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3月16日 帰り道
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カラオケ屋から出ると、もう既に外は夕暮れに包まれていた。赤と紫と黄の混ざった何とも言えない色の空が、和らいだ日差しを注いでいる。少し肌寒いような、それでいて心地良いような柔らかな風もカラオケで火照った体にはちょうど良く、私達は名残惜しそうに歩みを少しだけ遅らせながら駅まで歩いた。
「それでね、このキャラは"まくにゃ"って言って、枕と猫とカップケーキの合体したキャラで!他にも毛布とかシーツとかの寝具と動物と更にスイーツを組み合わせたキャラが3人…人?匹?いて!」
紗奈が由芽に取って貰った景品について熱く語っている。2頭身のミニキャラ状態と人間体があるらしく、そのどちらもが良いのだと隣の由芽に説明している。どうやら先程カラオケで歌っていた曲から派生して出来たキャラクターらしい。可愛らしくも何処か鬱々とした歌詞が特徴的な、中高生に刺さりそうな歌だった。
「へぇ…熊に犬に?羊?なんか凄いラインナップだね」
「そう!夕音が持ってる犬は"わろん"って言って、掛け布団がモチーフで」
「あれ?じゃあうさぎは?」
「それはね!いつもいる4人の友達として最近新しく出て来たキャラで!詳細は分かってないんだけどアロマとかがモチーフなんじゃないかって言われてる」
「寝具のネタ切れ早すぎない?」
「まぁアロマも寝る時に使うと言えば使いますからね?」
「元は音楽なんだけど、それもすっごく良くて!後でURL送るから聴いてみて!」
興奮した様子の紗奈は、嬉しそうに腕をぶんぶんと振りながら笑う。「時間があったら聞くよ」と流す由芽と、「はい!」と元気よく返事をする眞里阿とで対応が対象的で、私は少し笑ってしまった。
「スイーツと言えば、今日眞里阿に紹介してもらったところ美味しかったね」
「あ、はい!まさか由芽ちゃんのお母さんが勤めていらっしゃるとは思いませんでしたけど…」
「うっ。私だって眞里阿のおすすめであの店が出て来るとは思わなかったよ」
「由芽ってあんまり自分のこと話さないし、珍しいものが見られたよね~」
「そんないつもと違った?」
「いやぁ~、ねぇ?」
「ふふっ、新しい一面が知れちゃいました」
「えぇ…?何…?」
「確かに珍しい一面あったかも」
「夕音まで!?…っく、明日からまたもう少し調べよ」
「何でそっち行っちゃうのかな!?口止めの手段が遠回しかつ過激派すぎるよ!!」
「言わないで、って一言言うだけで良いんですよ、って」
「紗奈のツッコミを訳すとそうなるね」
「それで紗奈が言いふらさないと?」
「「…」」
「眞里阿!?夕音!?」
あはは、と笑い合いながら駅の改札を通る。電車に揺られ、少しずつ減る人数にちょっとだけ寂しくなったりもして。
1人で駅を降りた時には、楽しさに満ち足りた気分とちょっぴり振り返りたい寂寥が胸中に溶けていた。
「それでね、このキャラは"まくにゃ"って言って、枕と猫とカップケーキの合体したキャラで!他にも毛布とかシーツとかの寝具と動物と更にスイーツを組み合わせたキャラが3人…人?匹?いて!」
紗奈が由芽に取って貰った景品について熱く語っている。2頭身のミニキャラ状態と人間体があるらしく、そのどちらもが良いのだと隣の由芽に説明している。どうやら先程カラオケで歌っていた曲から派生して出来たキャラクターらしい。可愛らしくも何処か鬱々とした歌詞が特徴的な、中高生に刺さりそうな歌だった。
「へぇ…熊に犬に?羊?なんか凄いラインナップだね」
「そう!夕音が持ってる犬は"わろん"って言って、掛け布団がモチーフで」
「あれ?じゃあうさぎは?」
「それはね!いつもいる4人の友達として最近新しく出て来たキャラで!詳細は分かってないんだけどアロマとかがモチーフなんじゃないかって言われてる」
「寝具のネタ切れ早すぎない?」
「まぁアロマも寝る時に使うと言えば使いますからね?」
「元は音楽なんだけど、それもすっごく良くて!後でURL送るから聴いてみて!」
興奮した様子の紗奈は、嬉しそうに腕をぶんぶんと振りながら笑う。「時間があったら聞くよ」と流す由芽と、「はい!」と元気よく返事をする眞里阿とで対応が対象的で、私は少し笑ってしまった。
「スイーツと言えば、今日眞里阿に紹介してもらったところ美味しかったね」
「あ、はい!まさか由芽ちゃんのお母さんが勤めていらっしゃるとは思いませんでしたけど…」
「うっ。私だって眞里阿のおすすめであの店が出て来るとは思わなかったよ」
「由芽ってあんまり自分のこと話さないし、珍しいものが見られたよね~」
「そんないつもと違った?」
「いやぁ~、ねぇ?」
「ふふっ、新しい一面が知れちゃいました」
「えぇ…?何…?」
「確かに珍しい一面あったかも」
「夕音まで!?…っく、明日からまたもう少し調べよ」
「何でそっち行っちゃうのかな!?口止めの手段が遠回しかつ過激派すぎるよ!!」
「言わないで、って一言言うだけで良いんですよ、って」
「紗奈のツッコミを訳すとそうなるね」
「それで紗奈が言いふらさないと?」
「「…」」
「眞里阿!?夕音!?」
あはは、と笑い合いながら駅の改札を通る。電車に揺られ、少しずつ減る人数にちょっとだけ寂しくなったりもして。
1人で駅を降りた時には、楽しさに満ち足りた気分とちょっぴり振り返りたい寂寥が胸中に溶けていた。
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