上 下
294 / 310
第十二章《エデンの東》~東の果てで魔王と出会った者~

21 『信長とザビエル【運命の邂逅】』(1)

しおりを挟む
上のタイトル直後でいきなりですが……


織田信長とフランシスコ・ザビエルが会ったという史実は――

無い。


詳しく記すと、会ったことが立証できる文献は、現在のところ無いということである。


つまり、どういうことかというと……

信長とザビエルが“実際は出逢っていた”としてもである、

出逢っていたとしてもそれを証明できるものが無ければ、史実としては出逢っていない、ということになる。


しかし、直接証明する文献がなくても、推理することは可能である。

もちろん、その推理か荒唐無稽に過ぎれば、完全なフィクションになるし、

逆に的を得た推理であれば、完全なる証拠がなくとも、歴史的に可能性はゼロではない――

つまりそれは1つの学説となる。



前述したように――

織田信長は史実、宣教師やキリスト教と関わりが深い。

信者になったという文献は無いが、領内でのキリスト教の布教の自由化、教会や神学校の設立支援や補助、

そしてキリスト教から見れば邪教である仏教武装勢力の打倒と、まさに大友宗麟等のキリシタン大名さながらである。


その上で、本作で疑問を提起すると――


まず信長は信者でも無いのに、記録に残る限りでも34回以上面会している。つまり宣教師を気に入りすぎである。

しかし、何故か信者にはならない。

また、人生初めて会った宣教師フロイスとのやり取りも、あまりに自然すぎる。

まるで、宣教師やキリスト教にフロイスに会う前から、馴染んでいたようにさえみえる。


こうした事実から、織田信長はフロイス以前に宣教師と会っていたのではないか?

という疑問が浮かんでくる。


もちろん、織田信長とザビエルが出会ったことがなくとも、本作の『信長による福音書』計画説にはあまり影響は無い。

第一部で述べた通り、通説等の確認できる文献をキリスト教的な世界観という視点で見ることに気付けば――


イエスが万民の為に自ら、十字架の刑を望んだのと同じ動機で__


信長が万民の為に自ら、本能寺の変を望んだことがおのずから導き出せるからである。


それにフロイス以前に信長が宣教師に会っていたのが事実としても、ザビエル以降日本伝道に来た宣教師は何人もいるわけで、

ザビエルに会ったことには成らない。



しかしでは逆に、織田信長とザビエルが出会った可能性はゼロなのか?




実はそうとは良い切れないのである――!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

帝国夜襲艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。 今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

強いられる賭け~脇坂安治軍記~

恩地玖
歴史・時代
浅井家の配下である脇坂家は、永禄11年に勃発した観音寺合戦に、織田・浅井連合軍の一隊として参戦する。この戦を何とか生き延びた安治は、浅井家を見限り、織田方につくことを決めた。そんな折、羽柴秀吉が人を集めているという話を聞きつけ、早速、秀吉の元に向かい、秀吉から温かく迎えられる。 こうして、秀吉の家臣となった安治は、幾多の困難を乗り越えて、ついには淡路三万石の大名にまで出世する。 しかし、秀吉亡き後、石田三成と徳川家康の対立が決定的となった。秀吉からの恩に報い、石田方につくか、秀吉子飼いの武将が従った徳川方につくか、安治は決断を迫られることになる。

江戸時代改装計画 

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

鈍亀の軌跡

高鉢 健太
歴史・時代
日本の潜水艦の歴史を変えた軌跡をたどるお話。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...