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27.我が輩は石である。三大欲求などあるわけが無い石である。

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 ゾンビはウィルスが原因であると考える場合。
 神の御技が通じるはずないので、ファンタジー上では却下させていただく。
 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。  

 さて、不死こそ人間の進化である、と仮定したわけであるが、ここで気がかりな事が一つ。
 
 人間の理想とする進化について考察した場合、である。

 人間が進化すると考えたとき、とてもでは無いがゾンビを求めることは出来まい。
 しかしながら、人間が夢見る進化が不死であることは、一つの答えであると言える。
 吸血鬼しかり、不死王と呼ばれるアンデッドしかり、である。
 結果として同じであるはずが、ゾンビが拒絶されるのは、ひとえに「腐る」「無能」という点に於いてであろう。
 そもそも、骸骨姿で魔法が使えている場合、何割かの諸姉諸兄諸君は「したり」と思うはずである。
 我が輩とて、その何割に該当する。
 なにせ、我が輩、石なので。
 骨に憧れて何が悪い。動けるだけマシというものだ。

 もとい。
 ゾンビの行動原理は、徘徊、攻撃、捕食、以上三つであろう。
 他に知性に溢れる特別な行動をするゾンビは中々お目に掛からない。
 しかしながら、我が輩の唱える『万物魂存在説』の魂は、前世の記憶を行使できるはずなのである。
 ゾンビになった途端、この前世の記憶を行使できないのは何故なのであろうか?

 まず第一に、我々はゾンビに対して、生物とは全く違う考え方を前提にしているはずなのだ。
 即ち「ゾンビは滅んだ肉体が勝手に動いている状態」という考え方で、「そもそも魂は存在していない」という前提であると言うことなのだ。
 我が輩の『万物魂存在説』とは相反する考え方なのである。
 我が輩、どうやら自分で自分の首を絞めているようである。
 しかし、是についても我が輩は、まだまだ考えを発展させねば成らぬと考えているのだ。

 それは『万物魂存在論』で考えるならば、「等しく前世を覚えており、等しく前世のチートを使えなければならない」はずなのである。
 例えば我が輩のように、ただ愚考を繰り返すだけで、言葉を発する事が出来ない「物体」の器を持った魂もあれば、ゴブリンであろうがスライムであろうが「動体」という器を手にした場合でも、等しく前世の知識を用い、チート生活を満喫出来なければいけないはずなのだ。
 ところが、どんな異世界ファンタジーを読んでも『自分以外の誰かが前世の記憶を持っているケース』は、異常なほど少ないである。
 100人の登場人物がいて、一人二人の話である。異世界全体で考えれば、数万分の一、または数億分の一、の可能性なのである。
 ではこの、圧倒的大多数の魂は、何故前世の活動の続きが出来ないのであろうか。
 それは、我が輩の考える仮定『魂貸与増減論』を提唱させていただきたいのである。

 まず、我が輩の『万物魂存在論』であるが、肉体、物質という器は創造神が創っている、この器を動かすのが魂のエネルギーである、と論じている訳であるが、当然この世界も「繁殖によって器が生じる」ケースが存在する。

 つまり、交尾、出産の仮定である。

 この赤子に「常に神が魂を込める」と言うことが可能であろうか?
 我が輩はここに異を唱えてみようと思う。
 即ち赤子には「両親の魂が分裂し、赤子に宿る」と考えてみたいのだ。
 仮に父親と母親の魂を共に100とする。
 このうち、胎児の器に父親の魂10が与えられ、母親の魂10が加算され、赤子には20の魂が宿る。
 そしてこの魂が、成長と共に総量を増やしていくと考えれば、この赤子に前世持ちの魂は必要ない。
 同様に肉体の衰えと共に、魂のエネルギーも徐々に失えるからこそ、人間や生物には「寿命」が存在する。
 樹木も同じで、実を付け、大地に芽吹く際に、樹木自身と大地の魂を宿し、雨や日光からも魂を分けて貰い、次の木々へと命をつないでいく。
 つまり、世界の器は「常に新しい魂を必要としない」と考えられる訳である。
 翻って、魂を次の世代に分け与えようがない、我が輩のような石の器に宿ったはどうなるか?

 ………交尾? 
 なにそれ、美味しいの?

 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
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