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9.ここにも変態

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「俺は11歳の時、自分が転生者だって気が付いたんだけど、お前は?」


 ハリエットとルーシーは図書館脇のベンチに腰掛けている。
 日当たりが悪いせいか、この辺りにはあまり人がやって来ない。


「・・入学式当日ですわ。後ろからルーシーさんにタックルされて倒れた拍子に思い出しましたの」


「ああ、あれは悪かった。時々ストーリーの強制力に引っ張られるんだよな。
なんて言うか、やらねば! みたいな気分になるっての?」


 足を組んで片腕をベンチの背もたれに掛けているルーシーは想像以上にリラックスして見えた。


「いつもと随分雰囲気が違われますのね。
話し方とか、座り方まで・・」


「転生者って気づく前はあの話し方が普通だったし、昔の? 妹の真似って感じかな。上手いだろ?」

「とても失礼な言い方なのですが、性別はどっちだと思えば良いのでしょうか?」


「あー、どっちだろ、あんまり気にしてないんだよね。
だからお前も気にしなくていいから。
俺はこれが結構気に入ってるし。
だってほら、知られざる女体の神秘ってや「ルーシーさん! 破廉恥すぎます」」


「俺が転生者じゃなかったらショックで落ち込んでたかもだけど、17歳の意識が覚醒したのが11歳だろ? あちこち大人になり始めた・・ショタじゃなかったけどそりゃ興奮するって。
鏡の前で研究しまくった」


 豪快に笑うルーシーを見て、

(ああ、ここにも変態が・・)


「しかも、同性だと思ってるから何でもありだし? 女同士ってさ結構大胆な暴露話とかすんだよね。
これが面白いのなんのって。

しかもジロジロ見ても変態扱いされないし?」


「ごめんなさい、これ以上お聞きするのは精神が持ちませんわ。
それに十分過ぎるほどの変態ですわ」


「その喋り方、やめたら? お前が無口なのってうっかりボロが出ないように気をつけてるからだろ?
慣れたら結構大丈夫になるもんだぜ?」


「・・まだ半年も経っていませんもの。
この国にない言葉を話して不審がられては困りますし、元々話すのは苦手ですから」


 ルーシーが意地悪そうにニヤッと笑い、
「ちっぱ○とか?」

 ハリエットの胸元をチラッと見たルーシーだった。



 腕を組んで胸を隠したハリエットは、
「で、今後はどうなさる予定ですの?」

「んー、考えてない。可愛い娘集めてハーレム作ったけど、百合には興味ねえしなぁ。
取り敢えず学園にいる間は、観察して楽しむかな?」

「その後は? 何も考えておられないのですか?」

「ハリエットのうちで雇ってもらうとかどう?
俺んち平民で、お前は家付きのお嬢様じゃん、ジェイムズもいい奴っぽいし。

そうなりゃ結婚しろだの言われず済みそう」

 ルーシーは能天気にケラケラと笑っている。

「興味はあるけど、やるならまだしもやられる側は経験したくないしな」



「ルーシーさん、もしかして童○だったとか?」

 余裕をかましていたルーシーが真っ赤になって固まった。

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