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22.我が輩は石である。生前のひたすら悔いる石である。

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 魔席を魔物の病気扱いしたが後悔はしていない。
 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

 さて、魔物の中に石があるなら、医学の見地から鑑みれば結石扱いされるのが妥当ではなかろうか。
 生まれつき石があるなら、既に生まれた時点で結石持ち。
 尿結石では無いことを祈ろう。
 いろいろな意味で。

 さて。
 結局『万物魂存在論』を元にした魔法行使理論を覆す要点は見つからず、我が輩の結論としては『魂魔法原動力説』を唱えるに至った。
 これで我が輩は『万物魂存在論』と『魂魔法原動力説』、そして『神精霊魂別格論』の三つを提唱するに至ったわけだが、これではまだまだ世界の真理への道は遠かろう。
 なにせ、我が輩は神へいたる一歩を踏み出さなければならない。
 その一歩が、こんな安易な思考のみで至れるのであれば、こんな楽な事はない。

 もう少し、魔法の観点から、世界を考察していってみよう。

 才能の差、とはなんで有ろうか?
 生前、我が輩には才能など無かった。
 否、才能はあった。
 ただ、才能を生かすことは、終ぞ無かった。
 僻んで、妬んで、拗ねて、羨んで、恨んで、嫉妬して、いじけて、ふて腐れて、最後に死んだ。
 全く以て、石になるのが、これほど似合う生き様があるであろうか。
 滑稽である。愚劣である。無様である。

 そう。
 我が輩の、ただひたすらに、他人より優れている自分を求め続けた思考こそが、我が輩の才能を潰してしまったのだ。
 プラス思考でも無い。
 マイナス思考でも無い。
 ただ何処までも、他人より優れていないと気が済まなかった思考。
 いま。
 石になった今だからこそ。
 我が輩の生前の思考は、なんと惨めであったのであろうか。
 プラスにもマイナスにも成らない思考。
 こんな人間が、建設的な会話が出来るわけも無かった。
 こんなマイナスにもプラスにも成らない、ただ己が僻み根性を全部吐き出すような思考回路の言葉など、ひたすら相手を不快にさせる言葉しか出せる訳がないでは無いか。

 少なくとも、前世では才能の差は、確実にあったと思う。
 万物魂存在論を元にしたとしても。
 魂は全て平等であると仮定しても。
 器である肉体の能力の差は、いかんともしがたいものがあったであろう。

 ただし、それは、分不相応な才能を求めた場合に限るのではないか?

 世界の舞台で闘うことも才能であれば、近所の飲み屋で楽しく酒を飲み交わすことも、才能ではないだろうか?
 生前の我が輩は、間違いなく後者の才能であった。
 にもかかわらず、前者の才能を求めた。
 否。
 前者の「評価」を求めたのだ。

 我が輩自身の結論である。
 生前、才能があった。
 しかし、我が輩は「才能」より「評価」を求めた。
 だから、才能は、潰えたのだ。

 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

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