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3.我が輩は石である。人と同じはずがない。

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 朝露に湿り、日差しに乾かされ、夜の闇が白むのを待つ。
 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

 異世界の石となって、失ったことがある。
 まずは日付の感覚だ。
 日付という概念は、人間の営みに必要であるから設定されている。
 いつ、何処で、誰と、何をするのか。
 この感覚は、誰かと接していなければ失ってしまう。
 なぜなら、太陽が昇ろうと、星が瞬こうと、月が巡ろうと、我が輩には何一つ関係がない。
 目の前で獣が寝ていようと、人同士が殺し合おうと、全く何一つ変わらないのである。

 しかしながら、この感覚に近い経験を、諸姉諸兄等は知っているのでは無いだろうか。

 引きこもりだ。

 誰とも接すること無く、パソコン画面だけを観詰め続ける行為。
 誰とも接する事無く、ただ飯を喰い、ただ寝て、ただゲームの世界に没入する、または世の中に不満を垂れ流すだけの存在。
 今の我が輩と、どこか違うというのか。
 生きながらにして地獄に堕ちることは無い。
 どうせ死んだら地獄なのだ。
 誰かと接する苦しみを愉しむことを推奨する。

 確か昭和時代の言葉に「若い内の苦労は勝手でもしろ」とあった。
 その通りだ。生きている内が花だ。
 諸姉、諸兄、諸君。
 どうか、我が輩のような地獄に堕ちてくれるな。
 生き地獄なら逃げ出せば良い。
 好きな世界だけで生きていけるほど甘い世界ではないだろう。
 だが、好きなことと嫌なこと、どちらか一方しか存在しないなどと言うことはない。
 今一度、自身の世界を振り返ってほしい。
 嫌なことしか存在しないなら、そこは君にとって生き地獄だ。
 プライドも何もかもかなぐり捨て、世の中の最下層で、胸を張って楽しく生きて欲しい。

 どんなことがあっても、その辺の無機物を見つめて我が輩を思い出して欲しい。

 我が輩よりは、マシだろう。

 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
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