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ゴールデンウィーク 遊園地編

6日目 3等分+1 ㉕

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部屋のカーテンから光が刺し
ちょうど私と一秋の顔が重なったその瞬間を明るく照らしていた。
しかし、そんな普段ならなぜだか神秘的に感じていたかもしれない光も、今は関係ない。

「ばっ!ちょ!そのタイミングで目覚める!?!?」
「いや、お前こそ何してんの!?!?」

一秋が目を覚めたのである。
想定では一秋は目覚めずに、私だけの知ってる秘密。
ふとした時に思い出してニヤニヤできる思い出になるはずだったのに…
普通、恋愛ものの漫画とかでここ目覚めるところじゃないじゃん!?
そこで目覚めるのお姫様みたいなおとぎ話くらいじゃん!?
私たち、そんな白雪姫みたいな雰囲気でもないし…そんなキラキラした関係でもないのに…なんで…こう…
あー…

はずかし…

「…いや、ちょっと…ゴミついてたから…」
とりあえず、目を逸らして誤魔化してみる。
「…口で取ろうとしてたん?鳥かなんかか?とりあえず、ホントのこと言ってくれますかねぇ!?」
想像するまでもなく、そんな嘘は通用しない。
てか…普段嘘つかなすぎて、嘘つくの慣れてない…嘘ってみんなどうやってついてるのよ…

「…ね…寝てたので…その…バレないかなって…思って…」
こんな好奇心に溺れていなければ…
後悔あとを絶たずとはこういうことなのだろうか。

普段は私から行くことがほとんどだけれども、その時は一秋の承諾があった上での行動であって今回みたいにこっそり勝手に行動に移したことはほぼなかった。
一秋がしてもいい
その確証がないのに行動したのは今回がほぼ初めて
…嫌われたり…しない…よね?
…顔が赤くなるのと同時に、心の中に不安の種が植えられた。

「…」

すこしの無言の時間。
それが私の中に植えられたばかりの種子の成長を促していく。

「…なんか、あれだな…」
そんな無言の時間が終わり、一秋が口を開く。
「…お前らしくないな笑」
…え?
それってどういうこと…

「だって普段頼りになる感じがあるからさ、なんか、そんな女の子らしい反応されるのはちょっとびっくりでよ笑」


いや…まぁ…そうかもだけど
今日、胸がないだの女の子らしい反応がお前らしくないだの
…女子に対してあるまじき発言多くない??
…え、やっぱり私って女の子らしくはなれなかったし、なったとしても似合わない…のかな

「…なんか…ごめん」
自分も訳もわからず謝ってしまう。
「なんで謝るんよー」
「…いや…だって…迷惑かけてばっかだったし、その…今日の私変でしょ?たぶん。だから…いつも通りじゃなくて…あと勝手にキスして…ごめんなさい。」

女の子らしい女の子になりたかった。
高校から目標にしていたこれも…やっぱり
無理だよね。

「…ふふっ…ふふ…笑」
そんな時、一秋の方から笑う声が聞こえる。
下を向くのをやめて、一秋の方を見ると
頬を膨らませて、笑うのを一生懸命我慢している一秋がこちらを見ていた。
てか、少し笑い漏れてるし

「なんで笑うの!?!?私真剣に言ったんだよ!?」
「だって、今日謝ってばっかで、少しおかしくなっちゃって笑」
「…そうかもだけど、今笑う!?」
「しかも今のはそんなに謝ることじゃないじゃん?」
「え…でも…私迷惑ばっか…」
「そんな迷惑なことしてなくない?てか…俺も倒れてみんなの時間無駄にしちゃってたし、それ以上に鳴海が悲しむことばっかりしてたわけだし。」
「…一秋」

一秋は悪くない
私がひてくれていて
自分の中だけで全部決めつけてたのが悪いの。
そもそも、今日こうなったのは、私が一秋の話を最後まで聞かなかったことだったり、許容するべきことを我慢できなかった私の責任。
私が我慢すれば大丈夫だったこと。
だから…一秋が改めて謝ることではないの…

「…いや…でも、一秋はもう謝らなくて」
「あ、またなんか我慢してるやろー!」 

やっぱり、一秋にはバレてしまう。
私を見つめる瞳は、優しさに満ち溢れて
強がる癖のある私にはあまり向けられない慈悲の感情。
…カンが鋭い時と鈍い時の差が酷いのに、私が我慢しようとする時はなぜだか百発百中で気づかれてしまう。

「してない…」
「今は俺しかいないんだぞ?素直に言ってみ」
「…し、してない」
「なら、なんで泣きそうなの?」
「…な、泣きそうじゃないし!!!」
そう言いながらも、私は知らないうちに涙を流していたらしく、頬に暖かい雫が落ちるのを感じた。
すると、一秋はそれを指で拭ってくれる。
…今日、私ダメダメだなぁ…泣いてばっかだし

