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23.これからどうする?
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「こんな短絡的な事をしでかしてどうするんだ!」
目をすがめた外務大臣が法務大臣を責め立てた。
殆どの大臣達が法務大臣を凝視し次に何を言うのか耳を澄ませている中、腕を組んで仁王立ちしたマクガバン侯爵がぎらつく目で空席になった玉座を見つめて口元を緩ませた。
「どうするつもりかと聞いているんだ? 答えられる者はいないのか?」
「そう言えばマクガバン侯爵家には以前王家から降嫁された姫君がおられましたな。何か提案がおありならお聞き致しますが?」
マクガバン侯爵の質問をはぐらかしたマッケナの返答に気を良くしたマクガバン侯爵が玉座の前まで進み出て両手を広げた派手なポーズで辺りを見回した。
「セドリック第二王子は人質として隣国へ行かれているので帰国は不可、殺人者である王弟殿下の子息は父親と連座し裁かれるべき。
となると、王位継承順が最も高いのは私のようだ。
このような事になるとは思ってもおりませんでしたが国王達の罪はあまりにも・・皆さんは今後についてどう思われますかな?」
たかが婚約破棄で騒ぎ立てるなど馬鹿らしいとマッケナ達が行っていたの断罪劇を冷めた目で見ていたマクガバン侯爵は途中で気付いた。
(ん? このままの話の流れからすると私に玉座が転がり込んでくる)
公明正大に見えるように発言し周りの無意識に自分の存在を少しずつアピールしていったマクガバン侯爵は、国王不在の状況を打破できる存在を見つけた大臣達の注目を集めて内心ほくそ笑んだ。
「このままでは政務が滞るだけでなく国の統制が取れぬ状況につけ込み他国からの侵略される危険もある。ひとまずは摂政を立てるべきだと愚考するが?」
「確かに・・」
「そうなれば」
「それが最善策ですな」
(ウォルデン侯爵家からの負債は国王に押し付けて、足りない分は踏み倒してやる。新政権になれば過去の負債は不問だと法律を変えるなり情に訴えるなり・・何とでもできる)
「それともウォルデン侯爵が軍事力にモノを言わせて王家を乗っ取るつもりでこの騒ぎを起こしたのですかな?
まさかその為の断罪劇だったのではあるまい?」
賛同する声が聞こえ気を良くしたマクガバン侯爵はマッケナを貶めて一気に話の流れを作ろうとした。
「我が侯爵家は王座に興味はありません。摂政として外務大臣が国を纏めて下さるのであればそれで構わないと思っております」
「ほう、(言質は取ったぞ)ではここで採決を取らせてもらおうか」
「お待ち下さい。先ずは王宮に蔓延している横領や不正などを明らかにしてなければなりません、その為には各大臣と公爵家及び侯爵家の方々の中から選出した者達で暫定政権を立ち上げるのが最善ではないかと愚考致します。
ウォルデン侯爵家にかなりの資料が集まっているようですのでそれらの精査に併せて全ての部署の見直しが必要かと。
暫定政権を立ち上げるまでは宰相殿が指示を出しメンバーの選出を早急に行えば大きな混乱にはなりますまい。宰相殿は如何お考えですか?」
「わっ、私ですか? ほ、法務大臣の仰る暫定政権に賛成致します」
玉座を手に入れたと確信していたマクガバン侯爵は唖然とした。
(法務大臣の奴、伯爵家の分際で邪魔をしやがって! 覚えてろ、俺が摂政になったら爵位を剥奪してやる)
「摂政が政務を行うも良し、宰相が担当するも良し・・採決をとられては如何ですかな? 状況を考えウォルデン侯爵家は中立の立場を取らせていただきましょう。
但し、新政権が樹立したのちに新しい法律を作り当家への返済が滞るような事になればそれなりの対処をさせて頂きますが」
「・・どう言う意味だ」
「さて、どのような方法を取るかはじっくりと考えてみたいと思っております。忠誠を尽くし続けた結果ここに立っておりますので・・今後、王国がどのように舵取りをしていくのかしっかりと判断させて頂かなければなりません」
