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苦手fight 竜夜(短編)
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俺は中学の時、今入に良い印象を持っていなかった。よく突っかかってくるくせに、俺が怒るぎりぎりでやめて、嵐のように去っていく。意味が分からなかった。それを指摘したら何故か怒るし、怖かった。
そんな俺の印象が変わる、出来事。
「お、紗奈。早かった…な。ん?あ、なんだ竜夜か」
教室に入ると、俺の席に他クラスの霙が座っていた。霙とは言い争いばかりで、不思議とそれが嫌じゃない相手だった。むしろ、リアクションや反応が分かりやすいため、面白かった。
なんだ、と今入に間違えられたことに少し怪訝な顔になったが、それを押し留めて会話を続ける。
「な、なんだじゃねぇよ!なんでお前がそこに座ってるんだよ!」
「え?…んー…」
暫く考えているような仕草をする。考え事をする時に口元に手を持っていく動作は、いつもと変わらない。やがて思い出したのか、呟く。
「さっき紗奈がこの席の引き出しを漁ってたから」
今入が俺の席を漁っていた。その事実に俺はめちゃくちゃ焦る。ただでさえ苦手な奴に自分のテリトリーに入られることは誰でも嫌なはずだ。びっくりして声を荒げる。
「そこは俺の席だぞ!?」
近くに来た俺が叫んだからか、耳を押さえる。小さな声で、うるさっと聞こえた。慌てて声のボリュームを戻して、教室に戻って来た理由の、数学のノートを探す。今日提出なのをすっかり忘れていたのだ。
「なんなんだよ全く…。おい、そっちに寄れ」
小さな返事とともに椅子をずらして、俺に取りやすいように移動する。いつもあれだけ言い争っていても、ツンデレみたいなところがあるのか、こういう時は素直だ。
そう思いながら引き出しから数学のノートを探す。青いノートを。しかし引き出しのどこにも見当たらなかった。ほとんど置き勉状態でバッグにないことも知っている。だからそこに数学のノートが無かったら俺の手元には無いことになってしまう。
「騒がしいな…なんだ?」
探している時に声に出ていたのか、眠そうな声でそう聞いてくる。俺は不安になりながら答える。
「いや、俺の数学のノートが無くて…。今日提出だったから、絶対持ってきた筈なのに…」
「数学のノート?何色だ?」
「青」
霙がむくりと起きて、考える。俺はその間に教科書類を全部出して、挟まっていないか調べていた。すると、いきなり霙が大きな声を出した。
「青!」
っうわぁ!?
という声が出そうになったが、ぎりぎりで留めた。代わりに分かりやすいくらいに肩が震えた。
「な、なんだよ…青いノートだけど…」
そう聞き返すと、眠気はどこに飛んだのか、霙は目をしっかりと開けて慌てたような話し始めた。
「そうじゃなくて、青!紗奈が持って行ったノートも青なんだよ!」
「…え?」
「今日ノート提出って一部の人だけか?」
「あ、あぁ」
「じゃあ紗奈はそれを何処かで知って、出していないのに気付いたから代わりに出しに行ったんじゃないか?私に先に帰っててって言ってたし」
霙の推測は、後に今入に確認したところ大当たりだった。いつもいたずらばかり仕掛けてくるのに、良いことをしたからかすごく恥ずかしそうだった。
「ふーん…そ、そうか…彼奴にも、優しいところがあるんだな」
なんか優しくされたのが妙にくすぐったくて、ぽつりと呟く。霙が怪訝そうな顔をして、少し言い争いになりかけた。が、俺がいつもの様子を話すと混乱していた。
そんな俺の印象が変わる、出来事。
「お、紗奈。早かった…な。ん?あ、なんだ竜夜か」
教室に入ると、俺の席に他クラスの霙が座っていた。霙とは言い争いばかりで、不思議とそれが嫌じゃない相手だった。むしろ、リアクションや反応が分かりやすいため、面白かった。
なんだ、と今入に間違えられたことに少し怪訝な顔になったが、それを押し留めて会話を続ける。
「な、なんだじゃねぇよ!なんでお前がそこに座ってるんだよ!」
「え?…んー…」
暫く考えているような仕草をする。考え事をする時に口元に手を持っていく動作は、いつもと変わらない。やがて思い出したのか、呟く。
「さっき紗奈がこの席の引き出しを漁ってたから」
今入が俺の席を漁っていた。その事実に俺はめちゃくちゃ焦る。ただでさえ苦手な奴に自分のテリトリーに入られることは誰でも嫌なはずだ。びっくりして声を荒げる。
「そこは俺の席だぞ!?」
近くに来た俺が叫んだからか、耳を押さえる。小さな声で、うるさっと聞こえた。慌てて声のボリュームを戻して、教室に戻って来た理由の、数学のノートを探す。今日提出なのをすっかり忘れていたのだ。
「なんなんだよ全く…。おい、そっちに寄れ」
小さな返事とともに椅子をずらして、俺に取りやすいように移動する。いつもあれだけ言い争っていても、ツンデレみたいなところがあるのか、こういう時は素直だ。
そう思いながら引き出しから数学のノートを探す。青いノートを。しかし引き出しのどこにも見当たらなかった。ほとんど置き勉状態でバッグにないことも知っている。だからそこに数学のノートが無かったら俺の手元には無いことになってしまう。
「騒がしいな…なんだ?」
探している時に声に出ていたのか、眠そうな声でそう聞いてくる。俺は不安になりながら答える。
「いや、俺の数学のノートが無くて…。今日提出だったから、絶対持ってきた筈なのに…」
「数学のノート?何色だ?」
「青」
霙がむくりと起きて、考える。俺はその間に教科書類を全部出して、挟まっていないか調べていた。すると、いきなり霙が大きな声を出した。
「青!」
っうわぁ!?
という声が出そうになったが、ぎりぎりで留めた。代わりに分かりやすいくらいに肩が震えた。
「な、なんだよ…青いノートだけど…」
そう聞き返すと、眠気はどこに飛んだのか、霙は目をしっかりと開けて慌てたような話し始めた。
「そうじゃなくて、青!紗奈が持って行ったノートも青なんだよ!」
「…え?」
「今日ノート提出って一部の人だけか?」
「あ、あぁ」
「じゃあ紗奈はそれを何処かで知って、出していないのに気付いたから代わりに出しに行ったんじゃないか?私に先に帰っててって言ってたし」
霙の推測は、後に今入に確認したところ大当たりだった。いつもいたずらばかり仕掛けてくるのに、良いことをしたからかすごく恥ずかしそうだった。
「ふーん…そ、そうか…彼奴にも、優しいところがあるんだな」
なんか優しくされたのが妙にくすぐったくて、ぽつりと呟く。霙が怪訝そうな顔をして、少し言い争いになりかけた。が、俺がいつもの様子を話すと混乱していた。
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