78 / 126
70.ミュウVSジルベルト 人間って焦ったいんだもん
しおりを挟む
【今回の件で、ジルベルトはロクサーナを駒として利用してきた、教会側の人間と判断したから】
精霊は忖度などしない。好きか嫌いか、興味があるかないか、中庸と言う概念とは程遠く、優しさよりも冷酷さの方が際立っている。
「違う! 私はそんなつもりでは⋯⋯ロクサーナを守りたいとずっと思ってきたんです! ロクサーナが独り立ちできるまで見守りたいと、本気で思ってきました」
【ロクサーナの為に昇進を断って? ロクサーナ以外の子達を担当しない代わりに、他の人の書類仕事も抱え込んで?
ロクサーナの為だなんて⋯⋯そう言うのを偽善者って言うんじゃなかったっけ】
「偽善者⋯⋯そうかもしれません。教会を離れる勇気もなく決断もできないでいた。でも、ロクサーナに会って守ると決めた気持ちは本物なんです。
私の危険予測が甘かったのは認めます。仰る通り、最大の注意を払うべきだった。でも、教会に阿ったわけじゃない。俺⋯⋯私はロクサーナの為に教会を利用することしか考えていませんでした」
神託の儀は結果が出ると同時に枢機卿へと送られる。多少の誤魔化しや改竄もできるが、流石に10歳で『聖女』と判明した少女を聖王国が放っておくはずがない。
教会も聖女も嫌だと言うロクサーナを連れて逃げても、すぐに見つかり捕まってしまうだろう。最悪のパターンは帝国に拉致される事。
(ロクサーナには逃げ道がない。昔の俺と同じように⋯⋯)
「逃げるなら、逃げ切れるくらいになってからの方が安全だと考えました。魔法についてとか自分の能力についてとか。後は、生活する為の一般常識とか。
教会内なら少しは司祭としての立場で守れますから、その間に準備をするのが最善だと思ったんです」
薬草の知識があると知って⋯⋯。
『庭師にガンツと言う男がいて、薬草に詳しいんだ。ちょっと変わってるけど見に行ってみるかい?』
聖王からブローチを下賜される前に⋯⋯。
『下賜されるのは非常に特別なブローチだから、所有者登録をする前にしっかりと鑑定してみるのもいいんじゃないかな』
ロクサーナの名前が漏れはじめたと知り⋯⋯。
『冒険者ギルドって知ってるかな? Cランク以上になれば自由に国を移動できるんだ。Sランクはあちこちの国が注目するからAランクでやめるのか正解だね。
しかも偽名で登録できる』
その後、薬師ギルドと魔導具士ギルドにそれぞれ別の名で登録するよう誘導した。
(これで、どれかひとつがバレても他の名が使える)
【⋯⋯知ってるけどね、僕達からしたらまどろっこすぎなんだよね】
「それは、そうかもですね⋯⋯」
本気でジルベルト司祭を敵認定しているわけではなかったが、『曖昧』『中庸』が理解できない精霊には、ジルベルトの行動がもどかしくて堪らない。
助けたいなら助ける、守りたいなら守る。それ以外の者には『無関心』か『排除』が、精霊の考え方だから。
【グラウコス⋯⋯奴が海の中から邪魔をしていたんだ】
「グラウコス? 確か、漁師から海神になった変わり種だったはず」
グラウコスは漁師だった頃に薬草を食べて海神になった。
青緑色の長い髪と長い髭、水色の腕と魚の尾を持った姿をしているが、傷ついた身体には貝殻や海藻、岩などが付着した醜い姿をしている。
「それがシーサーペントと関係が?」
【それはちょっとややこしい話だから、ロクサーナが起きてからでいいんじゃないかな。奴は陸には上がれないから、今日みたいに海にダイブしなけりゃいいだけ】
ロクサーナがセイレーンやスキュラ達をどうするつもりでいるのか⋯⋯はっきり決めるまでミュウは口出しするつもりも、ネタバラしするつもりもない。
【このままだと衰弱するばかりだから、目を覚まさせなくちゃ⋯⋯リラって言う竪琴を知ってるよね、あれならロクサーナの目を覚まさせられる。弦の数は7本でよろ~】
