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第1章
① あなたにとって異世界転生ってなんですか?
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『今も尚書籍、そしてアニメ界隈では異世界転生が大きくブームを収めています。こちらの販売書籍ランキングをご覧下さい…1位から見ていきますとですね…』
「今も尚流行ってる…か」
六畳一間の小さな1Kの一室
俺は横に寝転びながら和風醤油味のスナック菓子を頬張り、虚無的にテレビに映る映像を眺めていた。
数年前
爆発的に流行り始めた異世界転生系の作品
流行ったきっかけはもっと昔からあるのかもしれないが…俺はこの異世界転生っていうものが認められ始めたのは、社会がそれを理想としてからだと思うんだよね。
理想の恋愛をモチーフにしたラブコメだってきらびやかな青春を描く学園モノだってそう…
こういう世界があったらいいな…とか
こういうお話みんな好きだろうな、現実であっても素敵だろうな…って感じで
人間が作り出す作品には、理想だったり思いが詰められてると思う。
だから、この異世界転生っていうお話も
今の現代社会におけるマストであって、皆の願いなんじゃないかな…
…まぁ、この考えは綺麗事過ぎるのかもしれないけどね。
でも、異世界転生って…学園モノだったりラブコメだったり、現実とかけ離れてるからこそ素敵って言うか、夢を見るのもたしかに面白いと思う。
だから俺は異世界転生が好きだ。
好きなんだ…異世界転生が
…だから…………
コンコンッ
少し離れた扉からノックの音が聞こえる。
乱暴さはなく、優しく問いかけるようなそのノックはあいつしかしない。
「はーい、空いてますよー」
俺はいつもの通り
気だるげの交じった声で応対する。
ガチャ…ッ
「失礼します。そろそろ最後の面談の時間なのですが、よろしいですか?」
テレビの光だけが照らしていた六畳の部屋に、他の光が入り込んでくる。
それと同時に、冷たい無機質な声が部屋に響く。
俺は身体を声のする方に向け
視線をテレビから移した。
「あれ、もうそんな時間だっけ…」
「そうですよ、まぁ…この部屋には時計がないので仕方ないかもしれませんが」
彼女は部屋に入りながら部屋の電気を付け
姿を完全に表わす。
白い白衣を着たアンドロイドのような女性
ここに来て1度も笑ったところを見た事がないが…それはそれで彼女魅力なんじゃねぇかなって、俺は思う。
…って、そんな魅力を見つけても俺のこれからには関係ないわけで…今更なんだって話なんだけどね。
俺はしまりのない身体を起こし、あぐらをかいた。
「あ、そういうことか、時計ないから感覚バグってんのか」
「仕方ないです。週に一回の面談以外で日にちを把握する方法は無いですし、そもそもの話になってしまいますが、わざとそうしてるところあるので、そうじゃないと困ります」
「はーん、そうだったんだ…てか週に一回だったのも初耳だし」
「言って無いことですし当たり前です。あと何日で見つけなきゃとか、あと何時間で考えればいいかーとか、時間制限が明確にあるとサボり癖のある人は正確な答えが見つからない人がいるからこうなってるわけで、他の部屋ではちゃんと時計ありますよ」
「…ふーん。俺みたいに?」
「ご理解が早いようで」
「だよねー、まっ、サボり癖とか諦め癖とか…何もかも逃げてきた人に対しての対応は明確に有るのは当たり前か」
「はぁ…またそうやって自分のこと卑下して…ここでの時間は無駄だったんですかね。とりあえず部屋移りますよ、時間は有限ですので」
「はいはーい、ごめんなさーい」
俺は彼女に言われるがまま立ち上がり、部屋を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…相変わらず殺風景だな」
「余計な情報は不要です。前もこの話したでしょ?」
「最後くらいなんか面白みのある場所で話すとかあるのかなって期待くらいするじゃんー」
「なら場所移しますか?」
「いや、動くのだるいしいつものここで」
白い清潔感のある部屋にぽつんとあるふたつの椅子
対面するその椅子は、就職の面接に近いような感じもするが…
俺は就職活動をしてこなかった身だし、なんて表現したらいいかわかんないってのが事実
とりあえず、ここは白い部屋に椅子がふたつ置いてあって、そこでお互い向き会うことができるっていう…ただそれだけの部屋だ。教養のない俺にはそうとしか言えない。
俺は置いてある椅子にどしりと座り、足を組む。
それを見た彼女は大きくため息をついた後、対面の椅子に浅く座った。
「…はぁ、じゃ…本題に入りますけど、大丈夫ですか?」
「おう、大丈夫だ」
「…じゃぁ、早速…」
中原 隼人さん
あなたにとって異世界転生とはなんですか?
