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00.あの人は今! 『レベッ化』って何?

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 教会を思う存分破壊し、聖王国が建て直し不可になるくらい資産や資金を消し炭にして、大満足のユースティティだったが⋯⋯キメラ化したレベッカ達の行き場、預け先がなくなってしまった。

【ヤバい、考えてなかった~。どうしたらいい? 時間を戻す? いや、でもせっかくのざまぁがもったいないし⋯⋯】

 やってやったぜ! と、得意満面だったユースティティがガックリと膝をついた。

【ホント、お前ら女神って後先考えねえよな~。うーん、そうだ! 聖王の別荘は残ってたよな。なら、そこに住まわせればいいか】

 大金を注ぎ込んで建設した聖王の別荘は、地下一階地上二階建ての豪奢な建屋。屋敷の裏には広い庭があり、池や果樹園まである。

【レベッ化した奴らの飼育場だな】

【聖王をお世話係に任命するモグッ! で、そこからでられないようにするモグッ】

【上層部も全員、『レベッ化』して放り込もう】

 ミュウ達の言う『レベッ化する』とは、数々の罪でミュウ達にざまぁされて、キメラになったレベッカと同じにすると言うミュウ達の作った造語。

 頭の中は人間のままで、アレコレ痛い思いやら怖い思いをし続けるキメラになる、と言う神や精霊にしかできない、恐ろしい『ざまぁ』



【ガーラントやアリエス達も全員、レベッ化しちゃおう】

【ロクサーナを倉庫に放り込んた司祭や、下働き達にざまぁのおかわり、はじまりはじまり~】

【アイツらはレベッ化だけじゃダメ! 絶対に許せないからね!】

 司祭や下働き達に教会が下した罰は財産没収と破門だけ。そんな手緩い内容で精霊達の怒りが収まるはずもなく⋯⋯。

【ロクサーナが『関わらなくなればそれで良いよ』って言うから、手が出せなかったけどさ。今ならやり放題!】

【ロクサーナ、優しすぎなんだよね~】

【いや、単に無関心ってやつじゃねえか?】

【人そのものにカケラも期待してないからな~、クズがいても『人は嫌い』で済ませちまう】



 と言うことで⋯⋯神&精霊基準で一番許せない奴ら⋯⋯幼いロクサーナを苦しめた司祭と下働き達は、レベッ化した後で、毎日ランダムに一人ずつ元に戻すことにしてみた。たった1日だけの安息の日だが、目の前には苦しみ悶えるキメラ化した仲間がいる。

【怪物になった仲間に追いかけられる恐怖と、明日は元に戻る絶望⋯⋯どう?どう? 私のざまぁが最高でしょ~!】

 この世で一番敵にしたくないのは女神かも。

【永遠の苦しみよりもエグい】



【世話から逃げるたびに聖王もキメラ化だな】

【教会の不正と腐敗の元凶は聖王だからな、それだけで終わらせるのは納得いかねえ。
世話と世話の合間は身体中に虫を這わせてやる。んで、アンデットと追いかけっこだな】

【ふふっ、国全体に向けて最後の神託を下ろしちゃお~。人間基準の罰じゃあ、神や精霊の怒りは収まらないって教えてやるの。んで、レベッ化飼育場を盛大に告知するのだ~!】

 聖女を貶めただけでなく、聖女だと詐称し女神の愛し子だと豪語したレベッカと、嘘だと知りながら、そばで黙認したサブリナとセシルへの罰が公になると、大勢の聖女や魔法士が崩れ落ちた教会の前で許しを乞いはじめた。

【もう遅い!】




 そう言えば、ポンコツ王子と愉快な仲間達なんて言うおバカがいたような⋯⋯。

 調べれば調べるほど出てくる罪で中々取り調べが終わらず、ミュウ達はジレジレしていた。

【罰が決まるまで待つの、退屈だったの~】

 人間界での裁きが終わる前に『ざまぁ』しても良かったが、どんな罪を犯していたのかを公にするのは必要だと、忍の一文字。

 国の財を私物化して高級品を買い漁り酒池肉林に浮かれ騒ぐ。ガーラント司教やアリエス達と結託して人為的スタンピードを利用して私服を肥やし、国を貢物にして帝国へ乗り込むつもりだった王侯貴族の悪行。

 はじまった時期や具体的な横領金額も含めて公表され、ようやく刑が確定した。

 王侯貴族達は最後まで『自分は悪くない』と騒いでいたが、王族は血族に至るまで極刑と決まった。その方法はスタンピードを起こしていたダンジョンの最下層への放置。

 勿論、武器や防具なしの手ぶらで連れて行かれ、入り口まで戻ってしまった時のために、入り口には結界の魔導具を設置する。

 官僚や貴族の大半が犯罪者となり罪の重さによって極刑・鉱山送り・新薬の治験・罰金刑など。

 脳筋とエセ眼鏡は聖女ロクサーナへの不敬罪で、平民落ちした後に鉱山送り。学園の事務長・寮監・窃盗事件を担当した騎士団員・王宮女官は罷免と罰金刑。



【緩すぎだよね、その程度の罰で許すとかありえないんだけど? ダンジョンで瞬殺されたら終わりじゃん】

 ミュウの掛け声で精霊達が旧ダンゼリアム王国に飛び立った。

 ポンコツ王子第二王子は汗の代わりに甘い花の蜜が身体から溢れ、虫に好かれる体質に変身。国王と第一王子は足が1センチずつしか動かなくなり、王妃とイライザはアンデットが集まる呪いがかかった。

 全員に自動回復のスキルをつけたのは誰の優しさ? 致命傷を受ける瞬間にだけ『絶対防御』が発動するので、死ねないのは恩寵に入る?

 その状態でダンジョンに放り込まれたのだから、どうなったのか⋯⋯あまりのグロさに具体的なイメージはやめておいた方が良さそう。



 鉱山送りになった脳筋とエセ眼鏡は、夜な夜な夢に出てくるレベッカの痴態で、目が覚めてしまうようになった。対象があのレベッカでは微妙だが、状況によっては『血気盛んな若者の見たい夢ベスト1』だったかもしれない。

 でもでも、彼らが寝ているのはいわゆるタコ部屋。

 窓のない部屋に大勢の鉱山労働者が押し込められた状態で、エロい呻き声やら元気な下半身が青年らしい興奮状態になるのは、非常にヤバい出来事が起きる危険がある。

 腹を立てる奴、男でもいいと言い出す奴⋯⋯全員に囲まれた脳筋とエセ眼鏡の夜は、派手な暴力と淫靡な音に包まれた。



 学園の事務長・寮監・窃盗事件を担当した騎士団員・王宮女官は⋯⋯。

 嘘をつくたびに足元から少しずつ凍りつき、悪意を持つたびに指先から火傷が広がっていく。暴言を吐くと口から胃まで土が詰まり、僅かな暴力行為でも身体中に切り傷ができて血が流れる。

【死ねないから大丈夫!】



 ロクサーナに不当な扱いをした学園の教師や生徒の額には、彼らの罪を表す文字が額に現れた。嘘・虐め・暴言・暴力・窃盗・肉等々。

 文字を隠すと、胃の腑が炎で焼かれ闇に包まれる。口から氷を吐き、目が光に焼かれた。


【まあ、こんなもんで許してやるか】

【ピッピは~、全員燃やしたかったな~。こんがり~って。でも、なんで『肉』なの?】

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