リラのフレームは中空の共鳴箱からなっている。そこから立ち上がる2本の腕は前方に優美な曲線を描き、横木によって上端で連結されている。根元にある横木が弦の振動を共鳴箱に伝える。
「それなら、すぐに取ってきます!」
心配して台所から顔を覗かせていたカジャおばさんの前を、ジルベルト司祭が走り抜けた。
「ありゃ、スープはできとるのに⋯⋯あんとうに急いでどこに行くんかねぇ?」
転移門はロクサーナの家の地下⋯⋯途中から半地下に変わったが⋯⋯に設置されている。
作りかけでまだ誰も住んでいない家の玄関を開けて、地下に降りる階段を飛び降りた。
(リラ⋯⋯二度と見たくなかったけど、俺の過去が役に立つなら少しは許せるかもな)
ジルベルト司祭は黒と銀が渦巻く転移門に飛び込んだ。
リラは執務室のチェストの一番奥にしまいこまれていた。
(弦は張り替えないとダメそうだが、本体はまだ使えるはず)
ローブを深く被り購買部までは隠蔽をかけて向い、なんとか弦を手に入れた。
そのまま執務室の転移門に飛び込んで島に戻ったジルベルト司祭は、弦を張り替えてからロクサーナがいるカジャおばさんの家に飛び込んだ。
「おや、帰ってきたんね。ほんなら、ちいとなんか食べんさい⋯⋯って言いよるうちに、おらんようになった。ま、あれだけ元気ならまだ大丈夫じゃろう」
呑気なカジャおばさんは『若い言うのはええねえ』と言いながら箒を手にした。
「ミュウ、持ってきました! 7本の弦のリラです」
【お、久しぶりに見たなぁ。後はジルベルトの腕次第。心が震えるくらいの音色を聴かせられたら、ロクサーナの目が覚めるはず】
「こ、心を!?」
【そう。例えばだけど⋯⋯セイレーンの歌声にでさえ惑わされなくなるくらいの音色だね】
「もう何年もブランクがあるので⋯⋯いや、やります。絶対に成功させてみせます」
椅子に座ったジルベルト司祭が大きく深呼吸してリラを構えた。足で小さくリズムをとりながら真剣な顔でリラを弾きはじめた。
音がずれたりリズムが乱れたりしながら弾き続けるうちに、少しずつ指が思い出してきたらしい。
透き通るような繊細な音色が心を揺さぶる切ないものに変化し、静かにゆるやかに流れていく。
魂が歓喜するとまでいわれたリラの音色が、ドワーフの村を超えてドラゴンの住む山や、深い海に深く染み入るように届いていく。
何時間引き続けているのか⋯⋯夕闇が迫り、普段は賑やかなドワーフ達が耳を澄ませて仕事終わりの酒を酌み交わしている。
森の動物達が争いをやめ、巣の中で子供を抱えて穏やかな眠りにつく頃⋯⋯ロクサーナが胸を膨らませるように大きく息をした。
【ロクサーナ、早く戻ってこないとスコーン全部食べちゃうぞぉぉ】
【ピッピは、あの焼いたお肉がいいの~】
【ジルベルト司祭がロクサーナの作りかけのお家探検したいって】
「⋯⋯め⋯⋯まだ⋯⋯な⋯⋯の」
ギュウン⋯⋯
「あ! やだ、弦が!」
張り替えたばかりの弦が切れて不快な音が響いた。
「⋯⋯ふふっ⋯⋯ジル⋯⋯ベルト司祭⋯⋯慌て⋯⋯」
口元にうっすらと笑みを浮かべたロクサーナの目がゆっくりと開いた。
「ロクサーナ、目が覚めたのね! 声は聞こえてる!? 何か話して、お願いよぉぉ」
「聞こえてる。ジルベルト司祭のオネエ言葉⋯⋯久しぶり」
「やだ! ゴホン、目が覚めてよかった。喉は乾いてないかな?」
「お」
「お?」
精霊は忖度などしない。好きか嫌いか、興味があるかないか、中庸と言う概念とは程遠く、優しさよりも冷酷さの方が際立っている。
「違う! 私はそんなつもりでは⋯⋯ロクサーナを守りたいとずっと思ってきたんです! ロクサーナが独り立ちできるまで見守りたいと、本気で思ってきました」
【ロクサーナの為に昇進を断って? ロクサーナ以外の子達を担当しない代わりに、他の人の書類仕事も抱え込んで?
