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8月10日 海
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「とうちゃーーーく!!」
紗奈が背伸びをしながら叫ぶ。周りには私達の他にちらほらと人がいるくらいで、あまり賑わってはいなかった。けれど海は、エメラルドとサファイヤのようにきらきらと輝いて、砂浜は白い。空が海と溶け合って、境目が雲で分かるかどうかという状態だった。
「水着持ってない人、どれくらいいる?」
「あ、深沙持ってない」
「あ…おれも…」
「俺も持って来てない」
深沙ちゃん、青海川くん、浅野くんが利羽ちゃんの質問に答えた。他の人は全員持って来ているらしい。私も持って来た。
「じゃあ行けるとしても足だけかな。それ以外は荷物番とかでも良い?」
「了解」
「ちょっと…待って。アタシも見る」
「え、爽も泳ごうよ」
「…亜美…っ…」
亜美の言葉に、夏川さんが嫌そうに顔を歪めた。すると北原くんが呟いた。
「もしかして夏川、泳ぐの苦手?」
夏川さんがビクッと肩を震わせた。私からだと顔は見えないが、図星であろうと推測はつく。
「あ、そうだったね。ごめん、爽。忘れてたっ」
慌てて申し訳なさそうに手を合わせる亜美。振り返った夏川さんは、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「ずっと同じ人に荷物番やらせるのもアレだし、交代で良いと思うよ。この暑さだし…体調悪い人とかは早めに休むってことで」
由芽のまとめで、その場は解散になった。着替えを終えた数人が海に飛び込んで行くのが見えた。
「気持ちいいー!!」
「そうっすね!」
「後で何食べようかな…」
「まだ、食べるの?」
竜夜くん、鹿宮くん、明、夏川さんと一緒に海に入っていた。すると、おーい、という声が聞こえた。
「ビーチボールしようぜ」
「おぅ、良いな!」
「え、大丈夫?砂浜熱いよ?」
「水上?水中?でやるんじゃないの?」
「…多分」
「どこから持って来たんすか?」
「蝶野に借りた!じゃあやるぞー!」
そーれ、という快い掛け声と共に、ぽーんっとボールが跳ねた。それが明の近くに行ったので、明がそっと返す。それが鹿宮くんの方向へ行って、跳ね返す…の繰り返し。15分くらい遊んだところで、潮賀くんが来た。
「すいません、こっち一周したので、荷物番交代に行ってくれませんかー?」
「はいよー」
「じゃあ私行ってくるよ。ちょっと疲れちゃった」
自ら名乗り出る。昔から、ずっと水の中にいると体が冷えてしまいやすいので、こまめに上がっておきたかったので荷物番をしに行った。少し泳いで砂浜に上がり、荷物が置いてある場所に行くと、タオルの上に羅樹が寝転がっていた。
紗奈が背伸びをしながら叫ぶ。周りには私達の他にちらほらと人がいるくらいで、あまり賑わってはいなかった。けれど海は、エメラルドとサファイヤのようにきらきらと輝いて、砂浜は白い。空が海と溶け合って、境目が雲で分かるかどうかという状態だった。
「水着持ってない人、どれくらいいる?」
「あ、深沙持ってない」
「あ…おれも…」
「俺も持って来てない」
深沙ちゃん、青海川くん、浅野くんが利羽ちゃんの質問に答えた。他の人は全員持って来ているらしい。私も持って来た。
「じゃあ行けるとしても足だけかな。それ以外は荷物番とかでも良い?」
「了解」
「ちょっと…待って。アタシも見る」
「え、爽も泳ごうよ」
「…亜美…っ…」
亜美の言葉に、夏川さんが嫌そうに顔を歪めた。すると北原くんが呟いた。
「もしかして夏川、泳ぐの苦手?」
夏川さんがビクッと肩を震わせた。私からだと顔は見えないが、図星であろうと推測はつく。
「あ、そうだったね。ごめん、爽。忘れてたっ」
慌てて申し訳なさそうに手を合わせる亜美。振り返った夏川さんは、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「ずっと同じ人に荷物番やらせるのもアレだし、交代で良いと思うよ。この暑さだし…体調悪い人とかは早めに休むってことで」
由芽のまとめで、その場は解散になった。着替えを終えた数人が海に飛び込んで行くのが見えた。
「気持ちいいー!!」
「そうっすね!」
「後で何食べようかな…」
「まだ、食べるの?」
竜夜くん、鹿宮くん、明、夏川さんと一緒に海に入っていた。すると、おーい、という声が聞こえた。
「ビーチボールしようぜ」
「おぅ、良いな!」
「え、大丈夫?砂浜熱いよ?」
「水上?水中?でやるんじゃないの?」
「…多分」
「どこから持って来たんすか?」
「蝶野に借りた!じゃあやるぞー!」
そーれ、という快い掛け声と共に、ぽーんっとボールが跳ねた。それが明の近くに行ったので、明がそっと返す。それが鹿宮くんの方向へ行って、跳ね返す…の繰り返し。15分くらい遊んだところで、潮賀くんが来た。
「すいません、こっち一周したので、荷物番交代に行ってくれませんかー?」
「はいよー」
「じゃあ私行ってくるよ。ちょっと疲れちゃった」
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