神様自学

天ノ谷 霙

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招待状は王子ではなく

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ぴくり、と王子の部屋でくつろいでいた呪いをかけた張本人は、耳を動かしました。一瞬だけ険しい顔をして、窓の外を見ながら王子に話しかけます。
「王子サマー…そろそろです。これ以上時間がかからないように、兵を引かせて王子サマの部屋に案内した方が良いと思いますよー」
「はぁ?何の、こ…と…」
王子の方を見ずに、張本人はぼーっと外を眺めたまま、独り言のように言いました。
「…お前は本当によく分からん」
王子は書類作業をしていた手を止め、部屋から出て行きました。恐らく、兵を引かせて部屋に案内するために。誰を、と聞かれても王子には答えられません。ただ、張本人に「見たら分かります」と聞いていただけでした。
「いいから、指示に従え」
「しかし、曖昧な指示ではまた呪いをかけた者を中に入れてしまう危険が…」
「それは心配いらない。…奴の居場所は分かっている」
「え?」
最後の方の言葉は、側近には聞こえないように王子は呟きました。側近が聞き返そうとする前に、王子は白の出入り口に現れた2つの人影に、目を奪われてしまいました。片方はよく見る衛兵の格好。頭の甲冑が無く、顔が見えていることだけが他の衛兵と違う、ただそれだけの男と、水色と白のエプロンドレスに身を包んだ、昔読んだ童話の主人公に似た雰囲気の少女。好奇心いっぱいにウサギを追いかけた女の子に似た雰囲気の少女。青い瞳が王子を捉えると、王子は吸い込まれたかのように何も話せなくなってしまいました。
はっと我に返って、側近に指示を出します。
「…あの者達を私の部屋の前に案内しろ。私は部屋で待つ。ドアの前に来たらノックで知らせろ」
そう言ってマントを翻し、王子は部屋に戻ります。側近は何か言いたそうにしていましたが、口をつぐんで深くお辞儀をし、指示に従いました。

「…おかえりなさい王子サマ」
「まだいたのかお前」
「いますよ。…これからが僕の目的ですし」
「俺に呪いをかけた目的か?お前は昔から呪いとか魔術とか、そういうのが好きで練習してたよなぁ…」
「懐かしいですね。そんな昔でもないのに」
遠い目をしたその人に、王子は何か声をかけようとしましたが、それよりも早くノックの音が部屋に響き渡りました。王子は張本人に隠れるように目で指示しましたが、張本人はにこにこ笑って、先程からくつろいでいるソファの上を動きませんでした。王子はその様子を見て1つため息をつき、ドアを開けました。
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