神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
上 下
715 / 812

3月16日 自動販売機

しおりを挟む
店を出て少ししたところに自動販売機とベンチがあった。誰もおらず人気も少ない場所だ。私達はとりあえず眞里阿を座らせて、要望を聞きながら飲み物を渡す。私達は特に問題がないかと思ったが、私は何となく耳が遠く感じて戸惑っていた。
「あー、ゲーセンって音大きいもんね。しばらくしたら治ると思うよ!」
「慣れてないと痛いよね。いやアレは慣れてても痛いか」
「確かに音大きかったね。それが原因か。眞里阿は大丈夫?」
「はい…耳、ガンガンしますけど」
「大丈夫じゃないね」
「もう少しゲーセンから離れた方が良かったかな?」
「いえ、しばらく休めば大丈夫かと…すみません」
「謝らないでいいよ。私達も休めてありがたいし」
ベンチは3人掛けのようだが、眞里阿と肩を貸している由芽だけを座らせ、私と紗奈は真正面に立っていた。大きなぬいぐるみの入った袋だけは置かせてもらっているので、それ程キツくはない。
「むしろこっちこそごめんねー…?あんまり来ないからたくさん遊びたくなっちゃって…」
紗奈が心配そうに眞里阿の顔を覗き込みながら呟く。眞里阿は精一杯の笑みを浮かべて首を横に振った。
「いえ、気にしないでください。初めての経験がいっぱいですっごく楽しかったです」
「本当…?…それなら、良かった」
そんな会話を背中越しに聞きながら、私も自分の飲み物を買う。小さめのリンゴジュースが懐かしくなってつい買ってしまったが、新発売の乳酸菌飲料も気になるところだ。
「紗奈と由芽は何か買う?」
「私は水筒あるからいいや」
「私は何か買おうかな。白熱して疲れたし」
「どれ?」
「んー…むむ!?新発売の乳酸菌飲料…!?美味しそう!これにする!」
「あ、私もそれ気になってたんだ。一口ちょうだい?私のもあげるから」
「いいよー!それじゃーぽちっとな!」
ガコン、と自販機が音を立ててジュースを吐き出す。紗奈は味見と称して一口味わい、驚きと喜びに目を見開いた。
「美味しい!早く夕音も飲んでみて!」
「え、あ、ありがとう」
半ば紗奈に押し付けられる形で貰った乳酸菌飲料は、爽やかな風味とまろやかな味わいが絶妙だった。しつこくなく、それでいていつまでも口の中に残る甘酸っぱさは、キャッチフレーズにもなっている"青春の味"そのものだろうと感じる。
お礼を言って紗奈にリンゴジュースを分けると、「こっちも美味しい!」と嬉しそうに笑っていた。
「元気だねぇ…」
「由芽ちゃん、おばあちゃんみたいですよ」
「ははっ、眩しいね…」
「どこの人なんですか??」
体調の悪い眞里阿にツッコミをさせるな、と紗奈から由芽への軽いチョップが入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...