【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

文字の大きさ
上 下
1 / 126

1.婚約破棄は聞き飽きた!

しおりを挟む
「ロクサーナ・バーラム!! 貴様のような心卑しき女など我が国には不要! 婚約を破棄すると同時に、国外退去を命じる!」

 ありゃ~、予想通りと言うか⋯⋯見飽きた珍喜劇がはじまっちゃった。定番の流れで行くと、この次は飛び出す衛兵?⋯⋯いや、冤罪のお知らせが先か。

 でも、その前に!!

「婚約とは何のことでしょうか?」

 そう、まずはそこからなんだよ! 大前提が違うの。いつの間に婚約した気になったのか⋯⋯わけわからん。

 話が長引くのは面倒だけど、国への『報連相』の為には一応話を聞いてあげないとね。後々五月蝿そうじゃん、レベッカとか、ポンコツとかが。

 はぁ、リーダーなんて面倒。



「はぁ? 巫山戯てるのか!? 俺と貴様の婚約破棄だ! そして俺はここにいる侯爵令嬢レベッカ・マックバーンと婚約する」

「⋯⋯私の事はさておき、ご婚約おめでとうございます。聖王国から参っておりますとして、心よりお礼⋯⋯ゴホン⋯⋯お祝い申し上げます」

 よっしゃぁ~!! レベッカ引き取り確定しましたあ! 感謝感激雨あられ⋯⋯やば! 踊りだしそう。これだけ大勢の前で言い切ったんだもん、『やっぱ、やーめた』はなしだからね!

 レベッカって、プライドばっか高くて面倒だったんだよ~。

 昔から、わけのわかんないこと言われて、苦労してたんだよね~。

『あんたなんて、認めてあげないから!』

 別に認めてくれなくてもいいよ? レベッカがどう思おうと興味ないし。

『今日からあたしの下僕にしたげるわ、感謝しなさい!』

 なるわけないじゃん。



 因みに、この国には4人で留学してきたの。留学もリーダーになったのも国の指示だったけど、何より面倒だったのはレベッカのお世話。後の2人は⋯⋯ノーコメントで。

 帰りは転移で帰っちゃおうかなぁ。

 他の子2人は⋯⋯うーん、放置プレイ?

 何日も馬車に揺られるより、パパッと移動した方が楽だけど、あの子達も予定があるかもだしね~。ほら、親切ってやつ⋯⋯仕返しとかじゃないよ? うん。

「⋯⋯ム⋯⋯ラム」

 こっそりお酒を試しちゃおうかな~。公国で手に入れたオレンジで、カクテルに挑戦するのも良いかも!

 うん、そうしよう! 荷物はないし⋯⋯先に帰るって声かけして、即出発だね。

「⋯⋯バーラム! 話を聞けえぇぇ!」

「はい? ああ、書類等につきましては契約内容の確認などもございますし、聖王国の教会本部とのやり取りが必要となるでしょう」

「まだ、話は終わっておらん! 貴様の罪⋯⋯」

「担当は恐らくルイス・ジルベルト司祭になるかと思われますので、この後すぐに連絡を入れておきます。どうぞご安心下さいませ」

 レベッカじゃあ手続きなんて分かんないだろうし、教会との通信も出来ないし⋯⋯二度と会わずに済むんだもん、そのくらい、海より広い心でご奉仕してあげるよ。

 面倒でも聖王国の顔を潰しちゃいけないから、できる限り優雅にカーテシーをしてっと⋯⋯さっさと退出しましょう。



「話は貴様の犯罪をつまびらかにしてからだ! 黙って俺の話を聞けぇぇ」

「よくある冤罪話でしたら遠慮いたします。折角の卒業パーティーで、聞き飽きた婚約破棄やら冤罪など、今時は『余興』としても楽しめませんもの。
それよりダンスと料理を楽しんで、学友との記念に残る時間を過ごした方が、数百倍素晴らしいパーティーになりますわ」



「そうやって、自分のやった事を誤魔化そうとしないで!」

 おっとぉ、レベッカ参戦。はぁ、黙って消えりゃいいのに⋯⋯全く、何がしたいのかねぇ。下手に突っ込むと自滅するよ? 確実に、徹底的に。いいの? やるよ? やっちゃうよ?

