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2.女なんて

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「はいこれ、いつも通り小さく切り刻んで煮出してね。だけどあんまり無茶しすぎたらいつかこれじゃ効かなくなるからね」

「そん時はどうなる?」
「秘密。不安だったら無茶しないの、結婚したてで旦那さんが歩けなくなったらフレヤが可哀想よ」
「アイヴィ、縁起でもないこと言うなよー」

「だったら、きちんと足を休めてマッサージするの」
「おっおう」


 アイヴィは、がっくりと肩を落として歩いて行く猟師ギャビンの後ろ姿を見つめた。


「アイヴィ、いつもの薬くれるかい?」

 アイヴィは声のした方に振り返り、
「はーい、メイソンさん咳の調子はどう?」
「薬変えてもらって随分と楽になってきたよ」

「良かった、お湯沸かして喉しっかり温めてる?」
「あれをしはじめてから夜よく眠れるようになったから、10歳は若返った気がするのう。
今度の祭りじゃみんなと一緒に一晩中でも踊りまくれそうじゃよ」

 顔中を皺だらけにして笑うメイソンはこの町の長老の一人で、短く切った真っ白い髪が特徴の町の人気者でもある。


 アイヴィの家は祖父の代から続くこの町唯一の薬屋。

 二年前医学の勉強を終えて帰ってきたアイヴィは、父のジョセフと共に薬剤師として働いている。



 昼過ぎにジョセフを訪ねて男がやって来た。その男は仕立ての良い乗馬服を着ており、身のこなしが貴族のように見受けられた。


 客の顔を見た時ジョセフはとても嬉しそうに笑い、
「なんだ、久しぶりじゃないか。こんな田舎町に何の用だ?」

「ちょっとお前に相談したいことがあるんだが」

 客はアイヴィをチラッと見た後、小声でジョセフに何か話し店の奥の休憩室に入っていった。それからゆうに二時間は経っているだろう。


(随分長く話し込んでるけど、いったい誰なんだろう)


 気になりながら薬の調合をしていると休憩室のドアが開き、ジョセフが顔を覗かせた。

「アイヴィ、ちょっと来てくれ」


 アイヴィは店を助手のテディに任せて休憩室に入って行った。


「こいつは俺の古い知り合いのタイラー・エバンズ。
娘のアイヴィだ。アイヴィ、大事な話があるからちょっとここに座ってくれ」

 アイヴィが腰掛けるとジョセフが、
「お前、ちょっこっと王宮に行って来い」

「はあ? 何で私が王宮に?」
「実はな王「おい、ジョセフ。内密の話だと言っただろうが!」」

 タイラーが腰を浮かせ、慌ててジョセフの言葉を遮った。

「話さなきゃ先に進めんだろ? 行くならアイヴィを行かせる。俺には無理だ」

「なっ、お前に出来ないわけがないだろうが。それにお嬢さんじゃあ」


 アイヴィは女では役に立たないと決めつけたタイラーを睨み、
「父さん、タイラーさん嫌がってらっしゃるし私は店に戻るから話は2人でして頂戴。
お邪魔しました」

 立ち上がりドアに向けて歩き出すアイヴィの後ろからジョセフの声が聞こえた。



「アイヴィ、王女様を助けられるのはお前しかいねえ」

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