神様自学

天ノ谷 霙

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花色 伏見恋音

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そして長いこと、稲森夕音の"恋使こいつかい"としての日々を見て来た。
他人の為に悪役になるアジアンタムの女の子ゆめ
好きな人との関係を壊す為に一歩踏み出したベゴニア・センパフローレンスの男の子りゅうや
好きな人との関係を壊したくなくて気持ちを偽った待宵草の女の子さな
恋に纏わる悲しみを乗り越えたヒペリカムの女の子あかり
幼い頃支えになってくれた相手のことをずっと覚えていたスターチスの女の子りう
平和な日々を望みながらも想い人の為に荒れることを覚悟したデイジーの男の子あお
大切な姉弟を恨まない為に自分が傷つくことを厭わなかった菖蒲の男の子れんの
特別を大事にして相手のことまで引っ張り上げたリナリアの女の子なこ
近いが故に見えてしまう嫌なところを受け入れ整理をする為に距離を取ったメランポジウムの女の子みぞれ
長年誠実に心から1人を想い続けているレモンの男の子ゆき
幼い頃将来を約束した相手との大切な思い出を抱き続けたエーデルワイスの女の子みりあ
勇気を出して辛い思いをしている人に寄り添うタイムの男の子さくや
完璧を求められ評価を得られずに苦しんでいた女の子あさの
失恋を重ね臆病になり恋愛を捨てようとした男の子しゅん
高貴に気高く遥か昔の術まで使用して血筋の苦悩を解き放った女の子せん
血や家に縛られず真の想いを伝えた男の子こん
好きな人を追い詰めないよう距離を置いた男の子ゆうと
たった一言すら言えずに想い続けた女の子ちか
恋愛ごとに傷を負っていた相手を想い癒した男の子おう
前世の想いに囚われそうになりながらも前を向けるようになったシオンの男の子かなた
名も知らぬアネモネの女の子、狂気に手を染めたチューリップの令嬢、唯1人のヒトを愛した竜胆の虹様。たくさんのヒトの心を救い、たくさんのヒトの背を押して来た。自分だってしっかりと足を踏み出して、長いこと存在していたわだかまりのようなものも少しずつ解いて前に進んでいる。忘れていたのは私のせいみたいなものなのに、責めるどころか礼を言って終わらせた。いつだって強くて、学んだことはすぐに自分に活かして、走り続ける稲荷様の使ゆうね
羨ましくて仕方なかった。
だから少しだけ近付けるように、私のことを思い出してもらえるように、頂いた名前に装飾した。
貴方が稲森 夕音というのなら、私は伏見ふしみ 恋音こいねになろう。
私は新たな名を得て、自力で生きる力を得たような気がした。
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