 まあ、アレを返してもらっといた方がいい気もするし⋯⋯いや、ただのおもちゃだから、ほっといても⋯⋯。



「バーラム、貴様が嫉妬からレベッカを虐めてきたのは周知の事実! まずは土下座して謝罪し、罪を償え!」

「⋯⋯ん? えーっと、何に嫉妬をしたのでしょうか。私がレベッカに嫉妬するネタが思いつきませんが?」

 まあ、見た目はレベッカの方が断然可愛くてスタイルも負けてますけど、そこは私自身気にしてないし。私の場合はまだまだ成長期だもん。

 それ以外では⋯⋯知力も魔力も使用可能属性の数も魔法の練度も⋯⋯断然勝ってる。

 レベッカって魔法士見習いになりたての子レベルの魔力しかなくて、魔法属性も水属性だけなんだよね。実家の侯爵家のゴリ押しで留学生になっただけだし。

「⋯⋯ふむ⋯⋯う~ん⋯⋯⋯⋯むむむ?⋯⋯よくよ~く考えてみましたが、やっぱり嫉妬するネタがカケラも思いつかないので、虐めと仰っておられるのは勘違いか冤罪のどちらかですね」

「なんだと!? バーラムはレベッカの美しさに嫉妬して、聖王国時代から陰湿な虐めを繰り返していたではないか! この国に来てからは俺の寵愛を一身に受けるレベッカに対して、前よりももっと酷い虐めを繰り返していたのは、ここにいる俺の側近や同級生達も知っている。
言い訳で誤魔化すなど見苦しい。魔法士としての資格を剥奪し、平民に落としてやるから覚悟しろ!!」

 あ~、ポンコツどころか頭を振ったらカラカラ音がしそう。こんなのが王子ってこの国大丈夫なの? 願わくば立太子しませんように。兄ちゃんがんばれ~、会った事ないけどね。

「その通りです! バーラムがレベッカを虐めていたと、私も知っています!」

 えーっと、この人は誰だ? 教室で見た事があるような、ないような⋯⋯多分、会った事あるんだろうな。

「俺も知ってるぜ。二度と魔法士を名乗れないように、ボコボコにしてやる!」

 無理無理⋯⋯いくらでっかくても私には勝てないから。痛いの嫌いだから殴らせないけど、希望があればいくらでも殴ってあげるよ?

 で、誰だっけ? う~ん、その汗臭そうな雰囲気とか脳筋そうな雰囲気とか⋯⋯記憶のどっかにあったり、なかったり⋯⋯⋯⋯う~ん。まぁ、いっか。モブだし。

 あ、私は魔法士じゃないからね~。

「皆様方のお話の中にいくつか間違いがありましたが⋯⋯2つだけ言わせていただきます。
まず、一つ目の間違い。私には、レベッカの美しさとやらに嫉妬する理由がありません。
だって、留学生にはサブリナ・セルバンとセシル・ファーラムがおります。女神のような類い稀なる美貌のサブリナと、天使とみまごうばかりの愛らしさのセシルを見慣れております。
もちろん、人には好みというものがございますから、どちらかより素晴らしいかは判断できませんけれど」

 レベッカ如き⋯⋯って意味、伝わったかな?

「ムキィ~! あたしの方が可愛いに決まってるじゃん!! でしょ、でしょ!?」

 あ、そこは目を逸らしちゃいけないとこ。ポンコツと側近候補も女心がわかってないよね~。嘘でも『君が一番』って言ってあげないと。



「二つ目の間違いですが⋯⋯魔法士かどうかはさておき、王子殿下が私の資格を剥奪することはできません」

 ポンコツだよね~、できるわけないじゃん。



「折角のおめでたい卒業パーティーと王子殿下の婚約発表でしたが、仕方ありません。きっちりとご説明ざまぁさせていただきます」

 地図を見ても見つけるのが大変なくらいちっこい王国の第二王子ごときが、聖王国で現在トップの実力の聖女、ロクサーナ・バーラムちゃんに喧嘩売って、勝てると思うなんて。わっはっは~、めっちゃウケるぅ。






 喧嘩上等、『期間限定聖女様』の怒りの鉄槌受けてみやがれ~! って、物理はしないよ? 一応女の子だしね。

しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」 「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」  公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。  理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。  王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!  頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。 ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2021/08/16  「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過 ※2021/01/30  完結 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

婚約破棄はこちらからお願いしたいのですが、創造スキルの何がいけないのでしょう?

ゆずこしょう
恋愛
「本日でメレナーデ・バイヤーとは婚約破棄し、オレリー・カシスとの婚約をこの場で発表する。」 カルーア国の建国祭最終日の夜会で大事な話があると集められた貴族たちを前にミル・カルーア王太子はメレアーデにむかって婚約破棄を言い渡した。

処理中です...