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6.我が輩は石である。魂が存在する石である。

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 およそ、自然という物に意識の存在はあるまい、と考えて続けている。

 我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

 しかしながら、石というタダの物質に転生した我が輩という存在が有る以上、自然に意志が存在しないと考えることも、またナンセンスであろう。

 そういえば、某映画シリーズでは”フォース”という言葉を重宝していた。
 ただの超能力では無いという解説動画を目にしたが、我が輩にはサイコキネシスの域を越えるようには見えなかった。

 しかし、不思議である。
 人間は科学の発展前に、大自然、世界の成り立ちに”神の存在”を想定した。
 それは、一地域だけの話では無い。
 全世界において、余すところも無く、神の存在を意識した。

 遠く離れた別々の環境で暮らしていた人間に、神という空想の共通認識が生まれる物なのだろうか?

 確かに神の成り立ちも存在のあり方も大きく違う。
 しかし、不可視の何か、があり、不可視の何かに守られた、という考え方至ったことが非常に不思議なのである。

 人間が、死という概念に立ち向かわなければならなかったのは、ひとえに知性が身についたからだったのだろう。
 万一、人が知性を獲得したと同時に、人間と他の生物との腐敗速度の計算などをしていたら、神の存在は否定されたのだろうか?

 答えは、否、である。

 魂という不可視の非科学的存在になった今、神の存在というものを否定することは難しい。
 このファンタジー満載と思われる世界においても、おそらくそれは変わらない。
 魂など存在しないとするのであれば、我が輩の意識は消失していなければいけないのだから。

 まず魂という概念はここに成立する。
 意識を持ち、思考する、不可視の物質以外の概念。
 哲学の世界ではこの現象は既に論客がいるはずだが、そちらは現実世界の諸姉諸兄等にお任せしよう。
 あくまで今我が輩が存在しているのは、ファンタジーな異世界なのだ。

 現実世界の諸姉諸兄等が目にしている、数多に渡る異世界物語。
 今ある世界とは全く別の世界の物語。
 そのほとんどは”指輪物語に遡る”と言われる。
 もっとも、遡れば当然ギリシャに代表される”神話の話”に遡るわけだが。
 我が輩の思い至る神話の中で、魂について論じたシーンは少ないように思う。
 魂が関わるとすれば必然的に冥界、つまりは死後の世界であるが、肉体を持って死後の世界に行く。
 死後の世界では生きてきた罪の重さによって責め苦に苛まれている。

 これは、死後の世界でも肉体が存在している、という証左にならないだろうか。

 もちろん、魂となった世界を語る神話もあるかもしれないが、地獄の責め苦を受けるには、肉体が存在しなければならないはずだ。
 たいして、肉体を持ったまま極楽浄土に至った神話はあっただろうか。
 我が輩の狭い知識の中では、メジャー所では少ないように思う。
 ともすれば、この異世界転生というのも、肉体を持った死後の世界、つまり「地獄に堕ちた」と考えられるのでは無かろうか。

 現実を生きるのは、詰まるところ、地獄なのだ。

 今の我が輩が良い例であろう。

 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

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