「それは王国から離反すると言うことか!?」
「是非とも忠誠を誓える国であれば良いと心から思っております」
口元だけに笑みを浮かべたマッケナはマクガバン侯爵に向けて冷たい目を向けた。
「ウォルデン侯爵家は帝国と隣接してるし」
「侯爵家の発明品が手に入らなくなったら市場も金融も回らなくなる」
「軍事力が・・」
国家の税収の4割を稼ぎ出すウォルデン侯爵家が離反すれば国は直ぐに立ち行かなかなるだろう。ウォルデン侯爵家の発明した商品が出回らなくなれば流通は大打撃を受け主だった商会は他国へ流れるに違いない。
ウォルデン侯爵家の軍事力がなくなった王国など簡単に隣国から蹂躙されてしまうのは目に見えている。
「今まで独立すると言い出さなかったのが奇跡だったんだ」
「最後通牒を叩きつけられたってやつか」
「なんでウォルデン侯爵家に喧嘩売ったんだよ!」
(拙いぞ、ウォルデンに『お前のせいだ』と何度も言った覚えが)
(ルーナ嬢に結構嫌味言ったし仕事を押し付けたし)
(横領バレてるよな・・)
「混乱の中当家のみ高みの見物では申し訳ない。政務を行う方々や必要と思われる高位貴族の方にはウォルデン侯爵家から護衛と財務処理の出来る精鋭をお付けしましょう」
(そっ、それって監視じゃないか!)
(逃がさないって事か!?)
身に覚えのある者達はマッケナからの報復に青褪め、不正や横領を繰り返していた者達は自ら罪を認めるべきか悩み震え上がった。
「どれほどの人手が必要になるか分かって言ってるのか? そんな現実離れした事を言ってこの場を混乱させるのはやめてもらおう」
「公爵家9家侯爵が16家、関係する伯爵家がいくつかと各大臣。必要であれば補佐官にも。その程度なら余裕ですな。
政務に携わっておられる方や国の混乱を収めるために立ち上がってくださった方をお助けするくらい造作もない。
僭越ながら不正を働いてた可能性のある方々の監視などのお手伝いも致しましょう。かなりの資料が揃っておりますので直ぐにでも人を向かわせることができますが如何ですかな?」
謁見室は今日一番の緊張感に包まれ、誰も一言も言葉を発しなかった。
目をすがめた外務大臣が法務大臣を責め立てた。
殆どの大臣達が法務大臣を凝視し次に何を言うのか耳を澄ませている中、腕を組んで仁王立ちしたマクガバン侯爵がぎらつく目で空席になった玉座を見つめて口元を緩ませた。
「どうするつもりかと聞いているんだ? 答えられる者はいないのか?」
「そう言えばマクガバン侯爵家には以前王家から降嫁された姫君がおられましたな。何か提案がおありならお聞き致しますが?」
マクガバン侯爵の質問をはぐらかしたマッケナの返答に気を良くしたマクガバン侯爵が玉座の前まで進み出て両手を広げた派手なポーズで辺りを見回した。
「セドリック第二王子は人質として隣国へ行かれているので帰国は不可、殺人者である王弟殿下の子息は父親と連座し裁かれるべき。
となると、王位継承順が最も高いのは私のようだ。
このような事になるとは思ってもおりませんでしたが国王達の罪はあまりにも・・皆さんは今後についてどう思われますかな?」
たかが婚約破棄で騒ぎ立てるなど馬鹿らしいとマッケナ達が行っていたの断罪劇を冷めた目で見ていたマクガバン侯爵は途中で気付いた。
(ん? このままの話の流れからすると私に玉座が転がり込んでくる)
公明正大に見えるように発言し周りの無意識に自分の存在を少しずつアピールしていったマクガバン侯爵は、国王不在の状況を打破できる存在を見つけた大臣達の注目を集めて内心ほくそ笑んだ。
「このままでは政務が滞るだけでなく国の統制が取れぬ状況につけ込み他国からの侵略される危険もある。ひとまずは摂政を立てるべきだと愚考するが?」
「確かに・・」
「そうなれば」
「それが最善策ですな」
(ウォルデン侯爵家からの負債は国王に押し付けて、足りない分は踏み倒してやる。新政権になれば過去の負債は不問だと法律を変えるなり情に訴えるなり・・何とでもできる)
「それともウォルデン侯爵が軍事力にモノを言わせて王家を乗っ取るつもりでこの騒ぎを起こしたのですかな?