ロクサーナの為だなんて⋯⋯そう言うのを偽善者って言うんじゃなかったっけ】
「偽善者⋯⋯そうかもしれません。教会を離れる勇気もなく決断もできないでいた。でも、ロクサーナに会って守ると決めた気持ちは本物なんです。
私の危険予測が甘かったのは認めます。仰る通り、最大の注意を払うべきだった。でも、教会に阿ったわけじゃない。俺⋯⋯私はロクサーナの為に教会を利用することしか考えていませんでした」
神託の儀は結果が出ると同時に枢機卿へと送られる。多少の誤魔化しや改竄もできるが、流石に10歳で『聖女』と判明した少女を聖王国が放っておくはずがない。
教会も聖女も嫌だと言うロクサーナを連れて逃げても、すぐに見つかり捕まってしまうだろう。最悪のパターンは帝国に拉致される事。
(ロクサーナには逃げ道がない。昔の俺と同じように⋯⋯)
「逃げるなら、逃げ切れるくらいになってからの方が安全だと考えました。魔法についてとか自分の能力についてとか。後は、生活する為の一般常識とか。
教会内なら少しは司祭としての立場で守れますから、その間に準備をするのが最善だと思ったんです」
薬草の知識があると知って⋯⋯。
『庭師にガンツと言う男がいて、薬草に詳しいんだ。ちょっと変わってるけど見に行ってみるかい?』
聖王からブローチを下賜される前に⋯⋯。
『下賜されるのは非常に特別なブローチだから、所有者登録をする前にしっかりと鑑定してみるのもいいんじゃないかな』
ロクサーナの名前が漏れはじめたと知り⋯⋯。
『冒険者ギルドって知ってるかな? Cランク以上になれば自由に国を移動できるんだ。Sランクはあちこちの国が注目するからAランクでやめるのか正解だね。
しかも偽名で登録できる』
その後、薬師ギルドと魔導具士ギルドにそれぞれ別の名で登録するよう誘導した。
(これで、どれかひとつがバレても他の名が使える)
【⋯⋯知ってるけどね、僕達からしたらまどろっこすぎなんだよね】
「それは、そうかもですね⋯⋯」
本気でジルベルト司祭を敵認定しているわけではなかったが、『曖昧』『中庸』が理解できない精霊には、ジルベルトの行動がもどかしくて堪らない。
助けたいなら助ける、守りたいなら守る。それ以外の者には『無関心』か『排除』が、精霊の考え方だから。
【グラウコス⋯⋯奴が海の中から邪魔をしていたんだ】
「グラウコス? 確か、漁師から海神になった変わり種だったはず」
グラウコスは漁師だった頃に薬草を食べて海神になった。
青緑色の長い髪と長い髭、水色の腕と魚の尾を持った姿をしているが、傷ついた身体には貝殻や海藻、岩などが付着した醜い姿をしている。
「それがシーサーペントと関係が?」
【それはちょっとややこしい話だから、ロクサーナが起きてからでいいんじゃないかな。奴は陸には上がれないから、今日みたいに海にダイブしなけりゃいいだけ】
ロクサーナがセイレーンやスキュラ達をどうするつもりでいるのか⋯⋯はっきり決めるまでミュウは口出しするつもりも、ネタバラしするつもりもない。
【このままだと衰弱するばかりだから、目を覚まさせなくちゃ⋯⋯リラって言う竪琴を知ってるよね、あれならロクサーナの目を覚まさせられる。弦の数は7本でよろ~】
リラのフレームは中空の共鳴箱からなっている。そこから立ち上がる2本の腕は前方に優美な曲線を描き、横木によって上端で連結されている。根元にある横木が弦の振動を共鳴箱に伝える。
「それなら、すぐに取ってきます!」
心配して台所から顔を覗かせていたカジャおばさんの前を、ジルベルト司祭が走り抜けた。
「ありゃ、スープはできとるのに⋯⋯あんとうに急いでどこに行くんかねぇ?」
