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第四章『信長、そして新世界の神になる!』

12『神殿』

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○総見寺


総見寺はーー

安土山の山頂にある天主の南西に建立された。
持仏堂や戦死者を弔う小堂などを持った城は各地に見られるが、堂塔伽藍どうとうがらんを備えた寺院が建てられているのは、後にも先にも安土城だけである。


しかも安土城郭内にあるだけでなく、天主へあがる南西の入り口からの道である百々橋口道は、天主への通り道がなんと総見寺境内を横断している。


一方、安土城の正面にある大手門前の通りは、実際に拙者が登ってみたが、階段一段一段の幅や高さが大きく、とても人間用とは感じなかった。

実際この安土城の大手門前通りは、信長配下の武将か馬で早く上がれるためとか、何かの儀式に使うためのものと言われている。


ーーつまり、徒歩の者は全て、大手門前通りではなく、

百々橋口道を通ることになる。


そう、この入口から入った者が天主にたどり着くためには、必ず総見寺の境内の中を通り抜けなければならないのである。(『信長公記』、滋賀県発掘調査)


なぜ総見寺の詳細に記したかというと、当然なぜこのような建築様式に信長がしたのかーー理由があるからだ。

そう前述した、信長の野望ーー

つまり八百万の神を超える、すなわち天皇家を超えるという思想が解れば、自ずと理由は解る。


安土城城郭内に、他の城郭にはない、立派な堂塔伽藍を備えた寺院を建立したのはーー

正しく神々の社、つまり神々が集いし神殿にするためである。


そして、天主へあがるメインストリートである百々橋口道は、その神々の神殿の域内を横切っているので、天主へあがる者総てがーー

この総見寺という神殿を拝むことになる。

しかもその寺院建造物を抜けた視界の先には、絢爛豪華な安土城天主が現れることになる。


この総見寺という寺院建造物、神々の神殿を信長は、

日本にある総ての宗教・宗派の総本山にするつもりであった。

あったというのは、信長が天下統一する前に倒されたからだが……

この発想は素晴らしい!


これの何が素晴らしいといったら、どの神を信じていても参拝できることで、総見寺の下においてーー

神々の平等を達成していた事だ。


そう、信長が総見寺を建てたのは、八百万の神を超えるためもあるが、

総ての神々を集めることで、信長神のもとにおいてーー



ーー《宗教の平等》を達成するためでもあったのである。


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