何回も何十回も聞かれたこと質問
時計の音も外の鳥の音も
彼女の呼吸の音すら聞こえない無機質な部屋。
そこで繰り返した同じ質問。
それに対して、回数を重ねるうちに少しづつ削れて丸くなったひとつの答えが、俺の口から無意識にこぼれた。
「…救済です」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここはとある別の世界
どこかの分岐点から、誰もが知る今の状態とは全く違う
いい意味でも悪い意味でも、大きく変わってしまった…そんな、日本という名の異世界。
一期一会
一樹之陰
運命の人
「このことは決まっていたのか」と思われほど
良い方にも悪い方にも綺麗に転がるこの世界…
そんな悪い方に転ぶ運命だった人を助ける唯一の光
それをこの世界では
「異世界転生」
とよぶ。
「今も尚流行ってる…か」
六畳一間の小さな1Kの一室
俺は横に寝転びながら和風醤油味のスナック菓子を頬張り、虚無的にテレビに映る映像を眺めていた。
数年前
爆発的に流行り始めた異世界転生系の作品
流行ったきっかけはもっと昔からあるのかもしれないが…俺はこの異世界転生っていうものが認められ始めたのは、社会がそれを理想としてからだと思うんだよね。
理想の恋愛をモチーフにしたラブコメだってきらびやかな青春を描く学園モノだってそう…
こういう世界があったらいいな…とか
こういうお話みんな好きだろうな、現実であっても素敵だろうな…って感じで
人間が作り出す作品には、理想だったり思いが詰められてると思う。
だから、この異世界転生っていうお話も
今の現代社会におけるマストであって、皆の願いなんじゃないかな…
…まぁ、この考えは綺麗事過ぎるのかもしれないけどね。
でも、異世界転生って…学園モノだったりラブコメだったり、現実とかけ離れてるからこそ素敵って言うか、夢を見るのもたしかに面白いと思う。
だから俺は異世界転生が好きだ。
好きなんだ…異世界転生が
…だから…………
コンコンッ
少し離れた扉からノックの音が聞こえる。
乱暴さはなく、優しく問いかけるようなそのノックはあいつしかしない。
「はーい、空いてますよー」
俺はいつもの通り
気だるげの交じった声で応対する。
ガチャ…ッ
「失礼します。そろそろ最後の面談の時間なのですが、よろしいですか?」
テレビの光だけが照らしていた六畳の部屋に、他の光が入り込んでくる。
それと同時に、冷たい無機質な声が部屋に響く。
俺は身体を声のする方に向け
視線をテレビから移した。
「あれ、もうそんな時間だっけ…」
「そうですよ、まぁ…この部屋には時計がないので仕方ないかもしれませんが」
彼女は部屋に入りながら部屋の電気を付け
姿を完全に表わす。
白い白衣を着たアンドロイドのような女性
ここに来て1度も笑ったところを見た事がないが…それはそれで彼女魅力なんじゃねぇかなって、俺は思う。
…って、そんな魅力を見つけても俺のこれからには関係ないわけで…今更なんだって話なんだけどね。
俺はしまりのない身体を起こし、あぐらをかいた。
「あ、そういうことか、時計ないから感覚バグってんのか」
「仕方ないです。週に一回の面談以外で日にちを把握する方法は無いですし、そもそもの話になってしまいますが、わざとそうしてるところあるので、そうじゃないと困ります」
「はーん、そうだったんだ…てか週に一回だったのも初耳だし」
「言って無いことですし当たり前です。あと何日で見つけなきゃとか、あと何時間で考えればいいかーとか、時間制限が明確にあるとサボり癖のある人は正確な答えが見つからない人がいるからこうなってるわけで、他の部屋ではちゃんと時計ありますよ」
「…ふーん。俺みたいに?」
「ご理解が早いようで」
「だよねー、まっ、サボり癖とか諦め癖とか…何もかも逃げてきた人に対しての対応は明確に有るのは当たり前か」
「はぁ…またそうやって自分のこと卑下して…ここでの時間は無駄だったんですかね。とりあえず部屋移りますよ、時間は有限ですので」
「はいはーい、ごめんなさーい」
俺は彼女に言われるがまま立ち上がり、部屋を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…相変わらず殺風景だな」
「余計な情報は不要です。前もこの話したでしょ?」
「最後くらいなんか面白みのある場所で話すとかあるのかなって期待くらいするじゃんー」
「なら場所移しますか?」
「いや、動くのだるいしいつものここで」
白い清潔感のある部屋にぽつんとあるふたつの椅子
対面するその椅子は、就職の面接に近いような感じもするが…
俺は就職活動をしてこなかった身だし、なんて表現したらいいかわかんないってのが事実
とりあえず、ここは白い部屋に椅子がふたつ置いてあって、そこでお互い向き会うことができるっていう…ただそれだけの部屋だ。教養のない俺にはそうとしか言えない。
俺は置いてある椅子にどしりと座り、足を組む。
それを見た彼女は大きくため息をついた後、対面の椅子に浅く座った。
「…はぁ、じゃ…本題に入りますけど、大丈夫ですか?」
「おう、大丈夫だ」
「…じゃぁ、早速…」
中原 隼人さん
あなたにとって異世界転生とはなんですか?
何回も何十回も聞かれたこと質問
時計の音も外の鳥の音も
彼女の呼吸の音すら聞こえない無機質な部屋。
そこで繰り返した同じ質問。
それに対して、回数を重ねるうちに少しづつ削れて丸くなったひとつの答えが、俺の口から無意識にこぼれた。
「…救済です」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここはとある別の世界
どこかの分岐点から、誰もが知る今の状態とは全く違う
いい意味でも悪い意味でも、大きく変わってしまった…そんな、日本という名の異世界。
一期一会
一樹之陰
運命の人
「このことは決まっていたのか」と思われほど
良い方にも悪い方にも綺麗に転がるこの世界…
そんな悪い方に転ぶ運命だった人を助ける唯一の光
それをこの世界では
「異世界転生」
とよぶ。
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