まさかその為の断罪劇だったのではあるまい?」
賛同する声が聞こえ気を良くしたマクガバン侯爵はマッケナを貶めて一気に話の流れを作ろうとした。
「我が侯爵家は王座に興味はありません。摂政として外務大臣が国を纏めて下さるのであればそれで構わないと思っております」
「ほう、(言質は取ったぞ)ではここで採決を取らせてもらおうか」
「お待ち下さい。先ずは王宮に蔓延している横領や不正などを明らかにしてなければなりません、その為には各大臣と公爵家及び侯爵家の方々の中から選出した者達で暫定政権を立ち上げるのが最善ではないかと愚考致します。
ウォルデン侯爵家にかなりの資料が集まっているようですのでそれらの精査に併せて全ての部署の見直しが必要かと。
暫定政権を立ち上げるまでは宰相殿が指示を出しメンバーの選出を早急に行えば大きな混乱にはなりますまい。宰相殿は如何お考えですか?」
「わっ、私ですか? ほ、法務大臣の仰る暫定政権に賛成致します」
玉座を手に入れたと確信していたマクガバン侯爵は唖然とした。
(法務大臣の奴、伯爵家の分際で邪魔をしやがって! 覚えてろ、俺が摂政になったら爵位を剥奪してやる)
「摂政が政務を行うも良し、宰相が担当するも良し・・採決をとられては如何ですかな? 状況を考えウォルデン侯爵家は中立の立場を取らせていただきましょう。
但し、新政権が樹立したのちに新しい法律を作り当家への返済が滞るような事になればそれなりの対処をさせて頂きますが」
「・・どう言う意味だ」
「さて、どのような方法を取るかはじっくりと考えてみたいと思っております。忠誠を尽くし続けた結果ここに立っておりますので・・今後、王国がどのように舵取りをしていくのかしっかりと判断させて頂かなければなりません」
「それは王国から離反すると言うことか!?」
「是非とも忠誠を誓える国であれば良いと心から思っております」
口元だけに笑みを浮かべたマッケナはマクガバン侯爵に向けて冷たい目を向けた。
「ウォルデン侯爵家は帝国と隣接してるし」
「侯爵家の発明品が手に入らなくなったら市場も金融も回らなくなる」
「軍事力が・・」
国家の税収の4割を稼ぎ出すウォルデン侯爵家が離反すれば国は直ぐに立ち行かなかなるだろう。ウォルデン侯爵家の発明した商品が出回らなくなれば流通は大打撃を受け主だった商会は他国へ流れるに違いない。
ウォルデン侯爵家の軍事力がなくなった王国など簡単に隣国から蹂躙されてしまうのは目に見えている。
「今まで独立すると言い出さなかったのが奇跡だったんだ」
「最後通牒を叩きつけられたってやつか」
「なんでウォルデン侯爵家に喧嘩売ったんだよ!」
(拙いぞ、ウォルデンに『お前のせいだ』と何度も言った覚えが)
(ルーナ嬢に結構嫌味言ったし仕事を押し付けたし)
(横領バレてるよな・・)
「混乱の中当家のみ高みの見物では申し訳ない。政務を行う方々や必要と思われる高位貴族の方にはウォルデン侯爵家から護衛と財務処理の出来る精鋭をお付けしましょう」
(そっ、それって監視じゃないか!)
(逃がさないって事か!?)
身に覚えのある者達はマッケナからの報復に青褪め、不正や横領を繰り返していた者達は自ら罪を認めるべきか悩み震え上がった。
「どれほどの人手が必要になるか分かって言ってるのか? そんな現実離れした事を言ってこの場を混乱させるのはやめてもらおう」
「公爵家9家侯爵が16家、関係する伯爵家がいくつかと各大臣。必要であれば補佐官にも。その程度なら余裕ですな。
政務に携わっておられる方や国の混乱を収めるために立ち上がってくださった方をお助けするくらい造作もない。
僭越ながら不正を働いてた可能性のある方々の監視などのお手伝いも致しましょう。かなりの資料が揃っておりますので直ぐにでも人を向かわせることができますが如何ですかな?」
謁見室は今日一番の緊張感に包まれ、誰も一言も言葉を発しなかった。
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