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17.憩いの我が家のはずなのに

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「全く、ちっとも話を聞いてなかったのね? 薬には限界があるのよ。
ちゃんとお風呂に入って患部を清潔にして、お酒は控えるようにって言ったわよね」

「でもよう、男には付き合いってもんがあるだろ? アイヴィだってちっとは分かるだろ?」

「分かるけど分からない。だって健康が一番だもの。
お酒飲んでも昔みたいに本当に楽しいって言える?」


「・・ったく、アイヴィには敵わねえよ。
今日から一ヶ月だけ酒やめるからさ、その間に何とかしてくれ」

「全く無茶言わないで、私はただの薬剤師。魔法の杖を見つけてくれたら何とかしてあげるわ」


 すごすごと帰って行くフレディ。

「やっぱりアイヴィの啖呵は聞いてて気持ちいいねえ。わしが20歳若けりゃとっくに結婚申し込んでるんだがのう」

 長老のメイソンが、助手から薬を受け取りながら笑っていた。


「アイヴィ、男連れて帰って来たって聞いたぜ」

「ウォーリー、おかしな言い方やめてくれる? あの人は薬草の勉強に来たの。
今も裏でごりごり薬草擦ってるから」


 家についてから、カリタス修道士は寡黙な薬剤師に様変わりしてアイヴィに睨みつけられた。
 近くの宿屋に泊まり、毎日やって来てはジョセフの指導の元薬学の勉強をしている。


(父さんが受け入れるとは思わなかったわ。ややこしい事になっちゃった)


 アイヴィはジョセフに、魔女疑惑の事は話していない。あまり気にしていないからと言うのもあるし、心配させることもないし・・といたって呑気に考えている。


 家に帰って来て既に二週間が経っているが、王宮から使者が訪れることもなくカリタス修道士が毒薬を仕込んだ様子もない。



 そんないつもと変わらない毎日が続く中、店にライオネル王子が現れた。


 茹だるような暑さの中で、アイヴィは一人で店番をしながら薬草を刻んでいた。

 人の気配にふと顔をあげると、流れる汗を拭いながら嬉しそうな顔のライオネル王子と目があった。


 いそいそと店に入ってくる王子。

「漸く着いたよ。ここは長閑なところだね。
アイヴィが帰りたくなる気持ちが分かる気がした」

「おっ、お久しぶりです? このようなところに何故。まさかお一人ではないですよね」

「いや、一人で来た。村の入り口までは護衛がいたが、流石に一緒はまずいかなって思ったんで帰らせたんだ」


「急いで護衛を呼び戻しましょう。帰り道お一人とか、あり得ませんから」

 慌てて店を出ようとするアイヴィ。

「帰る時には伝令を送る事になってるから問題ない。暫く時間がかかるだろうしね」


「・・聞かない方がいい気がするんですが、どう言ったご用件でしょうか?」

「取り敢えず水を一杯もらえるかな? 
それと馬を店の表に残してるんで、世話をしてやりたいんだ」


「テディを呼んできます」

 アイヴィはあたふたと店の裏にある休憩室に入って行った。
 休憩室ではジョセフとカリタス修道士とテディの三人がのんびりお茶を飲みながらお喋りをしていた。


「アイヴィ、どうした?」

「テディ、店の表に馬がとまってるんだけど裏に連れてって世話してくれる?」

 テディが部屋を出て行った。


 アイヴィは不審げな顔の二人を無視して、
「まずい、王子殿下を店に立たせたまんまだわ」

「はあ?」

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