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3月9日 いつかの予定
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今日も午前授業のみ。特にやることのない授業は、先生によっては普通に進めたりなんかして。私達はテスト明けでやる気を失ったまま、だらだらと学校生活を過ごしていた。
「はぁ~終わったぁ~」
「これだけの為に学校来るの、面倒よね」
「でも、友達に会えるのは嬉しいわ」
紗奈と由芽と利羽が私の席を囲んで話している。私も頷きながら、午後の予定について考えていた。
「朝から起きてると眠いよ」
「紗奈は授業中も寝てたでしょ」
「急に当てられてびっくりしてたね」
「なっ、掘り返すなー!!」
紗奈が元気いっぱいに怒るので、くすくすと笑いが溢れる。
「でも本当に眠いわよね、春だし」
「ピクニック行きたーい」
「春…ピクニック…花見とか?」
「学校の近くに桜並木の通りあったよね」
由芽の指摘に、私の肩が一瞬ビクッと跳ねる。何でもない、と誤魔化して花見について話し始めた。桜が咲く3~4月の変わり目で、皆が集まれる日がないか聞いてみるとのことだった。
「由芽~、そろそろ来てって~」
「はいはい。行くわよ。じゃあ皆、またね」
演劇部はまだ残るらしい。今月末が発表会だから仕方ないとは思うが、連日皆が帰った後に残って稽古をするのは大変そうだと感じた。
「それじゃあ私達も帰ろうか。夕音は?」
「私は羅樹待ち」
「おー、相変わらずラブラブですなー」
「そういうのじゃないって」
「またまたー」
紗奈の揶揄いに苦笑いを浮かべていると、利羽が強制終了して連れて行ってくれた。私は羅樹を待つ為に4組に移動しようかと考え、バッグを引っ提げて教室を出る。すぐ隣の教室に入ったが、ちらほらと人影がある中で羅樹の姿はない。
「五十嵐くん、羅樹知らない?」
「榊原くんなら、さっきまでそこで桜ちゃんと…あれ?」
鹿宮くんと一緒にいたようだが、どうやら今は席を外しているらしい。連絡がないということは、すぐ戻って来る予定なのだろう。
「今はいないみたい」
「そっか、ありがとう」
「いえいえ~、じゃあまたね~」
五十嵐くんは急いでいるらしく、そそくさと出て行ってしまった。適当に羅樹の机の周りで待とうかと思ったが、爽の姿を見つけてそちらへ向かう。
俯いている爽の様子は明らかにいつもと違って、少し心配になったから。
「…爽?」
「…ん」
小さく声を出して、ゆっくりと顔を上げる爽。その瞳は少し腫れぼったく、赤い。
「どうしたの?何かあった?」
「…」
爽は無言で首を横に振る。前に竜夜くんか誰かが言っていた気がする。問い掛けた時に何もなければ「何が?」と返す筈だから、すぐに否定した場合は「ある」ことと同義だと。
「爽、まずは水道で目を冷やそう?」
恐らく泣き腫らしたのであろう瞳に、優しく触れながら声を掛ける。爽は俯いたままだったが、ゆっくりと立ち上がった。ホッとしてその隣に付き添う。教室の目の前にある水道で、爽の瞳を優しく冷やした。
「はぁ~終わったぁ~」
「これだけの為に学校来るの、面倒よね」
「でも、友達に会えるのは嬉しいわ」
紗奈と由芽と利羽が私の席を囲んで話している。私も頷きながら、午後の予定について考えていた。
「朝から起きてると眠いよ」
「紗奈は授業中も寝てたでしょ」
「急に当てられてびっくりしてたね」
「なっ、掘り返すなー!!」
紗奈が元気いっぱいに怒るので、くすくすと笑いが溢れる。
「でも本当に眠いわよね、春だし」
「ピクニック行きたーい」
「春…ピクニック…花見とか?」
「学校の近くに桜並木の通りあったよね」
由芽の指摘に、私の肩が一瞬ビクッと跳ねる。何でもない、と誤魔化して花見について話し始めた。桜が咲く3~4月の変わり目で、皆が集まれる日がないか聞いてみるとのことだった。
「由芽~、そろそろ来てって~」
「はいはい。行くわよ。じゃあ皆、またね」
演劇部はまだ残るらしい。今月末が発表会だから仕方ないとは思うが、連日皆が帰った後に残って稽古をするのは大変そうだと感じた。
「それじゃあ私達も帰ろうか。夕音は?」
「私は羅樹待ち」
「おー、相変わらずラブラブですなー」
「そういうのじゃないって」
「またまたー」
紗奈の揶揄いに苦笑いを浮かべていると、利羽が強制終了して連れて行ってくれた。私は羅樹を待つ為に4組に移動しようかと考え、バッグを引っ提げて教室を出る。すぐ隣の教室に入ったが、ちらほらと人影がある中で羅樹の姿はない。
「五十嵐くん、羅樹知らない?」
「榊原くんなら、さっきまでそこで桜ちゃんと…あれ?」
鹿宮くんと一緒にいたようだが、どうやら今は席を外しているらしい。連絡がないということは、すぐ戻って来る予定なのだろう。
「今はいないみたい」
「そっか、ありがとう」
「いえいえ~、じゃあまたね~」
五十嵐くんは急いでいるらしく、そそくさと出て行ってしまった。適当に羅樹の机の周りで待とうかと思ったが、爽の姿を見つけてそちらへ向かう。
俯いている爽の様子は明らかにいつもと違って、少し心配になったから。
「…爽?」
「…ん」
小さく声を出して、ゆっくりと顔を上げる爽。その瞳は少し腫れぼったく、赤い。
「どうしたの?何かあった?」
「…」
爽は無言で首を横に振る。前に竜夜くんか誰かが言っていた気がする。問い掛けた時に何もなければ「何が?」と返す筈だから、すぐに否定した場合は「ある」ことと同義だと。
「爽、まずは水道で目を冷やそう?」
恐らく泣き腫らしたのであろう瞳に、優しく触れながら声を掛ける。爽は俯いたままだったが、ゆっくりと立ち上がった。ホッとしてその隣に付き添う。教室の目の前にある水道で、爽の瞳を優しく冷やした。
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