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第八章『最後の晩餐と安土饗応』
28 『信長、光秀、今生の別れ』〈4〉
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「光秀助かったぞ、あの浅井長政が裏切った時はどうなるかと思ったが、お主が金ヶ崎で殿しんがりを努めてくれたお陰である」
「光秀、流石である、いつも朝廷を苦しめる比叡山をようやく成敗できた」
「光秀、ついに大大名朝倉氏を葬り去った。
さぁ、奴の髑髏の盃で乾杯であるぞ!」
「光秀お主の朝倉征伐での活躍は見事である。
よって朝倉の伝家の宝刀『倶利伽羅の剣』をお主に授ける」
「光秀、もうあんな将軍では、天下は収まらん!
将軍を追放するぞ!」
「なぬ、松永弾正がまたまた裏切ったと!?
――光秀、裏切り者を成敗せよ!」
「光秀、お主のお陰で助かった。
……おのれ本願寺の奴等め」
「光秀、ついに宿敵武田を滅ぼすことが出来たぞ!」
「なに!、光秀、なにが儂が苦労したかいがあっただと?
折檻してやる」
「光秀、余はついに――新世界の神となったであるぞ」
「光秀、なんじゃこの薄味は!?
……折檻してやる」
「光秀、今まで苦労をかけたであるな……」
「……光秀よ」「光秀、」「光秀」「光秀」「光秀」……
そうである、
いつも、いつも、いつも、光秀は……
「光秀よ、お主はいつも、余の側におったであるな」
「はい、儂は常に信長様と――」
「今までずっと……
余が楽しいときも、辛いときも、苦しき時も、常にお主は余の側にいた」
そう語る信長からは涙が滴り落ちる。
「光秀、今までよくこの尾張のおおうつけ信長についてきてくれたであるな……礼を言うであるぞ」
信長は、光秀の肩をほぐしながら、深々と頭を下げた。
その言葉に、そして滴り落ちる信長の熱き涙に……
光秀も、信長の気持ちを受けハラハラと涙を流す。
「信長様、今までではありませぬじゃ、
これからも、ずっとですじゃ」
「うむ、そうであったであるな。
……そのための儀式であった」
「最後に、儀式で必要な余の血は……」
信長は儀式台に戻り、恍惚の中で述べる。
「本能寺での余の切腹で流す血潮をもって、神に捧げるとしよう」
「――上様!」
小姓が、息を切らせながら階下から報告しに来た。
「――徳川家康様、ご到着!」
この日の夕食より、明智光秀は徳川家康を饗応し、
翌日の羽柴秀吉の援軍要請を受けた信長の命により、饗応役を予定通り解任され――
『愛宕百韻』、そして『本能寺の変』への準備に取りかかるのであった。
――次回、では『本能寺の変』が光秀の裏切りでは無いとしたら、何故『愛宕百韻』は、そもそも信長に必要であったのか?
『愛宕百韻』の全ての謎が解き明かされる時、
今までの『本能寺の変』の諸説は全て消え去るのみ!
次回『結局、愛宕百韻は必要だったのか?』
乞う、ご期待!
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「光秀、なんじゃこの薄味は!?
……折檻してやる」
「光秀、今まで苦労をかけたであるな……」
「……光秀よ」「光秀、」「光秀」「光秀」「光秀」……
そうである、
いつも、いつも、いつも、光秀は……
「光秀よ、お主はいつも、余の側におったであるな」
「はい、儂は常に信長様と――」
「今までずっと……
余が楽しいときも、辛いときも、苦しき時も、常にお主は余の側にいた」
そう語る信長からは涙が滴り落ちる。
「光秀、今までよくこの尾張のおおうつけ信長についてきてくれたであるな……礼を言うであるぞ」
信長は、光秀の肩をほぐしながら、深々と頭を下げた。
その言葉に、そして滴り落ちる信長の熱き涙に……
光秀も、信長の気持ちを受けハラハラと涙を流す。
「信長様、今までではありませぬじゃ、
これからも、ずっとですじゃ」
「うむ、そうであったであるな。
……そのための儀式であった」
「最後に、儀式で必要な余の血は……」
信長は儀式台に戻り、恍惚の中で述べる。
「本能寺での余の切腹で流す血潮をもって、神に捧げるとしよう」
「――上様!」
小姓が、息を切らせながら階下から報告しに来た。
「――徳川家康様、ご到着!」
この日の夕食より、明智光秀は徳川家康を饗応し、
翌日の羽柴秀吉の援軍要請を受けた信長の命により、饗応役を予定通り解任され――
『愛宕百韻』、そして『本能寺の変』への準備に取りかかるのであった。
――次回、では『本能寺の変』が光秀の裏切りでは無いとしたら、何故『愛宕百韻』は、そもそも信長に必要であったのか?
『愛宕百韻』の全ての謎が解き明かされる時、
今までの『本能寺の変』の諸説は全て消え去るのみ!
次回『結局、愛宕百韻は必要だったのか?』
乞う、ご期待!
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