741 / 812
when is 反抗期? 蒼(短編)
しおりを挟む
部活のよしみで海斗に誘われ、来の家がやっている店にやって来た。今日は午前練だったので腹が減っている。疲れ切った体をソファに沈めれば、向かいに座った海斗が「お疲れ様」と笑った。
「前に食べたときは大人数用だったしな。来てみたかったんだよな」
「めちゃくちゃ美味いぞ。流石潮賀家って感じ」
「どんな感じだよ、それ」
そんな話をしていたら、来のお姉さんが注文を取りにやって来た。昼も大幅に過ぎた時間なのでお客さんは他に居らず、来と話せないかと思ったが、生憎買い物中らしい。しばらくは帰って来ないと残念そうに言われてしまった。残念だが仕方ない。そう割り切って俺はカレー、海斗はオムライスを注文した後で、ふと思い出したように来のお姉さんは問いかけて来た。
「来くん、学校でも敬語なの?」
「え、あ、はい」
唐突な問いかけに驚いたものの、すぐに持ち直し海斗が答える。その答えに苦笑いを浮かべたお姉さんは、頷きながらポツリと溢した。
「そうなんだ。家でもそうだから、流石に友達の前では崩すのかなぁって思ってたけど違うのね…」
「家でも敬語なんですか?」
「えぇ。来くんが敬語崩したところ、ほとんど見たことないかも…」
「そういえば桐竜にも敬語だったような…」
「確かに…」
桐竜 亜美。来の恋人である女子だが、そんな彼女と話している時も来が敬語を崩しているのを見た記憶がない。他に敬語癖がある辻 眞里阿なども、友人との会話中では崩れていることがあるのでやはり来の敬語癖は筋金入りだろう。そう考え込む中でふと、とある疑問を抱いた。
「すみません、来って反抗期、あったんですか?」
「え?」
「流石にそれは…」
問い掛けると、海斗が当たり前だろという目を向けて来たが、お姉さんは疑問符を浮かべて黙り込んでしまった。少し青褪めているように見えるのは気のせいだろうか。そう思っていると、お姉さんは少し待ってて、と言い残して奥へ引っ込んでしまった。
「…まさか」
「いやいやいや、流石の来も…え、全然想像出来ないな…」
「や~、ごめんね。お待たせしました」
しばらくしてお姉さんがカレーとオムライスを持ちながら出て来た。話の続きだけど、と切り出されて俺と海斗は息を呑む。
「…えぇとね、来の、反抗期だけど──」
「ただいま帰りました!」
からんからん、と入り口のベルと共に来の声が響く。振り向くと、目が合った来がぱぁっと顔を明るくした。
「小野くん、林くん!いらっしゃいませ!」
「あ、あぁ、遊びに来てるよ」
「めちゃくちゃ美味しいからな…!」
挙動不審になりながらも何とかそう返した俺達に、にこにこと手を振って買って来たものを奥に仕舞いに行く来。
「あ、待って来くん!別にしてほしいものが…!ご、ごゆっくりどうぞ!」
来のお姉さんも来を追いかけて引っ込む。何とも気になる場所で話が切れてしまった。
「でもまぁ」
「ん?」
「心配になるくらい良い子だよなぁ、来」
「同意」
そう話していると、奥から「あー!!」という大きな声が聞こえて来る。何事かと首を回せば、来がお姉さんに迫っていた。
「姉さま!これ食べないでくださいって言いましたよね!?試作品とわざわざ分けたのに!」
「え!?あ、ごめんごめん、間違えて…」
「今日という今日はその言い訳聞きませんからね!姉さま!せっかく亜美さんに渡そうと思ったのに…っ絶対絶対絶対、許しませんから!」
珍しく来が怒っているところを見て、俺と海斗は顔を見合わせた。
「…反抗って感じじゃないけど」
「怒ること、あるんだなぁ…」
何となく安心したのだった。
「前に食べたときは大人数用だったしな。来てみたかったんだよな」
「めちゃくちゃ美味いぞ。流石潮賀家って感じ」
「どんな感じだよ、それ」
そんな話をしていたら、来のお姉さんが注文を取りにやって来た。昼も大幅に過ぎた時間なのでお客さんは他に居らず、来と話せないかと思ったが、生憎買い物中らしい。しばらくは帰って来ないと残念そうに言われてしまった。残念だが仕方ない。そう割り切って俺はカレー、海斗はオムライスを注文した後で、ふと思い出したように来のお姉さんは問いかけて来た。