転移門はロクサーナの家の地下⋯⋯途中から半地下に変わったが⋯⋯に設置されている。
作りかけでまだ誰も住んでいない家の玄関を開けて、地下に降りる階段を飛び降りた。
(リラ⋯⋯二度と見たくなかったけど、俺の過去が役に立つなら少しは許せるかもな)
ジルベルト司祭は黒と銀が渦巻く転移門に飛び込んだ。
リラは執務室のチェストの一番奥にしまいこまれていた。
(弦は張り替えないとダメそうだが、本体はまだ使えるはず)
ローブを深く被り購買部までは隠蔽をかけて向い、なんとか弦を手に入れた。
そのまま執務室の転移門に飛び込んで島に戻ったジルベルト司祭は、弦を張り替えてからロクサーナがいるカジャおばさんの家に飛び込んだ。
「おや、帰ってきたんね。ほんなら、ちいとなんか食べんさい⋯⋯って言いよるうちに、おらんようになった。ま、あれだけ元気ならまだ大丈夫じゃろう」
呑気なカジャおばさんは『若い言うのはええねえ』と言いながら箒を手にした。
「ミュウ、持ってきました! 7本の弦のリラです」
【お、久しぶりに見たなぁ。後はジルベルトの腕次第。心が震えるくらいの音色を聴かせられたら、ロクサーナの目が覚めるはず】
「こ、心を!?」
【そう。例えばだけど⋯⋯セイレーンの歌声にでさえ惑わされなくなるくらいの音色だね】
「もう何年もブランクがあるので⋯⋯いや、やります。絶対に成功させてみせます」
椅子に座ったジルベルト司祭が大きく深呼吸してリラを構えた。足で小さくリズムをとりながら真剣な顔でリラを弾きはじめた。
音がずれたりリズムが乱れたりしながら弾き続けるうちに、少しずつ指が思い出してきたらしい。
透き通るような繊細な音色が心を揺さぶる切ないものに変化し、静かにゆるやかに流れていく。
魂が歓喜するとまでいわれたリラの音色が、ドワーフの村を超えてドラゴンの住む山や、深い海に深く染み入るように届いていく。
何時間引き続けているのか⋯⋯夕闇が迫り、普段は賑やかなドワーフ達が耳を澄ませて仕事終わりの酒を酌み交わしている。
森の動物達が争いをやめ、巣の中で子供を抱えて穏やかな眠りにつく頃⋯⋯ロクサーナが胸を膨らませるように大きく息をした。
【ロクサーナ、早く戻ってこないとスコーン全部食べちゃうぞぉぉ】
【ピッピは、あの焼いたお肉がいいの~】
【ジルベルト司祭がロクサーナの作りかけのお家探検したいって】
「⋯⋯め⋯⋯まだ⋯⋯な⋯⋯の」
ギュウン⋯⋯
「あ! やだ、弦が!」
張り替えたばかりの弦が切れて不快な音が響いた。
「⋯⋯ふふっ⋯⋯ジル⋯⋯ベルト司祭⋯⋯慌て⋯⋯」
口元にうっすらと笑みを浮かべたロクサーナの目がゆっくりと開いた。
「ロクサーナ、目が覚めたのね! 声は聞こえてる!? 何か話して、お願いよぉぉ」
「聞こえてる。ジルベルト司祭のオネエ言葉⋯⋯久しぶり」
「やだ! ゴホン、目が覚めてよかった。喉は乾いてないかな?」
「お」
「お?」
31
お気に入りに追加
2,489
あなたにおすすめの小説
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
【完結】お前なんていらない。と言われましたので
高瀬船
恋愛
子爵令嬢であるアイーシャは、義母と義父、そして義妹によって子爵家で肩身の狭い毎日を送っていた。
辛い日々も、学園に入学するまで、婚約者のベルトルトと結婚するまで、と自分に言い聞かせていたある日。
義妹であるエリシャの部屋から楽しげに笑う自分の婚約者、ベルトルトの声が聞こえてきた。
【誤字報告を頂きありがとうございます!💦この場を借りてお礼申し上げます】
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる