て食えって言われないだけマシかもな」昨日来たばかりのローラン。


 ローランの傷を調べながら、
「ローランはベルトを煮て食べた事あるの?」

「そいつはお嬢ちゃんには言えねえな」

「あら、この歳になってお嬢ちゃんだなんて。喜ぶべきなの? それとも悲しむべきかしら?」


 テントの中にくすくすと笑い声が広がっていった。



「アイヴィが来てから奴らの機嫌が良くて助かるよ。この砦は最近ないない尽くしだから、みんなの不満がね」

「国のために戦っているのに、物資が不足してるなんて信じられないわ」


「滅多な事を言わないほうがいい。どこで誰が聞いているかわからんからね」

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