202 / 1,008
糸が解れて
しおりを挟む
相手はヤクザであって百害あって一利なし。
早々に話を切り上げる必要を理解はしているのに、どうしてかそんな気持ちが起きない。
「そうなんですか…」
縁を切りたいはずなのに、カッコいいし意外に優しいとか時々思ったりなんかして。
そしてたった今、声が好きだとか気づきたくなかったのに気づいてしまった事実がまた増えてしまった。
顔を見てみたくて残念だなんて、心の片隅で思っている自分を認めたくない。
矛盾した気持ちが自分の行動迄も支配していく。
無理矢理体を奪って、自由も制限し、今度は父親の仕事を盾にして言うことを聞かせようとしているかもしれない恐ろしい相手だ。
黙ってやり過ごし、後は電話を早く切り上げる様に仕向ければいい。
「あ、その…っ」
それなのに僕、何で話しかけてるの?
何故か声が聞きたい。
まるで麻薬の様に支配されていく脳が、もっとと訴えかけてくるのだ。
そして話をしたいという欲求が沸き起こる。
もっと何か喋って欲しい。
「お、お仕事っ。お疲れ様でした!」
照れのようなものも手伝ってか、少し勢い込んで言ってしまい、しまった!と唇を噛み締る。
失敗に怯えた祐羽だったが、耳を澄ませている器械の向こうで、不思議と空気が和らいだのが分かった。
あ。もしかして今、九条さん…笑った?
そう思うとあれだけ緊張していた体の力も抜けていき、知らず知らず祐羽の顔に笑みが浮かんでいた。
『疲れてはいない』
「えっ。そうなんですか?凄いです」
『大したことじゃない』
「えっ、いや大したことだと思います。本当に凄いと思うんですけど…」
『そうか。なら素直に受け取っておこう』
あ。僕と九条さん、今普通に話してる…?
あんなにも沈黙が続いたふたりが、こんなに話を無理なく進められているのは初めてに近いかもしれない。
九条は口数が少ないが必要な事は言うし、自分も親しい人とは普通に喋る。
ただ祐羽が喋らないから余計に沈黙に陥っていたのだが、緊張の糸が少し解れた今は話す事が苦ではなくなっていた。
早々に話を切り上げる必要を理解はしているのに、どうしてかそんな気持ちが起きない。
「そうなんですか…」
縁を切りたいはずなのに、カッコいいし意外に優しいとか時々思ったりなんかして。
そしてたった今、声が好きだとか気づきたくなかったのに気づいてしまった事実がまた増えてしまった。
顔を見てみたくて残念だなんて、心の片隅で思っている自分を認めたくない。
矛盾した気持ちが自分の行動迄も支配していく。
無理矢理体を奪って、自由も制限し、今度は父親の仕事を盾にして言うことを聞かせようとしているかもしれない恐ろしい相手だ。
黙ってやり過ごし、後は電話を早く切り上げる様に仕向ければいい。
「あ、その…っ」
それなのに僕、何で話しかけてるの?
何故か声が聞きたい。
まるで麻薬の様に支配されていく脳が、もっとと訴えかけてくるのだ。
そして話をしたいという欲求が沸き起こる。
もっと何か喋って欲しい。
「お、お仕事っ。お疲れ様でした!」
照れのようなものも手伝ってか、少し勢い込んで言ってしまい、しまった!と唇を噛み締る。
失敗に怯えた祐羽だったが、耳を澄ませている器械の向こうで、不思議と空気が和らいだのが分かった。
あ。もしかして今、九条さん…笑った?
そう思うとあれだけ緊張していた体の力も抜けていき、知らず知らず祐羽の顔に笑みが浮かんでいた。
『疲れてはいない』
「えっ。そうなんですか?凄いです」
『大したことじゃない』
「えっ、いや大したことだと思います。本当に凄いと思うんですけど…」
『そうか。なら素直に受け取っておこう』
あ。僕と九条さん、今普通に話してる…?
あんなにも沈黙が続いたふたりが、こんなに話を無理なく進められているのは初めてに近いかもしれない。
九条は口数が少ないが必要な事は言うし、自分も親しい人とは普通に喋る。
ただ祐羽が喋らないから余計に沈黙に陥っていたのだが、緊張の糸が少し解れた今は話す事が苦ではなくなっていた。
21
お気に入りに追加
3,672
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる