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9.太っちょ断罪できるかな?

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 謁見室には陛下と修道院長の二人がいた。


 堂々とした態度で玉座に座っている陛下は時折胃の辺りをさすっている。

 腕を組みアイヴィを仁王立ちで睨みつけている修道院長を無視したアイヴィは呑気に、

(胃痛? ペニーロイヤルのお茶を勧めてみようかしら)


「陛下、アイヴィ殿をお連れしました」

「先日の薬剤師はどうしたのだ?」

 陛下の問い掛けにリアムは、
「恐れながら申し上げます。王女殿下の治療はここにおられるアイヴィ殿が担当しておられます」


「何だと! こいつは女じゃないか、リアム殿は何を考えておるのだ。
王女殿下のご容態にもしものことがあればなんとする気だ!
もしや既に王女殿下は・・陛下、わしを排除するのが如何に愚かなことかお分かり頂けたですかな。
わしは急ぎ王女殿下の元に参りましょうぞ」


 歩き始めようとした修道院長に、
「それには及びません。アイヴィ殿の治療・投薬のお陰で王女殿下は回復の途中にあらせられます。先程も王女殿下はにっこりと微笑んでおられました」


「なんと、王女が笑ったと? アイヴィとやら、それはまことか?」

「はい、王女殿下は回復の兆しをみせられ、少しの時間ではありますがベッドに座ってスープを召し上がることができるようになられました」


「嘘だ! もしそれが本当ならわしを王女の元に連れて行け! わしが診断を下してやる。わしを部屋に近づけさせんのが、お前達が嘘をついているという何よりの証拠じゃろうが!」


「アイヴィ殿の治療に関しては私とタイラー医師の二人が入念にチェックさせていただいております。
但しそれは、アイヴィ殿を信頼していないのではなくアイヴィ殿の治療が正しい事を証明する為です。
修道院長様は我ら王宮医師団の言葉をお疑いか?」


「・・魔女だ。陛下、この者は魔女ですぞ。医師団は幻惑の魔法にかかっておるのだ。
早急にこの魔女を捕らえて火炙りにせねば!」


「サピエンチア修道院長様、私は魔女ではなくサレルノ医学校を卒業した医師です。この国では医師として認められませんでしたが、博士号を持っています」

「なっ、女の癖に医師だと? あり得ん、そんな大ボラを吹きおってわしが騙されると思うたか」


「サレルノは教会や修道院と関わりがない為、女性の入学を認めております。
まさかご存知ありませんの?」


「・・医師と認められていないならばお前なぞただの平民ではないか。
王族に治療を行うなど即刻縛り首にしてくれるわ。
衛兵、この女を捕まえろ!」


 アイヴィは騒ぎ立てる修道院長を無視して、
「陛下に申し上げます。王女殿下の治療に関しては王宮医師団の方にお任せしても問題ないと思います。
調薬の方法や分量などは全てお伝えしてありますので。

但し、修道院長の診察その他は王女殿下の回復の邪魔になりますので決してなさいませんよう」

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