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(ⅡⅩⅠ)同棲!? そして陰謀
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朝、
「起きてくださーい赤城さん、おーい、起きて……あっ、起きた。」
カーテンの隙間から差し込む朝日が台所のスペースを照らす。そこには菜箸を持った明里が立っていた。
「ああ……明里か。お前何で菜箸持ってんの?」
「朝ご飯を作ってるんです! これから泊めてもらうんですから、最低限の家事は任せて下さい!」
俺は体を起こしてもう一度明里の方を見る。エプロン姿の明里が何とも言えない。
「あれ? 一泊だけっていう話じゃなかったっけ?」
「いいじゃないですか。」
「はあ、まあ別いいけど。」
「もうすぐできるのでリビングで座って待ってて下さい。」
俺は軽く礼を言ってリビングに向かった。
脱ぎ捨てられた服、ぐちゃぐちゃなベッド。明らかに家事できなさそうだが、大丈夫なのだろうか。
「できました! 一緒に食べましょう!」
「スクランブルエッグか、美味しそうじゃないか。」
「でしょでしょ! 食べてください!」
恐る恐る口に運び、味を確かめる。
「……!?」
「大丈夫ですか? 苦しそうですけど。」
「作ってもらっておいて悪いんだが、塩が強すぎる。」
思った通りだ。こいつは料理も下手なんだろう。なんで早起きして朝ご飯なんて作ろうと思ったんだよ。
「無理しないでいいですよ。私食べますから。」
「いや食べる。」
一気に口の中に放り込み、飲み込む。よく味わあなければギリギリ食べられる。せっかく作ってくれたんだし、完食するのは当然のことだ。
「あっ、ありがとうございます。」
「明里、なんで泣いてるんだよ。」
「えっ!? あれ、本当だ。涙が……」
「そろそろ出かけるぞ、理美との待ち合わせに遅れる。今日は就職みたいなもんだからな。」
「はい。」
俺たちは身支度を済ませ、家を出た。誰かと一緒に家を出るなんていつぶりだろうか。
駅前に着くと、既に理美が来ていた。なんてことは残念ながら無い。遅刻魔はいつだって自分の役割を全うするかように遅れてくる。
「あ、来た。」
こっちに向かって手を振りながら走ってくる人影が見える。羽織っている白衣がヒラヒラと風を受けているのが分かる。
「遅れてごめん。」
「想定内だからいいけど、何でお前制服なの? もう俺たち高校生じゃないんだけど。」
「人のファッションに口を出さないでくれる? 私この服装が好きなのよ。むしろ私服よ。」
学生服の上に白衣を羽織るこのスタイル。科学者のコスプレか何かと間違えられそうだ。
「神崎さん、似合ってますよ。」
「そうだな。早く行くぞ。」
「蓮、あなた棒読みが得意技? 棒読みオリンピックにでも出たら?」
なんだよ棒読みオリンピックって。金メダル取る人抑揚なさ過ぎだろ。初期微動かよ。
電車に揺られ、警察署の最寄り駅に到着した。
「赤城さん、もう一人で電車乗れそうですね。」
「恥ずかしいから言うな。俺は子供か。」
「未成年であることは間違いないわ。」
「お前もだぞ。」
警察署は駅のすぐ近くにある。少し歩くとPOLICEの看板が姿を現した。
「あっ、来た来た。話は聞いてるよ、着いて来てね。」
建物の中に入るなり、女性警察官に声を掛けられた。言われるがままについて行くと、案内されたのは更衣室。
「今から警察官の制服に着替えてもらうわ。これから警察として頑張って働いてね。」
彼女に男性用を一着、女性用を二着渡された。
「じゃあ、着替え終わったら出て来てね。待ってるから。」
なかなか親切にしてくれる。こんな時期に高校生が特別枠で配属されて迷惑に感じないのだろうか。
女子更衣室に入って行く二人を見送り、俺も男子更衣室に入って着替えた。
廊下に出るとさっきの警察官が壁にもたれ掛かりながら待っていた。
「あら、着替えは済んだのね。お二人さんはまだよ。」
「そうですか。それよりこの制服どうにかなりませんか?」
「どうにかって?」
制服の左胸にはマークの刺繍が施されていた。普通はそこに警察のマークが書かれているはずなんだが。
「この刺繍ですよ。脳って一文字、正直恥ずかしいです。」
「あら、あなたたち『脳・ぷろぶれむ』っていう名前で活動してたんでしょ? ならいいでしょ。特殊部隊なんだし。」
「よくないですよ。皆さんと統一して欲しいです。」
「でも、もう作っちゃったから無理だね。」
女子更衣室の扉が開き、明里と理美が出て来た。理美は警察制服の上からまた白衣を羽織っている。なにそれ流行ってるの?
