神様自学

天ノ谷 霙

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繋がりの話 ×ナ×

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その子は何度もやって来た。ヒトが定めた日付という概念が変わる毎に、太陽が世界を照らす毎に、同じ願いをかけていた。恋愛成就を願うヒトは時折訪れたが、わたしは縁を司るモノではないからとあまり気に留めていなかった。きちんと耳に入って来たのは、あの子の願いが初だった。理解したいと願っておきながら、いざそれが目の前にぶら下がると関係ないことだと切り捨てていたのだ。
なんて酷い話。
それに気が付いたわたしは、あの子の願いや行動から姉神様の言動を理解しようとした。恋するモノの気持ちを、行動を、理解しようと努めた。あの子は願いの中に嬉しかったことや反省も詰め込んで教えてくれたから、恋をもとにした色々なことを知る機会となった。

好きな相手が笑うと嬉しいこと。

好きな相手と話せると楽しいこと。

好きな相手に素直になれないと悲しいこと。

好きな相手が他の人と話していると苛立つこと。

好きな相手を中心とした世界が、凄く眩しいこと。

実感としては湧かないそれは、いつだって色鮮やかにわたしの中を染めていって。気が付いた時には、わたしはあの子が来るのを楽しみに待つようになっていた。いつしか、関わりを持ちたいと考えるようになっていた。あの子がわたしの目となり耳となれば、今より実感に近い形でそれを知ることが出来るから。
わたしはあの子を求めるようになった。

まるで恋するように。
まるで愛するように。

1人に執着して、嗜められると激怒した。姉神様と同じだと言われれば、怒りに我を忘れた。
だって、違うのだ。
わたしはあの子に恋をしているわけではない。
わたしはあの子のために今を放棄する気はない。
ただの好奇心で、あの子自身に興味がある訳ではない。
もしあの子が殺されようと、かつてのあのヒトのように転生の手続きをする神のもとまで赴いて、引き取ろうとなんてしないだろう。
あの子の場所にいるのは誰だって良いのだ。偶然あの時わたしが求めるものを持っていたのがあの子で、わたしが知りたいものを次々と持ち込んでくれたから求めただけで、それ以外のあの子はどうだっていいのだ。

それなのにあの子は、わたしの"音"を聞いてしまった。

使つかいとすべきヒトを失い、そのモノのために何度も禁忌に近付き、姉と慕っていた神からすら距離を取った。たくさんのつかいはいるけれど、わたしが求めるものはそこになかった。
わたしがわたしを晒して執着していいものは、そこになかった。
そうして壊れかけ堕ちかけた神の音を、あの子は聞いてしまったのだ。
金の髪を揺らし、わたしの元に現れたのだ。
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