「…責任感が強くて、強がりで、頼りになる男勝りな鳴海も大好きだし、女の子らしさのある可愛い鳴海も俺は大好きだよ?」

その言葉で、ストッパーが外れたのだろうか
私の中で、溜まっていた今日の不満と願望が全て溢れ出し始めた。
私は、一秋に抱きつき、そのまま押し倒した形になった。
もちろん、涙も止まらないし声も出ている。

「一秋ぃ…バカァ………」
「はいはい…こんな時にしか甘やかしてあげれなくてごめんな?俺が不甲斐ないばかりに」
「…うぅ…ほんと…バカァ……」

頭を撫でる手と声は、普段よりも優しくて、暖かくて
それ以上に、愛情に溢れていて
しっかりと今日あった不満と願望を満たしていってくれる。

「…わ、私…一秋と一緒に今日過ごしたかったの…みんなで居たいのも本当だけど、それ以上に一秋とまわりたかったの…だから…一秋が春樹くんとデートしに来たとか言われた時…」
「あーわかったから…とりあえず泣ける分全部泣いとけって…」
「そこは全部聞くの!甘やかすの下手くそぉ!!」
「えぇ…んな事言っても慣れてなくて…」

「ノアちゃんのことおんぶしようとした時も…ナンパされてた時も…全部…これまでのこと全部…」
「でも、お前春樹が記憶なくなった時冬華さんと会ってたじゃん?そんとき俺と春樹のBL許容できるかできないかで、できるみたいな話してたみたいじゃん。そこまで嫉妬深かったの今まで気づかなかった笑」
「なんでそれ知ってるの!?!?」
「今マグロ漁船に乗らされてる友達から連絡来てたんよね笑」
「え…誰それ…」
「まぁ、遠い友人よ!話聞いてる限り鳴海と冬華さん確定だったからさ笑」
「…うぅ…我慢してました…許容もできないです…はい…これでいいでしょ!」
「はい、よろしいです笑」

いつもはからかう側なのに…今日はからかわれてばっかだ…
でも、素直になれる唯一の時間であって、決して嫌な時間には感じなかった。

「…色々我慢させちゃってごめんな…」
「…うぅぅ…私もわがままでごめんねぇ……」

謝ってばかりの2人である。

その後は無言の時間が続き
ただただ、撫でられ甘やかされる時間が続いただけだった。
でも、その時間はとても濃厚で今日の大変だったことが全て綺麗に洗い流されていくような感覚に浸る
普段、甘えられていられなかった感情の全てが吐き出されるように、これまでなかったこのような時間は、一生忘れられないような最高の思い出になったと思う。
いつの間にか、私は泣き疲れたのと同時に、安心感につられて私は眠りにおちてしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「…」
「すぅ…すぅ…」

…寝た…のか?




…よ、良かったァァァァァァ!!!!
めっっっちゃ不安だったけど!
無事解決!!!
よっしゃ!!!!!
当然逃げられたと思えば
お父さん現れたり
殴られて気絶したり
そしてその後また気絶したり…
いろいろあったけど、仲直り出来た…
よかったー…

気持ちよさそうに寝ている鳴海はとても可愛らしい
…ツンツン
普段は触れない、彼女のほっぺを思う存分堪能できる。
実は、お泊まりをした時はだいたいツンツンしているんだけれど、この時間が地味に幸せの時間。
他の人にも触って欲しいほど触り心地は最高なのだが、触られたら触られたで…
絶対に嫌だな…
…つんつん
…つんつんつん
…可愛い

普段は男勝りな分、こうやって素を見せてくれると素直に嬉しいし、改めて可愛く思えるんだよなぁ…
もうちょっと素直に色々言ってくれてよかったのに。

…結婚…か
…うん、したい…
お父さんからは認められたけど、お母さんからはまだ認められてないわけだし…
就活とか色々頑張って…ちゃんとした形でプロポーズしたいな…
てか、もしかしたらしてくれるかもだけどね笑
…いや、うん、俺からするべきだわ、これは
いっつも鳴海がエスコートしてくれていたけど、今日から頑張ってみよう
そしたら、今日みたいに素直になってくれるかもしれないし、もう少し…鳴海が楽に生活できるんじゃないかな…
まっ、とりあえず…色々迷惑かけたけど
終わりよければすべてよし…てことで…
「…とりあえず起こさなきゃな…みんな待って…いや…もう少し、このままでいいか」

起こそうと思ったけど、こんなに可愛い寝顔見せられたら…起こせない
…幸せそうで何よりだ
ほっぺをつつくのをやめて、頭を撫でるのに戻る。
すると、幸せそうに口元が緩み、穏やかな顔つきに拍車がかかる。
…可愛い

この後、幸せそうに眠る鳴海につられ、自分も睡魔にかられてしまい、そのまま一秋も眠ってしまった。
そんな幸せに眠る2人の姿は、医務室の職員の人も起こさないようにするほど、仲睦まじいものだった。

この時間はカーテンからオレンジ色の光が彼らを照らすまで続いた。
とてもゆっくりとした、天国のような時間。
この時間は、一秋にも、最高の思い出として記憶に残るものとなった。
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