神様自学

天ノ谷 霙

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8月10日 朝に弱い?

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「「「ごちそうさま」」」
3回に分けた朝ご飯がやっと終了した。お皿を下げて、計18人分。こまめに洗っていたが、やはり多かった。
「にしても驚いたな。まさか蒼が朝弱いとは」
「低血圧なんだよ。しょうがないだろ」
「しっかりしてるイメージが強かったからなぁ…」
竜夜くんが蒼くんをからかって遊んでいる。その会話が微笑ましい。
「俺は空原に驚いたよ。中学の時はあんな噂が流れてたのに…」
「噂っ!?何!?」
蒼くんが苦し紛れにか、話題の中心をそらそうとしたのか、由芽の話をした。一瞬、由芽の動きが止まった。小野くんが凄い勢いで食いついたことに、目をぱちくりとさせながら話しだした。
「中学の修学旅行の2日目、朝食の時だ。俺は低血圧だから少しイライラしてたんだが、女子が若干怯えながらヒソヒソ話をしているのが聞こえたんだ。竜夜みたいなチャラいやつが」
「おい」
「竜夜はチャラいというかヘタレというか」
「だよね」
「あ、そっか。じゃあ竜夜に似た雰囲気のチャラいやつが女子にどうしたのか聞いたんだ。そしたら、起こしたらすっっっ…ごく怖いやつがいたらしいって言ってて。その後も何回か似たような噂を聞いていたら、その怖いやつは空原だったんだよ」
「あ、それで朝あんなに機嫌が…」
「浅野くん、蒼くん、何か言った?」
皆が振り返ると、笑顔なのにどこかひんやりとした空気をまとった由芽が、お皿を持った手を少し震わせて、青筋を立てていた。
「今のは忘れてください」
「お、おう。俺も朝のことはもう覚えてない」
焦ったらしい蒼くんと浅野くんの反応に、他の人たちが笑う。そういうコントを見ているようだ。
「こういう話を聞いてると、意外な人が朝に弱かったり強かったりするっすね!」
「…そう、だね」
「亜美とか予想外だった」
「それな」
「酷くない!?」
「それでいうと夕音ちゃんもじゃない?」
「えっ」
「確かに」
いきなり私に話を振られて、少しびっくりした。
「夕音は昔からだよね。朝起こすのだけは僕の役割だったんだ」
「へぇ…」
「仲良いね~」
周りの目が私に集まるのを感じて、少し恥ずかしかった。羅樹の話も、仲良しアピールみたいな感じに思えて嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。
「さて、今日は何しましょうか」
少し静かになったところで、利羽ちゃんが話を変えた。するとまた皆盛り上がり始めた。
「うーん、何するか」
「あっちの方の森っぽいような場所はどう?」
「虫いたよ?」
「あ、それは駄目だ」
「今日こそ皆で川に行く?」
「え、昨日行った…」
「まだ皆では行ってないでしょ」
「少し歩いたら海もあるわよ。川に沿って歩いて…10分くらいのところかな」
「良いね!行こう!」
「水着は?」
「一応持ち物で言ったわよ?」
「うん、持ってる」
「持ってない人は足だけで我慢ね」
ということで、今日は海で遊ぶことに決まった。
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