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8月25日 教えてもらって
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「…っと、衛兵はこんな感じかな?竜夜、わかった?」
いつも通りの声で、背中などをはたきながら立ち上がる霙。
「まぁまぁ…何かアドバイスとかあるか?」
「うーん、衛兵って呼ばれてるくらいだし、衣装は鎧とかそういう系だと思うんだよね。だから動きづらいし、最後の方は動きが遅くなったりすると思うよ」
「了解」
「さて、次は騎士こと夕音だね!竜夜は私の演技何回か見たことあるから台詞付きで見せたけど、夕音は説明しながらやるから、竜夜も実際に動いてみようか」
「マジか…了解」
「お願いします!」
私と竜夜くんで向かい合う。私の横に霙がついて、教えてくれる。
「騎士は衣装とか、軽いものが多いと思うんだよね。だから身軽に動き回っちゃって良いと思う。で、衛兵が敵視して襲いかかってくるから、最初は受けるだけかな」
「う、うん。竜夜くんの剣を受けてれば良い感じ?」
「そんな感じ。竜夜は鎧だし、途中で疲れてくると思うから、そこから反撃開始かな。騎士は、いかに身軽でかっこよく攻撃を決められるか、が鍵だね」
台本をぱらぱらとめくりながら、霙が先も考えて指示を出す。
「新聞じゃ柔らかくて、あんまり出来そうもないね。演劇部から模擬刀取ってくるよ。少し待ってて」
霙が教室を小走りで出ていく。私と竜夜くんだけが取り残されて、顔を見合わせる。
「衛兵と騎士の戦いって…大変だな…」
「うん、衣装の重さとかも意識して演技しないと不自然になっちゃうんだね…」
少し不安になって来た。けれど、けれどそれ以上に。
「でもさ、俺らみたいに演劇部に所属してない人達からすれば、演技なんて滅多に出来ない。けど、今はそれをやるチャンスなんだなって思うと…さ…?」
「うん、不安とかいっぱいあるけど、それ以上に…」
「「楽しい!」」
顔を見合わせて同じことを言ったので、自然と笑みが漏れる。
「霙とか、自分の演技は大丈夫なのかな?」
「あー、何日か前に、お前に1から教えるのは面倒だから、見て教えたことを思い出せって言われて演劇部見学させられたよ。なんか、素人からしたら、もう完成なんじゃないかっていうくらい迫力があって凄かった」
「そうなの?良いなぁ。やっぱり迫力とか、違うんだろうなぁ…」
「でも、指導してくれるのは演劇部のトップクラス2人だぜ?あいつらに任せっぱなしじゃ悪いって皆が思って、それぞれ努力すればきっと…俺たちらしい演劇が出来るよ」
「うん、そうだね。よし、頑張ろう!」
その時、ガラッと扉が開いた。西洋風の剣を2本、持って入ってくる。
「ただいまーっ」
「おかえり、ありがとう」
「おう、せんきゅ」
「いえいえ、じゃあ休憩してたのかな?じゃあ続き、やろっか!」
「「はーい」」
そして、その日は暗くなるまで霙が練習に付き合ってくれた。
いつも通りの声で、背中などをはたきながら立ち上がる霙。
「まぁまぁ…何かアドバイスとかあるか?」
「うーん、衛兵って呼ばれてるくらいだし、衣装は鎧とかそういう系だと思うんだよね。だから動きづらいし、最後の方は動きが遅くなったりすると思うよ」
「了解」
「さて、次は騎士こと夕音だね!竜夜は私の演技何回か見たことあるから台詞付きで見せたけど、夕音は説明しながらやるから、竜夜も実際に動いてみようか」
「マジか…了解」
「お願いします!」
私と竜夜くんで向かい合う。私の横に霙がついて、教えてくれる。
「騎士は衣装とか、軽いものが多いと思うんだよね。だから身軽に動き回っちゃって良いと思う。で、衛兵が敵視して襲いかかってくるから、最初は受けるだけかな」
「う、うん。竜夜くんの剣を受けてれば良い感じ?」
「そんな感じ。竜夜は鎧だし、途中で疲れてくると思うから、そこから反撃開始かな。騎士は、いかに身軽でかっこよく攻撃を決められるか、が鍵だね」
台本をぱらぱらとめくりながら、霙が先も考えて指示を出す。
「新聞じゃ柔らかくて、あんまり出来そうもないね。演劇部から模擬刀取ってくるよ。少し待ってて」
霙が教室を小走りで出ていく。私と竜夜くんだけが取り残されて、顔を見合わせる。
「衛兵と騎士の戦いって…大変だな…」
「うん、衣装の重さとかも意識して演技しないと不自然になっちゃうんだね…」
少し不安になって来た。けれど、けれどそれ以上に。
「でもさ、俺らみたいに演劇部に所属してない人達からすれば、演技なんて滅多に出来ない。けど、今はそれをやるチャンスなんだなって思うと…さ…?」
「うん、不安とかいっぱいあるけど、それ以上に…」
「「楽しい!」」
顔を見合わせて同じことを言ったので、自然と笑みが漏れる。
「霙とか、自分の演技は大丈夫なのかな?」
「あー、何日か前に、お前に1から教えるのは面倒だから、見て教えたことを思い出せって言われて演劇部見学させられたよ。なんか、素人からしたら、もう完成なんじゃないかっていうくらい迫力があって凄かった」
「そうなの?良いなぁ。やっぱり迫力とか、違うんだろうなぁ…」
「でも、指導してくれるのは演劇部のトップクラス2人だぜ?あいつらに任せっぱなしじゃ悪いって皆が思って、それぞれ努力すればきっと…俺たちらしい演劇が出来るよ」
「うん、そうだね。よし、頑張ろう!」
その時、ガラッと扉が開いた。西洋風の剣を2本、持って入ってくる。
「ただいまーっ」
「おかえり、ありがとう」
「おう、せんきゅ」
「いえいえ、じゃあ休憩してたのかな?じゃあ続き、やろっか!」
「「はーい」」
そして、その日は暗くなるまで霙が練習に付き合ってくれた。
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