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怪談話は 紗奈(短編)
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※少々ホラーチックな演出がある為、苦手な方はお気をつけください。
ひたり、ひたりと水を踏むような気味の悪い音が後ろから聞こえて来ました。後ろに何かの気配を感じますが、振り向いても誰もいません。ただ、長い廊下を包む暗闇があるだけです。少女は薄気味悪さを感じながら目を凝らしていると、蛇口から水がぽたぽたと零れているのに気が付きました。先程聞こえて来た不気味な水音はこれのせいだったのだろう、と少女は水道に近づき、蛇口を閉めます。不気味な水音が聞こえなくなったため、ホッと安心して顔を上げたところ───
「───きゃぁぁああああ!!!!」
「いやあぁぁぁぁああ!?!?!?」
眞里阿ちゃんの大声に、爽ちゃんの叫び声が被さるように響き渡る。亜美ちゃんが参加するから、と他クラスから参加したは良いものの、怪談話はかなり苦手な部類らしい。
「なんと、目の前の窓には、濡れた髪を天井から垂らした女の顔が───!!」
「きゃやぁぁぁああ!?!?!?」
私のクラスから参加した利羽、亜美ちゃん、眞里阿ちゃんは酷く苦手というわけではなく、先程から爽ちゃんばかりが泣き叫んでいる様子だった。亜美ちゃんも得意というわけではないようだが、先程からどちらかと言うと爽ちゃんの叫び声に驚いている。由芽ちゃんは委員の仕事があると言って参加を断られたし、霙は部活が大詰めだとかで不参加だ。お陰で少人数になってしまったものの、眞里阿ちゃんと利羽の臨場感ある語りや恐ろしい怪談の数々で全くネタ切れを起こさない。爽ちゃんが可哀想なほどにロックオンされているので、もはや2人も彼女に合わせて語っている節がある。爽ちゃんに心の中でそっと同情した。
眞里阿ちゃんは特に怪談が好きらしく、次々と色々な怖い話を語っていく。そして爽ちゃんが泣き叫んで、の繰り返しだ。そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、下校時刻となってしまった。
「あら、もうこんな時間?」
「付き合わせてごめんなさい。でも楽しかったです」
「も…もう、絶対、ぜぇったい…参加しない…!」
「爽ちゃん、今日家に泊まって行く?」
各々の感想を述べながら、そのまま解散となった。私は眞里阿ちゃん達と違い駅に向かわない為、皆に別れを告げて家に帰ろうとした、その時だった。
「…あ、鍵」
家の鍵を入れておいたポーチを教室に忘れたことに気付いた。まだ施錠されていない為、急いで取りに行けば間に合うだろう。私は靴も直さず、上履きも履かず、ダッシュで教室へと戻った。電気の付いている廊下側に近い席というのもあり、机の上に乗っていたポーチは教室の電気を付けずとも目立つ。あったあった、と安心してそのポーチを手に取り、廊下を戻っていく。
その時、ひたりひたりと水音が聞こえて来た。
急激に背筋が凍り、足が止まってしまう。けれどその水音は止まることなく繰り返し聞こえて来る。冷や汗が止まらない。慌てて外に出ようにも、何かがいる気がして1歩を進むのが怖くなってしまった。早く出なければと頭ではわかっているのに、近付いてくる水音が怖くて足が動かない。
その時、だった。
「きゃぁぁああああああああ!!!?!?!?」
ひたり、ひたりと水を踏むような気味の悪い音が後ろから聞こえて来ました。後ろに何かの気配を感じますが、振り向いても誰もいません。ただ、長い廊下を包む暗闇があるだけです。少女は薄気味悪さを感じながら目を凝らしていると、蛇口から水がぽたぽたと零れているのに気が付きました。先程聞こえて来た不気味な水音はこれのせいだったのだろう、と少女は水道に近づき、蛇口を閉めます。不気味な水音が聞こえなくなったため、ホッと安心して顔を上げたところ───
「───きゃぁぁああああ!!!!」
「いやあぁぁぁぁああ!?!?!?」
眞里阿ちゃんの大声に、爽ちゃんの叫び声が被さるように響き渡る。亜美ちゃんが参加するから、と他クラスから参加したは良いものの、怪談話はかなり苦手な部類らしい。
「なんと、目の前の窓には、濡れた髪を天井から垂らした女の顔が───!!」
「きゃやぁぁぁああ!?!?!?」
私のクラスから参加した利羽、亜美ちゃん、眞里阿ちゃんは酷く苦手というわけではなく、先程から爽ちゃんばかりが泣き叫んでいる様子だった。亜美ちゃんも得意というわけではないようだが、先程からどちらかと言うと爽ちゃんの叫び声に驚いている。由芽ちゃんは委員の仕事があると言って参加を断られたし、霙は部活が大詰めだとかで不参加だ。お陰で少人数になってしまったものの、眞里阿ちゃんと利羽の臨場感ある語りや恐ろしい怪談の数々で全くネタ切れを起こさない。爽ちゃんが可哀想なほどにロックオンされているので、もはや2人も彼女に合わせて語っている節がある。爽ちゃんに心の中でそっと同情した。
眞里阿ちゃんは特に怪談が好きらしく、次々と色々な怖い話を語っていく。そして爽ちゃんが泣き叫んで、の繰り返しだ。そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、下校時刻となってしまった。
「あら、もうこんな時間?」
「付き合わせてごめんなさい。でも楽しかったです」
「も…もう、絶対、ぜぇったい…参加しない…!」
「爽ちゃん、今日家に泊まって行く?」
各々の感想を述べながら、そのまま解散となった。私は眞里阿ちゃん達と違い駅に向かわない為、皆に別れを告げて家に帰ろうとした、その時だった。
「…あ、鍵」
家の鍵を入れておいたポーチを教室に忘れたことに気付いた。まだ施錠されていない為、急いで取りに行けば間に合うだろう。私は靴も直さず、上履きも履かず、ダッシュで教室へと戻った。電気の付いている廊下側に近い席というのもあり、机の上に乗っていたポーチは教室の電気を付けずとも目立つ。あったあった、と安心してそのポーチを手に取り、廊下を戻っていく。
その時、ひたりひたりと水音が聞こえて来た。
急激に背筋が凍り、足が止まってしまう。けれどその水音は止まることなく繰り返し聞こえて来る。冷や汗が止まらない。慌てて外に出ようにも、何かがいる気がして1歩を進むのが怖くなってしまった。早く出なければと頭ではわかっているのに、近付いてくる水音が怖くて足が動かない。
その時、だった。
「きゃぁぁああああああああ!!!?!?!?」
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