22 / 29
22.我が輩は石である。生前のひたすら悔いる石である。
しおりを挟む
魔席を魔物の病気扱いしたが後悔はしていない。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
さて、魔物の中に石があるなら、医学の見地から鑑みれば結石扱いされるのが妥当ではなかろうか。
生まれつき石があるなら、既に生まれた時点で結石持ち。
尿結石では無いことを祈ろう。
いろいろな意味で。
さて。
結局『万物魂存在論』を元にした魔法行使理論を覆す要点は見つからず、我が輩の結論としては『魂魔法原動力説』を唱えるに至った。
これで我が輩は『万物魂存在論』と『魂魔法原動力説』、そして『神精霊魂別格論』の三つを提唱するに至ったわけだが、これではまだまだ世界の真理への道は遠かろう。
なにせ、我が輩は神へいたる一歩を踏み出さなければならない。
その一歩が、こんな安易な思考のみで至れるのであれば、こんな楽な事はない。
もう少し、魔法の観点から、世界を考察していってみよう。
才能の差、とはなんで有ろうか?
生前、我が輩には才能など無かった。
否、才能はあった。
ただ、才能を生かすことは、終ぞ無かった。
僻んで、妬んで、拗ねて、羨んで、恨んで、嫉妬して、いじけて、ふて腐れて、最後に死んだ。
全く以て、石になるのが、これほど似合う生き様があるであろうか。
滑稽である。愚劣である。無様である。
そう。
我が輩の、ただひたすらに、他人より優れている自分を求め続けた思考こそが、我が輩の才能を潰してしまったのだ。
プラス思考でも無い。
マイナス思考でも無い。
ただ何処までも、他人より優れていないと気が済まなかった思考。
いま。
石になった今だからこそ。
我が輩の生前の思考は、なんと惨めであったのであろうか。
プラスにもマイナスにも成らない思考。
こんな人間が、建設的な会話が出来るわけも無かった。
こんなマイナスにもプラスにも成らない、ただ己が僻み根性を全部吐き出すような思考回路の言葉など、ひたすら相手を不快にさせる言葉しか出せる訳がないでは無いか。
少なくとも、前世では才能の差は、確実にあったと思う。
万物魂存在論を元にしたとしても。
魂は全て平等であると仮定しても。
器である肉体の能力の差は、いかんともしがたいものがあったであろう。
ただし、それは、分不相応な才能を求めた場合に限るのではないか?
世界の舞台で闘うことも才能であれば、近所の飲み屋で楽しく酒を飲み交わすことも、才能ではないだろうか?
生前の我が輩は、間違いなく後者の才能であった。
にもかかわらず、前者の才能を求めた。
否。
前者の「評価」を求めたのだ。
我が輩自身の結論である。
生前、才能があった。
しかし、我が輩は「才能」より「評価」を求めた。
だから、才能は、潰えたのだ。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
さて、魔物の中に石があるなら、医学の見地から鑑みれば結石扱いされるのが妥当ではなかろうか。
生まれつき石があるなら、既に生まれた時点で結石持ち。
尿結石では無いことを祈ろう。
いろいろな意味で。
さて。
結局『万物魂存在論』を元にした魔法行使理論を覆す要点は見つからず、我が輩の結論としては『魂魔法原動力説』を唱えるに至った。
これで我が輩は『万物魂存在論』と『魂魔法原動力説』、そして『神精霊魂別格論』の三つを提唱するに至ったわけだが、これではまだまだ世界の真理への道は遠かろう。
なにせ、我が輩は神へいたる一歩を踏み出さなければならない。
その一歩が、こんな安易な思考のみで至れるのであれば、こんな楽な事はない。
もう少し、魔法の観点から、世界を考察していってみよう。
才能の差、とはなんで有ろうか?
生前、我が輩には才能など無かった。
否、才能はあった。
ただ、才能を生かすことは、終ぞ無かった。
僻んで、妬んで、拗ねて、羨んで、恨んで、嫉妬して、いじけて、ふて腐れて、最後に死んだ。
全く以て、石になるのが、これほど似合う生き様があるであろうか。
滑稽である。愚劣である。無様である。
そう。
我が輩の、ただひたすらに、他人より優れている自分を求め続けた思考こそが、我が輩の才能を潰してしまったのだ。
プラス思考でも無い。
マイナス思考でも無い。
ただ何処までも、他人より優れていないと気が済まなかった思考。
いま。
石になった今だからこそ。
我が輩の生前の思考は、なんと惨めであったのであろうか。
プラスにもマイナスにも成らない思考。
こんな人間が、建設的な会話が出来るわけも無かった。
こんなマイナスにもプラスにも成らない、ただ己が僻み根性を全部吐き出すような思考回路の言葉など、ひたすら相手を不快にさせる言葉しか出せる訳がないでは無いか。
少なくとも、前世では才能の差は、確実にあったと思う。
万物魂存在論を元にしたとしても。
魂は全て平等であると仮定しても。
器である肉体の能力の差は、いかんともしがたいものがあったであろう。
ただし、それは、分不相応な才能を求めた場合に限るのではないか?
世界の舞台で闘うことも才能であれば、近所の飲み屋で楽しく酒を飲み交わすことも、才能ではないだろうか?
生前の我が輩は、間違いなく後者の才能であった。
にもかかわらず、前者の才能を求めた。
否。
前者の「評価」を求めたのだ。
我が輩自身の結論である。
生前、才能があった。
しかし、我が輩は「才能」より「評価」を求めた。
だから、才能は、潰えたのだ。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる