【完結】売られた喧嘩は買わせていただきます。修道院長VS平民の戦い。騎士と王子に助けられました

との

文字の大きさ
上 下
22 / 37

22.飲むしかないか

しおりを挟む
「ぷっ、ブハッ」

 ジョセフが吹き出した。

「そこ笑うとこ?」

「だってよう、やりたいならいくらでもチャンスあったろ? アイヴィなんて防御ゆるゆるだから」

「ゆるゆるじゃないわ。まあ、気にしてないのは確かだけど」

「だろ? 毒薬持って来てんだろうし、店にもいっぱいある。
なら、何でやらねえ?」

「何にも言わないから分かんない。鼠をいたぶる猫?」

「お前が気にしてねえのに、いたぶれるかよ」

「だよね~」

 アイヴィはカウンターの上にかがみ込み、額をコツンとあてた。


「カリタス修道士がここに来たのが春で、今は夏真っ盛り。いっぺん真面目に話してみろよ」



 次の日の朝、マチルダの家からの帰り道に河原に寄り道した二人。

 河原に座り込んで持ってきた果実水をコップに注ぎ、
「ほら、これに入れて」

「・・」

「持ってるんでしょ?」

「死にたくなったのか?」

「まさか、でもそれを私が飲まないとお家に帰れないんでしょ。さっさと任務済ませて帰って」

「奴の準備した薬だからな、多分飲んだらイチコロだ」

「飲んだけど、吃驚して吐き出したから死にませんでしたって報告してもらう予定」

「・・無謀すぎんだろ。そこまで俺が邪魔か?」

「はっきり言って良いなら二人とも邪魔。私の平和な時間の邪魔してる。
本気じゃないくせにいい加減にして欲しいわ」

「本気ならいいのか?」

 鋭い目つきでカリタス修道士に見つめられたアイヴィは、
「・・ほっ本気で毒殺? それはちょっと困るかも」

 カリタス修道士がアイヴィの頬を両手で挟み、顔を寄せてきた。

 アイヴィは咄嗟にカリタス修道士を突き飛ばし立ち上がった。

「なっ、何してんのよ! 修道士の癖に・・馬鹿じゃないの?」

 真っ赤な顔で睨みつけるアイヴィを見ながら、カリタス修道士はゲラゲラと腹を抱えて笑いだした。

「おまっ、反応ガキすぎんだろ」

 カリタス修道士は笑いすぎて涙を拭きながら、
「くっそ腹痛え」

「いつまでも笑ってたらいいじゃん、ではさようなら」

 河原に寝っ転がって腹を抱えて笑い続けているカリタス修道士を無視して、アイヴィは一人で店に帰って行った。


 河原に一人残されたカリタス修道士は、河原に寝そべったまま笑うのをやめた。

(信じらんねえ。たったあれっぽっちのことで、あんなに動揺する女がまだいたんだ)


 幼い頃から騎士修道会に所属しているカリタス修道士がいつも目にしてきたのは、戦う仲間達と逃げ惑う人達ばかりだった。

 そこにはいるのは死傷者の山とそれに群がるハイエナ達だけ、女達は怯えて逃げ回るか媚を売る娼婦かの二つしか知らない。


(・・珍しいもんみたな)

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

処理中です...