「あら、二人とも似合ってるわね。それじゃこっちに来て。」
俺には似合ってるって言ってくれないのかよ。
エレベーターに乗り、三回に着いた。そのまま少し歩いたところにある部屋の前で止まった。
「この部屋を自由に使っていいわ。警視総監がそう仰ってたの。仕事は聞いてると思うけど、指名手配されている人を捕まえて連れてくるだけよ。」
「赤城さん、広さが丁度いいですよ。私気に入りました。」
「このコンピューター、超高スペックの型じゃない。ワクワクするわ。」
二人とも与えられた部屋に興奮している。俺から見ても丁度いい広さで落ち着けそうだ。
「あとこれ、指名手配犯のリストね。警視総監が自分で作ったそうよ。」
「え? 私もう作ってるんですけど。」
「あら、そうなの。でも一応渡しておくね。じゃあ頑張ってね。」
そう言って彼女は部屋を出て行った。部屋には数個のパイプ椅子と長机、そして見た目が凶暴なパソコンとその周辺機器があった。
「じゃあ早速仕事始めますか?」
「いやちょっと待ってくれ。理美、今もらったリストとお前が作ったリストを見せてくれ。」
「いいけど、何するの? 私のミスでも探して馬鹿にするの?」
「俺はそんなに酷い認識されてるのかよ。」
二つのリストを見比べてみる。ページ数はほぼ同じだが、理美の作った物の方が1ページ多い。あのクソ親父、何人か抜けてるんじゃないか?
「どっちも五十音順だから比べやすくてありがたい。」
「どうなの? 何かおかしい?」
順番に見ていくと赤城惣太郎が作ったリストは何人か抜けていた。
「怪しいな。」
「何がですか?」
「ミスで抜けているだけなら別にいいんだが、親父がリストを作ってきた上で抜けているのは単なるミスではない。」
「どういうこと?」
「あいつは俺たちが指名手配犯を狙って接触していたのを知って、俺たちを勧誘したんだ。だとしたら、俺たちが既にリストを作ってるのは当たり前だ。なのにわざわざリストを作ってきた。しかもミスが目立つ奴をな。」
「ということは、捕まえて欲しくない犯罪者を除外したリストを作ったということですね。」
「そういうことだ。しかも除外されている人は全員、麻薬密売人だ。」
「あなたの父親、赤城惣太郎は麻薬の売人と繋がってるってことね。」
「ああ。要するに、俺たちが指名手配犯をどんどん捕まえていくうちに、その密売人が狙われるかもしれないって思ったんだろ。だから先に『脳・ぷろぶれむ』を味方につけて上手いこと操作しようとしたんだ。」
「じゃあ惣太郎さんを捕まえに行きましょう!」
「いや証拠がないから無理だ。だからまず狙うは除外された人たちだ。捕まえて吐かせる。」
「じゃあ片っ端から居場所特定していくから待ってて。」
理美は高性能パソコンに手を伸ばし、鼻唄を歌いながら作業を始めた。機械が飛び級レベルでパワーアップしてご機嫌な様子である。
「起きてくださーい赤城さん、おーい、起きて……あっ、起きた。」
カーテンの隙間から差し込む朝日が台所のスペースを照らす。そこには菜箸を持った明里が立っていた。
「ああ……明里か。お前何で菜箸持ってんの?」
「朝ご飯を作ってるんです! これから泊めてもらうんですから、最低限の家事は任せて下さい!」
俺は体を起こしてもう一度明里の方を見る。エプロン姿の明里が何とも言えない。
「あれ? 一泊だけっていう話じゃなかったっけ?」
「いいじゃないですか。」
「はあ、まあ別いいけど。」
「もうすぐできるのでリビングで座って待ってて下さい。」
俺は軽く礼を言ってリビングに向かった。
脱ぎ捨てられた服、ぐちゃぐちゃなベッド。明らかに家事できなさそうだが、大丈夫なのだろうか。
「できました! 一緒に食べましょう!」
「スクランブルエッグか、美味しそうじゃないか。」
「でしょでしょ! 食べてください!」
恐る恐る口に運び、味を確かめる。
「……!?」
「大丈夫ですか? 苦しそうですけど。」
「作ってもらっておいて悪いんだが、塩が強すぎる。」
思った通りだ。こいつは料理も下手なんだろう。なんで早起きして朝ご飯なんて作ろうと思ったんだよ。
「無理しないでいいですよ。私食べますから。」
「いや食べる。」
一気に口の中に放り込み、飲み込む。よく味わあなければギリギリ食べられる。せっかく作ってくれたんだし、完食するのは当然のことだ。
「あっ、ありがとうございます。」
「明里、なんで泣いてるんだよ。」
「えっ!? あれ、本当だ。涙が……」
「そろそろ出かけるぞ、理美との待ち合わせに遅れる。今日は就職みたいなもんだからな。」
「はい。」
俺たちは身支度を済ませ、家を出た。誰かと一緒に家を出るなんていつぶりだろうか。
駅前に着くと、既に理美が来ていた。なんてことは残念ながら無い。遅刻魔はいつだって自分の役割を全うするかように遅れてくる。
「あ、来た。」
こっちに向かって手を振りながら走ってくる人影が見える。羽織っている白衣がヒラヒラと風を受けているのが分かる。
「遅れてごめん。」
