上 下
11 / 26

11.我が輩は石である。生前、無意味なプライドに固執した石である。

しおりを挟む
 ゲームばかりしていると、ゲーム脳になる。
 ゲームの世界の経験は、現実世界で役に立たない。
 ストレス解消という名の逃避である。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

 諸姉諸兄諸君。
 我が輩は、悔いを感じている。
 自分のかつての思考を、今更後悔する、愚者である。

 今、諸姉諸兄等の読み進めるファンタジーに、数字で表す世界の、何と多いことか。
 それは、ゲームの世界に転生した、と必ず名前が付いているファンタジー世界だ。
 それにしても、何故日本国内のファンタジーにはこれほどゲームかぶれのファンタジーが増えたのか。
 話は単純だ。
 制作会社の連中から、諸姉諸兄諸君が思考と想像が出来ない低俗な人間と思われているからだ。
 諸君等は、一から十までキャラ説明、世界観説明が無いと、作品の面白さが理解できないと考えられている。
 一から十まで設定が完璧な世界では無いと許されないと思われている。
 だから、既に固定された『ゲーム』という概念を利用したファンタジー作品が増えるのだ。
 ”そういうゲームなので”という逃げ道を作っているのだ。

 このザマになり、つくづく思う。

 我が輩は『何に』そんなに目くじら立ててたんだろう?

 作品に対して、文句があるのはまだ良い。
 自分の趣味趣向と一致する作品でないかぎり、絶対に不平不満はある。
 しかし、それを作り手に向かって言う必要は、果たしてあっただろうか?
 世間に向けて、同調者を求める必要はあっただろうか? 
 わざわざ作り手に不満が届く手法を選び、不満の言葉を投げかける理由はただ一つ。

 マウントを、とりたかったのだ。

 何故、言い切れるか?

 我が輩が、そうだったからだ。

 お前等が気付かなかった間違いに俺は気付いているんだ、と悦に入って指摘する。
 そんなのは上げ足取り程度の言い分に、賛同する人間も、全く同種の人間だったのでは無いかと今になって思う。

 作り手へのリスペクト、とはよく言うが、まず作品を楽しむ姿勢をこちらがとらなければ、作品と正面から向き合うことが出来ない。
 世界観を許容する準備が無ければ、どんな世界だって理論は崩壊することだろう。
 存在しているゴブリンやスライムに対して、現実に存在するわけが無い、と言い始めるのと同じだ。
 どんな世界だろうと、自分が許容しなければ受け入れられない。
 それは、作品だろうと、対人だろうと同じだろう。

 もちろん、原作レイプと呼ばれる状況を生み出した作品はいくつもあると思う。
 クレームを入れたくなる気持ちも分かる。
 我が輩だって生前入れた。
 大好きな作品が見るも無惨な商品になっていたら、それはガックリくるものだ。

 ただ。
 我が輩の場合について語るならば。
 作品を楽しむ姿勢を、我が輩はいつの間にか失っていたのだ。
 日本のテレビドラマがダメだ、日本のバラエティがダメだ、邦画がダメだ、ゲームはつまらない、アニメは二番煎じばかりだ。
 このように論うことは簡単だ。
 だがしかし。
 我が輩は”理想”を語れないのだ。
 日本と海外を比較できるほど外国のドラマを観たのか。否。
 海外のアニメと日本のアニメの対比が出来るか。否。
 日本のゲームを遊び尽くすほど買ったか。否。

 いつの間にか、文句を言うための理由付けのために、不買運動をしていたのだ。
 本当に好きなら文句を言いつつもまずは観ただろう。
 つまらなければ「なんかダメ」で視聴を止めれば良かった。
 いつの間にやら”つまらないものを観ない自分”に酔っていたのだ。
 だから、誹謗中傷することに、のめり込んだ。
 自分ならもっと面白い物を作れると、勝手な妄想を詰め込んで。

 愚者の思考は、いつでも内向的なものだ。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

→誰かに話したくなる面白い雑学

ノアキ光
エッセイ・ノンフィクション
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます) 見ていただきありがとうございます。 こちらは、雑学の本の内容を、自身で読みやすくまとめ、そこにネットで調べた情報を盛り込んだ内容となります。 驚きの雑学と、話のタネになる雑学の2種類です。 よろしくおねがいします。

50代後半で北海道に移住したぜ日記

江戸川ばた散歩
エッセイ・ノンフィクション
まあ結局移住したので、その「生活」の日記です。

【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー

光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。 誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。 私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。 えぇ?! 私、仙人になれるの?! 異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。 それなら、仙人になりまーす。 だって、その方が楽しそうじゃない? 辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。 ケセラセラだ。 私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。 まぁ、何とかなるよ。 貴方のこと、忘れたりしないから 一緒に、生きていこう。 表紙はAIによる作成です。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

イケメンの幼馴染が結婚相手に選んだのは、性悪の姉ではなく私でした。

ほったげな
恋愛
私の姉・ルボミーラは、自己中心的な性格である。そんなルボミーラとイケメンの幼馴染で子爵令息のパウルの縁談がまとまりそうになったのだが、パウルは姉ではなく私と結婚したいと言い出した。

処理中です...