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8月10日 海の家
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「はぁー、楽しかった!」
小野くんが満足そうにビーチボールを抱えて歩く。すっかり仲良くなった羅樹が、小野くんの隣でわいわい話している。
「にしても、まだお昼かぁ…」
「午後は別の場所に行く?」
「そうだね…他の人がどうするかに任せようか。明とかはもう海そっちのけでご飯食べてたし」
「明らしいね~」
女子も3人で固まって話す。由芽も亜美も小柄なので、私だけ見下ろしているみたいだった。
「あ、海の家だ」
「何食べる?」
「うーん…ラーメン?」
「この暑いのにラーメン!?」
「他にメニューわかんない」
「あたし、カレー!」
会話が盛り上がり始めたところで、奥の方に何人か座っているのが見えた。大量のお皿を並べて、手に取ると一瞬でからにしていく女の子が見えて、察した。
「…明達もいるみたいだね」
「え、どこどこ!?」
「あ、本当だ。テーブルの奥の方」
亜美の声に、明が顔を上げる。大量の焼きそばはもう、なくなっていた。
「あ、夕音ちゃん達だ」
明の向かいに座っていた深沙ちゃんが手招きをする。私達もお言葉に甘えて座る。私達に気付いたらしい竜夜くんが、お皿を見やすいようにして、言う。
「何かいるか?」
「え、悪いよ」
「いや、俺たちお金払ってないし…」
「無銭飲食じゃねぇか」
「いやいやちょっと待って。あれを見てくれ」
竜夜くんが指をさした方は、潮賀くんがいた。水着ではあるが、お皿を持って運んだり「いらっしゃいませ」と言ったりしている。
「ここ、来の祖父母の店」
机に突っ伏していた北原くんが呟く。小野くんが「マジか!」と声をあげた。その声に潮賀くんが気付いて振り返る。ぱっと笑顔になったかと思うと、たたたっとこっちまで小走りで来てくれた。
「いらっしゃいませ。何にしますか?」
いつもの敬語口調でも、こういう時だと他人行儀に聞こえるな、と思いながら、差し出されたメニュー表を見つめる。焼きそば、かき氷、ラーメン、イカ焼き、とうもろこし、カレー、フランクフルト、フライドポテト、たこ焼きなどの文字が踊っていた。
「俺はとうもろこしで」
「僕はたこ焼きかな」
「私そんないらないや…喉乾いたから、かき氷で」
「カレーとポテト!」
「私も由芽と一緒かなぁ…」
そんな話をすると、来くんがご注文を繰り返します、と言った。注文内容に飲み物を付け足して、席に着く。しばらくして、年配の女性が料理を運んでくれた。
「おやまぁ、みんな来の友達かい?」
笑いじわが多い、優しそうな女性だった。さっきの話の内容と今の言葉から、彼女は潮賀くんの祖母だろう。
「はい、そうです」
「来くんはいつも優しくて、親切です」
「たまにてんね…」
「それは言うな、由芽」
何人かがそう答えて、嬉しそうにおばあさんは厨房の方に戻って行った。
小野くんが満足そうにビーチボールを抱えて歩く。すっかり仲良くなった羅樹が、小野くんの隣でわいわい話している。
「にしても、まだお昼かぁ…」
「午後は別の場所に行く?」
「そうだね…他の人がどうするかに任せようか。明とかはもう海そっちのけでご飯食べてたし」
「明らしいね~」
女子も3人で固まって話す。由芽も亜美も小柄なので、私だけ見下ろしているみたいだった。
「あ、海の家だ」
「何食べる?」
「うーん…ラーメン?」
「この暑いのにラーメン!?」
「他にメニューわかんない」
「あたし、カレー!」
会話が盛り上がり始めたところで、奥の方に何人か座っているのが見えた。大量のお皿を並べて、手に取ると一瞬でからにしていく女の子が見えて、察した。
「…明達もいるみたいだね」
「え、どこどこ!?」
「あ、本当だ。テーブルの奥の方」
亜美の声に、明が顔を上げる。大量の焼きそばはもう、なくなっていた。
「あ、夕音ちゃん達だ」
明の向かいに座っていた深沙ちゃんが手招きをする。私達もお言葉に甘えて座る。私達に気付いたらしい竜夜くんが、お皿を見やすいようにして、言う。
「何かいるか?」
「え、悪いよ」
「いや、俺たちお金払ってないし…」
「無銭飲食じゃねぇか」
「いやいやちょっと待って。あれを見てくれ」
竜夜くんが指をさした方は、潮賀くんがいた。水着ではあるが、お皿を持って運んだり「いらっしゃいませ」と言ったりしている。
「ここ、来の祖父母の店」
机に突っ伏していた北原くんが呟く。小野くんが「マジか!」と声をあげた。その声に潮賀くんが気付いて振り返る。ぱっと笑顔になったかと思うと、たたたっとこっちまで小走りで来てくれた。
「いらっしゃいませ。何にしますか?」
いつもの敬語口調でも、こういう時だと他人行儀に聞こえるな、と思いながら、差し出されたメニュー表を見つめる。焼きそば、かき氷、ラーメン、イカ焼き、とうもろこし、カレー、フランクフルト、フライドポテト、たこ焼きなどの文字が踊っていた。
「俺はとうもろこしで」
「僕はたこ焼きかな」
「私そんないらないや…喉乾いたから、かき氷で」
「カレーとポテト!」
「私も由芽と一緒かなぁ…」
そんな話をすると、来くんがご注文を繰り返します、と言った。注文内容に飲み物を付け足して、席に着く。しばらくして、年配の女性が料理を運んでくれた。
「おやまぁ、みんな来の友達かい?」
笑いじわが多い、優しそうな女性だった。さっきの話の内容と今の言葉から、彼女は潮賀くんの祖母だろう。
「はい、そうです」
「来くんはいつも優しくて、親切です」
「たまにてんね…」
「それは言うな、由芽」
何人かがそう答えて、嬉しそうにおばあさんは厨房の方に戻って行った。
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