「想定内だからいいけど、何でお前制服なの? もう俺たち高校生じゃないんだけど。」
「人のファッションに口を出さないでくれる? 私この服装が好きなのよ。むしろ私服よ。」
学生服の上に白衣を羽織るこのスタイル。科学者のコスプレか何かと間違えられそうだ。
「神崎さん、似合ってますよ。」
「そうだな。早く行くぞ。」
「蓮、あなた棒読みが得意技? 棒読みオリンピックにでも出たら?」
なんだよ棒読みオリンピックって。金メダル取る人抑揚なさ過ぎだろ。初期微動かよ。
電車に揺られ、警察署の最寄り駅に到着した。
「赤城さん、もう一人で電車乗れそうですね。」
「恥ずかしいから言うな。俺は子供か。」
「未成年であることは間違いないわ。」
「お前もだぞ。」
警察署は駅のすぐ近くにある。少し歩くとPOLICEの看板が姿を現した。
「あっ、来た来た。話は聞いてるよ、着いて来てね。」
建物の中に入るなり、女性警察官に声を掛けられた。言われるがままについて行くと、案内されたのは更衣室。
「今から警察官の制服に着替えてもらうわ。これから警察として頑張って働いてね。」
彼女に男性用を一着、女性用を二着渡された。
「じゃあ、着替え終わったら出て来てね。待ってるから。」
なかなか親切にしてくれる。こんな時期に高校生が特別枠で配属されて迷惑に感じないのだろうか。
女子更衣室に入って行く二人を見送り、俺も男子更衣室に入って着替えた。
廊下に出るとさっきの警察官が壁にもたれ掛かりながら待っていた。
「あら、着替えは済んだのね。お二人さんはまだよ。」
「そうですか。それよりこの制服どうにかなりませんか?」
「どうにかって?」
制服の左胸にはマークの刺繍が施されていた。普通はそこに警察のマークが書かれているはずなんだが。
「この刺繍ですよ。脳って一文字、正直恥ずかしいです。」
「あら、あなたたち『脳・ぷろぶれむ』っていう名前で活動してたんでしょ? ならいいでしょ。特殊部隊なんだし。」
「よくないですよ。皆さんと統一して欲しいです。」
「でも、もう作っちゃったから無理だね。」
女子更衣室の扉が開き、明里と理美が出て来た。理美は警察制服の上からまた白衣を羽織っている。なにそれ流行ってるの?
「あら、二人とも似合ってるわね。それじゃこっちに来て。」
俺には似合ってるって言ってくれないのかよ。
エレベーターに乗り、三回に着いた。そのまま少し歩いたところにある部屋の前で止まった。
「この部屋を自由に使っていいわ。警視総監がそう仰ってたの。仕事は聞いてると思うけど、指名手配されている人を捕まえて連れてくるだけよ。」
「赤城さん、広さが丁度いいですよ。私気に入りました。」
「このコンピューター、超高スペックの型じゃない。ワクワクするわ。」
二人とも与えられた部屋に興奮している。俺から見ても丁度いい広さで落ち着けそうだ。
「あとこれ、指名手配犯のリストね。警視総監が自分で作ったそうよ。」
「え? 私もう作ってるんですけど。」
「あら、そうなの。でも一応渡しておくね。じゃあ頑張ってね。」
そう言って彼女は部屋を出て行った。部屋には数個のパイプ椅子と長机、そして見た目が凶暴なパソコンとその周辺機器があった。
「じゃあ早速仕事始めますか?」
「いやちょっと待ってくれ。理美、今もらったリストとお前が作ったリストを見せてくれ。」
「いいけど、何するの? 私のミスでも探して馬鹿にするの?」
「俺はそんなに酷い認識されてるのかよ。」
二つのリストを見比べてみる。ページ数はほぼ同じだが、理美の作った物の方が1ページ多い。あのクソ親父、何人か抜けてるんじゃないか?
「どっちも五十音順だから比べやすくてありがたい。」
「どうなの? 何かおかしい?」
順番に見ていくと赤城惣太郎が作ったリストは何人か抜けていた。
「怪しいな。」
「何がですか?」
「ミスで抜けているだけなら別にいいんだが、親父がリストを作ってきた上で抜けているのは単なるミスではない。」
「どういうこと?」
「あいつは俺たちが指名手配犯を狙って接触していたのを知って、俺たちを勧誘したんだ。だとしたら、俺たちが既にリストを作ってるのは当たり前だ。なのにわざわざリストを作ってきた。しかもミスが目立つ奴をな。」
「ということは、捕まえて欲しくない犯罪者を除外したリストを作ったということですね。」
「そういうことだ。しかも除外されている人は全員、麻薬密売人だ。」
「あなたの父親、赤城惣太郎は麻薬の売人と繋がってるってことね。」
「ああ。要するに、俺たちが指名手配犯をどんどん捕まえていくうちに、その密売人が狙われるかもしれないって思ったんだろ。だから先に『脳・ぷろぶれむ』を味方につけて上手いこと操作しようとしたんだ。」
「じゃあ惣太郎さんを捕まえに行きましょう!」
「いや証拠がないから無理だ。だからまず狙うは除外された人たちだ。捕まえて吐かせる。」
「じゃあ片っ端から居場所特定していくから待ってて。」
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