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3月16日 自動販売機
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店を出て少ししたところに自動販売機とベンチがあった。誰もおらず人気も少ない場所だ。私達はとりあえず眞里阿を座らせて、要望を聞きながら飲み物を渡す。私達は特に問題がないかと思ったが、私は何となく耳が遠く感じて戸惑っていた。
「あー、ゲーセンって音大きいもんね。しばらくしたら治ると思うよ!」
「慣れてないと痛いよね。いやアレは慣れてても痛いか」
「確かに音大きかったね。それが原因か。眞里阿は大丈夫?」
「はい…耳、ガンガンしますけど」
「大丈夫じゃないね」
「もう少しゲーセンから離れた方が良かったかな?」
「いえ、しばらく休めば大丈夫かと…すみません」
「謝らないでいいよ。私達も休めてありがたいし」
ベンチは3人掛けのようだが、眞里阿と肩を貸している由芽だけを座らせ、私と紗奈は真正面に立っていた。大きなぬいぐるみの入った袋だけは置かせてもらっているので、それ程キツくはない。
「むしろこっちこそごめんねー…?あんまり来ないからたくさん遊びたくなっちゃって…」
紗奈が心配そうに眞里阿の顔を覗き込みながら呟く。眞里阿は精一杯の笑みを浮かべて首を横に振った。
「いえ、気にしないでください。初めての経験がいっぱいですっごく楽しかったです」
「本当…?…それなら、良かった」
そんな会話を背中越しに聞きながら、私も自分の飲み物を買う。小さめのリンゴジュースが懐かしくなってつい買ってしまったが、新発売の乳酸菌飲料も気になるところだ。
「紗奈と由芽は何か買う?」
「私は水筒あるからいいや」
「私は何か買おうかな。白熱して疲れたし」
「どれ?」
「んー…むむ!?新発売の乳酸菌飲料…!?美味しそう!これにする!」
「あ、私もそれ気になってたんだ。一口ちょうだい?私のもあげるから」
「いいよー!それじゃーぽちっとな!」
ガコン、と自販機が音を立ててジュースを吐き出す。紗奈は味見と称して一口味わい、驚きと喜びに目を見開いた。
「美味しい!早く夕音も飲んでみて!」
「え、あ、ありがとう」
半ば紗奈に押し付けられる形で貰った乳酸菌飲料は、爽やかな風味とまろやかな味わいが絶妙だった。しつこくなく、それでいていつまでも口の中に残る甘酸っぱさは、キャッチフレーズにもなっている"青春の味"そのものだろうと感じる。
お礼を言って紗奈にリンゴジュースを分けると、「こっちも美味しい!」と嬉しそうに笑っていた。
「元気だねぇ…」
「由芽ちゃん、おばあちゃんみたいですよ」
「ははっ、眩しいね…」
「どこの人なんですか??」
体調の悪い眞里阿にツッコミをさせるな、と紗奈から由芽への軽いチョップが入った。
「あー、ゲーセンって音大きいもんね。しばらくしたら治ると思うよ!」
「慣れてないと痛いよね。いやアレは慣れてても痛いか」
「確かに音大きかったね。それが原因か。眞里阿は大丈夫?」
「はい…耳、ガンガンしますけど」
「大丈夫じゃないね」
「もう少しゲーセンから離れた方が良かったかな?」
「いえ、しばらく休めば大丈夫かと…すみません」
「謝らないでいいよ。私達も休めてありがたいし」
ベンチは3人掛けのようだが、眞里阿と肩を貸している由芽だけを座らせ、私と紗奈は真正面に立っていた。大きなぬいぐるみの入った袋だけは置かせてもらっているので、それ程キツくはない。
「むしろこっちこそごめんねー…?あんまり来ないからたくさん遊びたくなっちゃって…」
紗奈が心配そうに眞里阿の顔を覗き込みながら呟く。眞里阿は精一杯の笑みを浮かべて首を横に振った。
「いえ、気にしないでください。初めての経験がいっぱいですっごく楽しかったです」
「本当…?…それなら、良かった」
そんな会話を背中越しに聞きながら、私も自分の飲み物を買う。小さめのリンゴジュースが懐かしくなってつい買ってしまったが、新発売の乳酸菌飲料も気になるところだ。
「紗奈と由芽は何か買う?」
「私は水筒あるからいいや」
「私は何か買おうかな。白熱して疲れたし」
「どれ?」
「んー…むむ!?新発売の乳酸菌飲料…!?美味しそう!これにする!」
「あ、私もそれ気になってたんだ。一口ちょうだい?私のもあげるから」
「いいよー!それじゃーぽちっとな!」
ガコン、と自販機が音を立ててジュースを吐き出す。紗奈は味見と称して一口味わい、驚きと喜びに目を見開いた。
「美味しい!早く夕音も飲んでみて!」
「え、あ、ありがとう」
半ば紗奈に押し付けられる形で貰った乳酸菌飲料は、爽やかな風味とまろやかな味わいが絶妙だった。しつこくなく、それでいていつまでも口の中に残る甘酸っぱさは、キャッチフレーズにもなっている"青春の味"そのものだろうと感じる。
お礼を言って紗奈にリンゴジュースを分けると、「こっちも美味しい!」と嬉しそうに笑っていた。
「元気だねぇ…」
「由芽ちゃん、おばあちゃんみたいですよ」
「ははっ、眩しいね…」
「どこの人なんですか??」
体調の悪い眞里阿にツッコミをさせるな、と紗奈から由芽への軽いチョップが入った。
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