上 下
16 / 21

16.焦るリリアーナ ざまぁ その四

しおりを挟む
「ルーカス様と初めてお会いしたのって何時だったのですか?」

「学園入る前よ! それから三年間ずっと仲良しだったんだからね」

「・・エマーソン様、そう言うのは幼馴染とは言いません。良く本をお読みになった方が宜しいかと。
さて、そろそろお終いに致しましょう」



「また私の事そうやって馬鹿にして! 絶対後悔する事になるんだから。
傷物令嬢になって、この先行き遅れのババアになる未来しかないくせに!」


「リリアーナについてはなんの心配もいらないよ。リリアーナが婚約破棄されると聞いて慌てて帰国したんだ」


 大勢の中で一人ルーカス達に立ち向かっていた時でさえ、沈着冷静な態度を崩さなかったリリアーナが声を張り上げた。

「がっ学園長、エマーソン嬢をお願い致します。学園の正門に騎士団の方に待機して頂いておりますので」

「なんと! リリアーナ様ありがとうございます。ジェシカ・エマーソンを拘束して連行しろ」



 学園の警備隊が暴れるジェシカを拘束して連行していった。会場内には、
 (漸く終わった)
と言うほっとした雰囲気が流れ、小声で会話する声も聞こえてきはじめた。


 エリオットとシエナは雛壇の上で、座り込んだままのルーカスに話しかけた。

「ルーカス、立って皆様に謝罪するんだ」

「もう終わりだ。僕なんて・・」

「終わりだからこそきちんとケジメをつけるんだ。男として人として」








 真っ赤に泣き腫らした目をしたルーカスはゆっくりと立ち上がり、

「リリアーナ・・リリアーナ様、そして会場の皆様。
この度は大変・・申し訳ありませんでした。・・大切な記念のパーティーを台無しにしてしまった事・・勘違いから思い上がって・・騒ぎを起こして・・もっ申し訳ありませんでした」

 深く頭を下げたルーカスと同じく、エリオットとシエナの二人が頭を下げていた。



「リリアーナ、最後に私からみんなに少し話しても良いかな?」

「・・王子殿下の“常識” を信じても宜しければ」


 リリアーナに笑いかけたリアムは正面に向き直り、

「長い時間付き合ってくれた事を感謝する。近年今回と似た様なケースが他国でも起きていて、問題視されている。
後続の者達の為に、二度とこの様な問題が起こらない様に己と周りの立場をもう一度考えてみて欲しい。
今回の詫びと言っては烏滸がましいが、近々夜会を開きたいと考えているので卒業パーティーの仕切り直しと思い参加して貰えたら嬉しい。
今夜、残り少ない時間になってしまったが楽しんでいってくれ」


 楽団が演奏をはじめたが、誰もが居心地悪そうに顔を見合わせていた。



 雛壇から降りてきたリアムが、
「リリアーナ、私とを踊ってくれるかな?」


 差し出されたリアムの右手を見つめるリリアーナの眉間には、淑女らしくない皺が寄っている。
「殿下、それはあまり宜しくないと・・」

「時間をかければかけるほど注目を集めてしまうけど良いのかい? 私はちっとも構わないんだけど」

 渋々リアムの右手に手を乗せたリリアーナは会場の中央へ。
 二人が踊り始め、マチルダ達が出て来ると少しずつダンスを始める人が増えてきた。





「えーっと、まさか?」

「私は聞いていた。散々リアムから愚痴られていたからね」

 ジュードの呟きにマチルダが顔を上げた。

「ジュード酷い、なんで教えてくれなかったの?」

「男同士の友情かな? マチルダの手紙にリリアーナが婚約破棄されそうだって書いてあっただろ?
それを伝えた途端、リアムは慌てて帰国の準備をはじめたんだ」


「リリアーナ、いつリアム王子殿下と知り合ったのかしら?
リアム王子殿下は確か九年以上留学しておられたんじゃなかった? その間殆ど帰国されてなかった気がするんだけど」


「かなり面白い話だから本人から聞くといい。当分笑える」


「もしかしてだけど、エリオット様より凄くない?」
「影を使ってたのはやっぱり引くよな」
「まさか、危ない人?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」 結婚して幸せになる……、結構なことである。 祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。 なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。 伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。 しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。 幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。 そして、私の悲劇はそれだけではなかった。 なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。 私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。 しかし、私にも一人だけ味方がいた。 彼は、不適な笑みを浮かべる。 私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。 私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

辺境伯令息の婚約者に任命されました

風見ゆうみ
恋愛
家が貧乏だからという理由で、男爵令嬢である私、クレア・レッドバーンズは婚約者であるムートー子爵の家に、子供の頃から居候させてもらっていた。私の婚約者であるガレッド様は、ある晩、一人の女性を連れ帰り、私との婚約を破棄し、自分は彼女と結婚するなどとふざけた事を言い出した。遊び呆けている彼の仕事を全てかわりにやっていたのは私なのにだ。 婚約破棄され、家を追い出されてしまった私の前に現れたのは、ジュード辺境伯家の次男のイーサンだった。 ガレッド様が連れ帰ってきた女性は彼の元婚約者だという事がわかり、私を気の毒に思ってくれた彼は、私を彼の家に招き入れてくれることになって……。 ※筆者が考えた異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。クズがいますので、ご注意下さい。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家
恋愛
マトリカリア伯爵家は代々アドニス王国軍の衛生兵団長を務める治癒魔法の名門です。 神々に祝福されているマトリカリア家では長女として胸元に十字の聖痕を持った娘が必ず生まれます。 その娘が使う強力な治癒魔法の力で衛生兵をまとめ上げ王国に重用されてきました。 そのため、家督はその長女が代々受け継ぎ、魔力容量の多い男性を婿として迎えています。 しかし、今代のマトリカリア伯爵令嬢フリージアは聖痕を持って生まれたにも関わらず治癒魔法を使えません。 それでも両親に愛されて幸せに暮らしていました。 衛生兵団長を務めていた母カトレアが急に亡くなるまでは。 フリージアの父マトリカリア伯爵は、治癒魔法に関してマトリカリア伯爵家に次ぐ名門のハイドランジア侯爵家の未亡人アザレアを後妻として迎えました。 アザレアには女の連れ子がいました。連れ子のガーベラは聖痕こそありませんが治癒魔法の素質があり、治癒魔法を使えないフリージアは次第に肩身の狭い思いをすることになりました。 アザレアもガーベラも治癒魔法を使えないフリージアを見下して、まるで使用人のように扱います。 そしてガーベラが王国軍の衛生兵団入団試験に合格し王宮に勤め始めたのをきっかけに、父のマトリカリア伯爵すらフリージアを疎ましく思い始め、アザレアに言われるがままガーベラに家督を継がせたいと考えるようになります。 治癒魔法こそ使えませんが、正式には未だにマトリカリア家の家督はフリージアにあるため、身の危険を感じたフリージアは家を出ることを決意しました。 しかし、本人すら知らないだけでフリージアにはマトリカリアの当主に相応しい力が眠っているのです。 ※最初は胸糞悪いと思いますが、ざまぁは早めに終わらせるのでお付き合いいただけると幸いです。

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

処理中です...