「来くん、学校でも敬語なの?」
「え、あ、はい」
唐突な問いかけに驚いたものの、すぐに持ち直し海斗が答える。その答えに苦笑いを浮かべたお姉さんは、頷きながらポツリと溢した。
「そうなんだ。家でもそうだから、流石に友達の前では崩すのかなぁって思ってたけど違うのね…」
「家でも敬語なんですか?」
「えぇ。来くんが敬語崩したところ、ほとんど見たことないかも…」
「そういえば桐竜にも敬語だったような…」
「確かに…」
桐竜 亜美。来の恋人である女子だが、そんな彼女と話している時も来が敬語を崩しているのを見た記憶がない。他に敬語癖がある辻 眞里阿なども、友人との会話中では崩れていることがあるのでやはり来の敬語癖は筋金入りだろう。そう考え込む中でふと、とある疑問を抱いた。
「すみません、来って反抗期、あったんですか?」
「え?」
「流石にそれは…」
問い掛けると、海斗が当たり前だろという目を向けて来たが、お姉さんは疑問符を浮かべて黙り込んでしまった。少し青褪めているように見えるのは気のせいだろうか。そう思っていると、お姉さんは少し待ってて、と言い残して奥へ引っ込んでしまった。
「…まさか」
「いやいやいや、流石の来も…え、全然想像出来ないな…」
「や~、ごめんね。お待たせしました」
しばらくしてお姉さんがカレーとオムライスを持ちながら出て来た。話の続きだけど、と切り出されて俺と海斗は息を呑む。
「…えぇとね、来の、反抗期だけど──」
「ただいま帰りました!」
からんからん、と入り口のベルと共に来の声が響く。振り向くと、目が合った来がぱぁっと顔を明るくした。
「小野くん、林くん!いらっしゃいませ!」
「あ、あぁ、遊びに来てるよ」
「めちゃくちゃ美味しいからな…!」
挙動不審になりながらも何とかそう返した俺達に、にこにこと手を振って買って来たものを奥に仕舞いに行く来。
「あ、待って来くん!別にしてほしいものが…!ご、ごゆっくりどうぞ!」
来のお姉さんも来を追いかけて引っ込む。何とも気になる場所で話が切れてしまった。
「でもまぁ」
「ん?」
「心配になるくらい良い子だよなぁ、来」
「同意」
そう話していると、奥から「あー!!」という大きな声が聞こえて来る。何事かと首を回せば、来がお姉さんに迫っていた。
「姉さま!これ食べないでくださいって言いましたよね!?試作品とわざわざ分けたのに!」
「え!?あ、ごめんごめん、間違えて…」
「今日という今日はその言い訳聞きませんからね!姉さま!せっかく亜美さんに渡そうと思ったのに…っ絶対絶対絶対、許しませんから!」
珍しく来が怒っているところを見て、俺と海斗は顔を見合わせた。
「…反抗って感じじゃないけど」
「怒ること、あるんだなぁ…」
何となく安心したのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
Y先生の入学式
つっちーfrom千葉
青春
先日、校長先生から呼び出され、二人の上流家庭の生徒には一般的ではない、特別な扱いをするように命じられた、Y先生は入学式当日になっても悩んでいた。差別のない平等なクラスを目指すのか、自分の将来のためにも、意地汚い校長に従うべきか……。
入学式が終わり、生徒が教室へやってくるまでの、十数分間の担任の先生の複雑な心理状態を描いてみました。どうぞ、よろしくお願いします。
フェイタリズム
倉木元貴
青春
主人公中田大智は、重度のコミュ障なのだが、ある出来事がきっかけで偶然にも学年一の美少女山河内碧と出会ってしまう。そんなことに運命を感じながらも彼女と接していくうちに、‘自分の彼女には似合わない’そう思うようになってしまっていた。そんなある時、同じクラスの如月歌恋からその恋愛を手伝うと言われ、半信半疑ではあるものの如月歌恋と同盟を結んでしまう。その如月歌恋にあの手この手で振り回されながらも中田大智は進展できずにいた。
そんな奥手でコミュ障な中田大智の恋愛模様を描いた作品です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる