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14.まさかの養子縁組?

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 王宮医師団長のリアムの呼び出しで、アイヴィは団長室にやってきた。

 入り口を入ると大理石の床に高価なペルシア絨毯が敷かれ、木目の美しいマホガニーの書棚が壁一面に並んでいた。
 そこかしこに配置された観葉植物が、男性的な部屋に柔らかさを与えている。

 巨大な執務机にはペン立て以外何も置かれていなかった。


 勧められてアイヴィがソファに座ると、リアムがやってきて正面に座り前置きもなく話し始めた。

「公爵家と養子縁組して王子殿下と婚約しないか?」


「はい? あの、えっ?」

「そんなに吃驚するようなことかな?」

「はい、思いっきり吃驚しました。正直あり得ません」

「それだけ陛下はアイヴィに感謝していると言う事だよ。それにアイヴィの知識を手放したくないと思っておられる」


「それにしても公爵家に養子に入って、その上で王子殿下の婚約者ですか?」

「失礼な言い方だが、平民のままでは次期皇太子の婚約者にはなれないからね」


「・・両方お断りいたします」

「そう言うと思った。陛下は断られるのが分かっておられるから、私に説得しろと仰っておいでなんだ。
タイラーからも無茶な話だと呆れられた」


 リアムは眉間に皺を寄せ腕を組んだ。

「こう考えてはどうかな? 将来皇太子妃か王妃になり、この国の法律を変える」


「女性医師を認めさせるための人身御供という事ですか?」

「いや、そういう意味ではないよ」

「では、人柱? 申し訳ありませんが、どちらもお断りします」


「女性医師を認めさせたいと思わないかい?」

「思います。ですが、もし女性医師も有益だと考えるのならそのまま法律を変えればいいだけのことです。
囲い込みのような事をなさるのは間違っています」

「・・正論だね。だが、陛下は女性医師にも優秀な人材がいると言うより、アイヴィが優秀な女性医師だと考えられたんだ」

「私は王宮で着飾って画策するよりも、田舎でごりごり摺鉢をする方を選びます」


「王宮医師団に参加してくれないか?」

「私には向いていないと思います。人の病と関わるのなら、王宮で特定の方を相手にするより野辺の医師になりたいです」


「王宮医師は医師として失格かな?」

「いえ、ただ単に私の性格の問題です。王族や貴族の方を相手に上手くやっていく自信はありませんので」


「陛下から下命が下される可能性がある」

「王女殿下の控室に治療に必要な資料は纏めてありますので、直ぐに荷物を纏めて家に帰ります」

「そんな事をしても使者が追いかけていくだけだと思うが?」

「それではパラケルススのように、放浪の旅にでも出ます」

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