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手助けcherish 富(短編)
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はぁ、と宙に向かって息を吐く。白く染まった空気が天へと昇るのを見ながら、寒さを視界で実感した。
「助かったわぁ。みーちゃん、急に忙しいって言うんだもの」
さらりと長く伸びた青がかった水色の髪を高く結い上げ、それとは対照的な赤い巫女服に身を包んだ女性が現れる。言わずもがな、俺の彼女である霜月 清歌さんだ。小柄ながら麗しい見た目をしている清歌さんは、その頬を膨らませ美しい顔を可愛らしい印象に変える。初見であればちぐはぐな印象を与えるそれも、長い付き合いである俺から見れば清歌さんの魅力の一つだ。
そんな当たり前のことは置いておいて、俺は今霜月神社にいる。清歌さんの妹である霙は演劇部のクリスマス公演が近いらしく、今日から夜遅くまで練習をするらしい。ちなみに、清歌さんは「急に」と言っていたが2ヶ月程前から準備で時々遅くなることは告げており、今日からの夜練も1週間前からほぼ毎日伝えていたと聞いている。見た目通りほわほわしており、人の話を聞いてるようで聞いていない人なので今回もそういうことだろう。帰りに霙から神社を頼まれ、こうして霙からの伝言と共に手助けに参じたというわけだ。
「そうだなぁ。とりあえず、清歌さんは早く社務所に入って」
「えぇ?私だって年上のお姉さんなんだから、もう少し頼ってくれてもいいのよ?一緒に境内のお掃除しましょう?」
「清歌さんは掃除禁止令出てるでしょ!」
あまりにも転んで怪我をするので、家族から出たという掃除禁止令。本人は不服そうで、責任感の強さも相まってよく破ろうとするが、その責任感の強さは命令を守るという面で発揮してほしい。
「え~、だってこの時間だと社務所に居ても人来ないんだもの。整理するところなんてもうないわ…」
一応大学に通っている筈だが、授業を特定の曜日にまとめているらしく外に出る日を滅多に見ない。そのため大体は神社におり、神主の代わりに参拝客の相手や掃除などをしている。しかし日中も常に人がいるような神社ではないので、日がな一日社務所にいるのは退屈らしい。裏の仕事は両親が行っているらしく、2人はどちらかというと清歌さんに大学生活を満喫してほしいらしいが、当の本人は神社にいることを選んだ。
その理由を、俺は知らないわけではない。
「そーれーにー」
清歌さんがすすっと俺のそばに寄る。ぴったりとくっつけば、凍えるような寒さの中にじんわりと伝わる温もりを感じた。
「私は富くんとお話ししたいの」
悪戯っぽく笑う清歌さんに、敵わないと悟る。やれやれと肩をすくめて見せたのとは反対に、心臓がうるさく脈打っていた。
「助かったわぁ。みーちゃん、急に忙しいって言うんだもの」
さらりと長く伸びた青がかった水色の髪を高く結い上げ、それとは対照的な赤い巫女服に身を包んだ女性が現れる。言わずもがな、俺の彼女である霜月 清歌さんだ。小柄ながら麗しい見た目をしている清歌さんは、その頬を膨らませ美しい顔を可愛らしい印象に変える。初見であればちぐはぐな印象を与えるそれも、長い付き合いである俺から見れば清歌さんの魅力の一つだ。
そんな当たり前のことは置いておいて、俺は今霜月神社にいる。清歌さんの妹である霙は演劇部のクリスマス公演が近いらしく、今日から夜遅くまで練習をするらしい。ちなみに、清歌さんは「急に」と言っていたが2ヶ月程前から準備で時々遅くなることは告げており、今日からの夜練も1週間前からほぼ毎日伝えていたと聞いている。見た目通りほわほわしており、人の話を聞いてるようで聞いていない人なので今回もそういうことだろう。帰りに霙から神社を頼まれ、こうして霙からの伝言と共に手助けに参じたというわけだ。
「そうだなぁ。とりあえず、清歌さんは早く社務所に入って」
「えぇ?私だって年上のお姉さんなんだから、もう少し頼ってくれてもいいのよ?一緒に境内のお掃除しましょう?」
「清歌さんは掃除禁止令出てるでしょ!」
あまりにも転んで怪我をするので、家族から出たという掃除禁止令。本人は不服そうで、責任感の強さも相まってよく破ろうとするが、その責任感の強さは命令を守るという面で発揮してほしい。
「え~、だってこの時間だと社務所に居ても人来ないんだもの。整理するところなんてもうないわ…」
一応大学に通っている筈だが、授業を特定の曜日にまとめているらしく外に出る日を滅多に見ない。そのため大体は神社におり、神主の代わりに参拝客の相手や掃除などをしている。しかし日中も常に人がいるような神社ではないので、日がな一日社務所にいるのは退屈らしい。裏の仕事は両親が行っているらしく、2人はどちらかというと清歌さんに大学生活を満喫してほしいらしいが、当の本人は神社にいることを選んだ。
その理由を、俺は知らないわけではない。
「そーれーにー」
清歌さんがすすっと俺のそばに寄る。ぴったりとくっつけば、凍えるような寒さの中にじんわりと伝わる温もりを感じた。
「私は富くんとお話ししたいの」
悪戯っぽく笑う清歌さんに、敵わないと悟る。やれやれと肩をすくめて見せたのとは反対に、心臓がうるさく脈打っていた。
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